「緊急事態宣言3月7日まで延長」の問題点

菅義偉首相は本日午後19時30分から記者会見を開き、今月7日までに必ず終了させると言明して先月1月8日に発令した「緊急事態宣言」を、栃木県を除いて約束に反し、さらに1カ月延長すると明言した。延長した理由について首相は、飲食店を対象とした限定的な緊急事態宣言の発令は新規感染者の減少に大きく貢献したが、医療体制が「逼迫」しているためと説明。しかし、経済財政諮問会議で民間議員の新浪剛史サントリーホールディング社長が諌言したPCR検査の大規模な社会的検査を中心とした「コロナ禍対策の抜本転換」には応じなかった。菅内閣には銀座の高級クラブで飲食した自公国会議員のトカゲの尻尾(しっぽ)切りではなく、「鯛は頭から腐る」の確かなことわざを考慮して、退陣していただくしかない。それが、最良の「コロナ禍対策」だ。

2月2日コロナ感染状況

本日2月2日火曜日の新型コロナ感染状況は、東京都では新規感染確認者は1週間前の1月26火月曜日の1026人から減少して556人になり、死亡者は23人。重症者は前日から4人減って129人になった(https://www.fnn.jp/articles/-/61484)。
東京都のモニタリングhttps://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/では、7日移動平均での感染者数は750.9人、PCR検査人数は8669.1人だから、瞬間陽性率は8.67%。東京都独自の計算方式では6.1%。感染者のうち感染経路不明率は50.30%だった。菅首相が記者会見で自賛した新規感染者数の減少は、人口移動指数変動の要因にに加えて、累計感染者数、入院待ち・自宅療養患者の急増で保健所の資源が「パンク状態」になって濃厚接触者の追跡ができなくなって断念し、PCR検査人数が傾向的に減少していることも背景にあると思われる。日本でしか行っていない「積極的疫学調査」が破綻している可能性が極めて濃厚だ。
全国では、午後23時59分の時点で新規感染者は2324人、死亡者は過去最多の119人。重症患者は前日から38人減少して937人になっている。重症者の減少は主として亡くなられたことによる公算が大きい。
【参考】東洋経済ONLINE(https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/)では、2月1日時点の実効再生産数は全国が前日比0.01人増の0.78人、東京都は前日比0.02人増の0.80人となっている。実効再生産数は反転の兆しを見せている。新規感染者数が菅首相の期待通り、「公表値」がこのまま減少傾向を続けるかについては疑問である。

東京都のコロナ感染者数の推移
東京都のコロナ感染者数の推移

【追記】菅首相は記者会見で、➀緊急生活支援小口資金融資制度(緊急小口資金と総合支援資金の特別な貸付)の拡充(現在140万円の限度額を200万円まで拡大する、返済できない場合は免除する。基礎自治体の市町村の社会福祉協議会が窓口。詳細はhttps://corona-support.mhlw.go.jp/seikatsufukushi/samout/index.html)など若干の経済支援策を追加する、②東京オリンピック/パラリンピック開催に当たって、無観客試合を含め競技観戦者の調整を行う③新型ワクチンの接種を今月中旬からに前倒しして開始し、本格的な接種は地方自治体との協議・接種体制の確立を踏まえて4月から開始する➃行政罰などを追加した感染症法案、新型コロナ特措法改正案を速やかに成立させ、施行するーなどと述べた。ただし、新鮮味に欠けるのは否めない(参考:https://digital.asahi.com/articles/ASP226GP1P22UTFK00Q.html?iref=comtop_7_02https://digital.asahi.com/articles/ASP2263Y6P22ULBJ00J.html

このところ、全国の都道府県から厚生労働省に「報告」のあった新規感染者数は前週の同じ曜日に比べて、見かけ上かなり減っている。しかし、これまでの累積新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染者数は、冬入り前にGo To トラベル/イートを強行し、第三波で新規感染者数が急増したことから、10万人を突破している。このため、第三波では都市部を中心に入院待ち、自宅療養の感染患者者数が激増。これらの方々が抗ウイルス薬の治療を受けられずに死亡されるというケースが相次いでおり、事実上の医療体制崩壊が進行している。さすがの菅首相も約束を保護にして、緊急事態宣言を延長せざるを得なかった。

政府=菅政権はステージ4からステージ3になった段階で緊急事態宣言を解除することにしていたが、指標では医療体制については現実離れした「確保病床数」しか採用されていない。取り敢えず、本日2日付けの朝日新聞2面(https://digital.asahi.com/articles/photo/AS20210201003181.html)から宣言が発令された11都府県のコロナ感染ステージ状況を引用させて頂きたい。

政府の定めた11都府県のコロナ感染ステージ
政府の定めた11都府県のコロナ感染ステージ

これを見ると、政府の指標の中には医療体制に関する直接の指標は「確保想定病床の使用率」しかない。これでは、入院待ち、自宅療養の「指示=宣告」を受けて、事実上「棄民」されている感染患者は「コロナ禍状況」には反映されない。また、陽性率については、鼻や唾液からの検体に新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が含まれていないこともあるから、定期的に検査を受けられる体制を確立することが重要だ。米国で行っているように「いつでも、どごでも、誰でも」無料でPCR検査を受けられるようにする必要がある。また、過去に感染して有効な中和抗体が産生されているか、あるいは、免疫暴走が起こって重症化しやすいか否かが分かる抗体検査も行う必要が有る。

しかし、抗体検査はいまだに保険の適用になっていない。少なくとも、職場の定期検診の際に医療保険適用で精密な抗体検査を受けられるようにすることは必須の事態だ。陽性率は世界保健機構(WHO)が5%以下に抑えることを目標にするよう要請しているが、いずれの都府県も5%を超え、首都圏や大阪府・京都府・兵庫県では高止まりしている。日本のように一貫してPCR検査数の少ない国では、死亡者数が重要だ。大阪府では、死亡者数が非常に多い。下図は東大先端研の児玉龍彦名誉教授によるものだ。

人口当たりの新型コロナ感染者数の推移(図下部)
人口当たりの新型コロナ感染者数の推移(図下部)
PCR検査が十分なされない場合は死亡者の下図が重要
PCR検査が十分なされない場合は死亡者の下図が重要

直近一週間当たりの新規感染者数は東京都の場合、ステージ4では都全体で一日当たり500人、ステージ3では300人。しかし、昨年4月に出された緊急事態宣言の際には、一日当たりの最多新規感染者数は全国で約700人。国家非常事態時(有事)の感染状況の指標としては少なすぎるのではないか。感染経路の不明率は首都圏ではまだ50%以上だ。

加えて、新規感染者数の急増で「積極的疫学調査」と称してPCR検査陽性者の追跡(積極的疫学調査)を行う保健所が感染者数の激増で資源がパンクし、限定的な追跡調査しか行っていないことがある。このため、PCR検査数が減り、これが新規感染者が前週に比べて相当減少するとともに、感染経路不明者の割合も公表数値よりは高い可能性がある。とりわけ。神奈川県と東京都は「積極的疫学調査」を限定的なものにすることを発表している。「積極的疫学的調査」なるものの破綻である。

これらの指標は、政府のコロナ対策分科会が決めたものだが、分科会の専門家は座長の尾身茂地域医療機能推進機構理事長や脇田隆字(たかじ)国立感染研究所長ら、菅首相の意向を忖度する「専門家」で占められている。尾身座長は、コロナウイルス収束後に行うこととしていたGo To トラベルの開始を、感染が収束していないのに実施することを容認した。また、傘下の東京新宿メディカルセンター(元厚生年金病院)では昨年2020年5月、入院患者13人と看護師・看護助手11人の合計24人が新型コロナに感染、集団感染が起きた経緯がある(https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/272805)。当時は事態の推移についてサイトで公開していたが、その後削除されたようだ。コロナ対応病院として名乗りをあげても良さそうだが、どうも消極的な気がする。

脇田感染研所長は、厚生省に設置された厚生科学審議会感染症部会で論議された感染症法「改正案」、新型コロナ特措法「改正案」について、刑事罰を盛り込む内容などに賛成する委員が18人中3人しかいなかった(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_16328.html)のに、田村憲久厚労相が両改正案を国会に提出することを手伝った。

この他、菅首相にアドバイスしている専門家の中にも疑問のある「専門家」もいる。例えば、菅首相が1月16日に公邸で会った人物が話題だ。「神の手を持つ医師」とも呼ばれる東京慈恵会医科大の大木隆生教授(血管外科)。米国の「USA Today」に相当すると言われる「日刊ゲンダイ」に詳しい(https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/283996)。

(大木教授は感染症の専門家ではないことに加えて)さらに気になるのが大木教授の持論だ。経済活動を止める緊急事態宣言の発令に反対の立場で、「新型コロナとの共生」を掲げ、感染症法に基づく分類を「2類相当」から「5類」に下げるよう主張。昨年5月以降、「COVID-19感染症に対する大木提言」と題するリポートを出し、最新版(5日付)にこう書いている。

<新型コロナは欧米においては恐ろしい感染症であるが、様々な理由から日本人にとっては季節性インフルエンザ程度の病気と位置づけられる><実害のない「新規陽性者数」「過去最多」に一喜一憂せず、経済的に新型コロナ対応の私立・民間病院を援助・インセンティバイズし、政治主導で新型コロナ体制強化を命じる事が出来る公的病院を最大限活用し、第2類感染症指定の運用を柔軟にすることで医療崩壊を防ぐべきである。そしてこの「日本の特権」を活用し、このまま基本的な感染対策を遵守し、国民の生活と経済優先で進めるべきである>

新型コロナ感染症を第Ⅱ類相当の指定感染症にして、行啓検査・医療措置・積極的疫学調査(陽性判定者の濃厚接触者の追求)しかできないようにすることは問題だが、単純に第5類相当にすれば、感染拡大の温床になっている無症状感染者(スプレッダー、体内に多数のSARS-CoV-2を蓄積し、相当数の非感染者を、例えば航空機内で感染させるスーパースプレッダーさえ存在する)を野放しにして、経済社会を大混乱に陥られせてしまうことになる。

政府=菅政権や菅首相忖度系の専門家は、無症状感染者の恐ろしさが普通のインフルエンザと全く異なることを意図的に無視している。だから、新浪剛史サントリーホールディング社長の諌言も受け入れない。

また、新規コロナ感染者数が表面的に減少していることは確かだが、これにも問題がある。以下、問題点を挙げてみる。

  1. 厚労省としては抗体検査を国費では実施しないし、保険適用も認めていない。抗体検査は、新型コロナ(SARS-CoV-2)に感染した場合、基本的には免疫力によって抗体が産生されるが、免疫力の弱い人には必要な中和抗体が産生されなかったり、抗体産生の過程が以上になり免疫暴走を起こしてしまう。そのため、急死してしまう場合がある。精密医療に基づく抗体検査により、その状況が分かる。直接SARS-CoV-2の有無を調べるPCR検査検査とともに不可欠なのだが、保険適用にしていないため、全国に行き渡らない
  2. 政府=菅政権の「水際対策」の失敗(英国での変異株が公表された後にも、11カ国からのビジネス、レジデント入国は認めたし、空港での検査体制も強化しなかった)から、感染力と症状悪化力の強い(毒性の強い)変異株が、日本国内で市中感染を広げる可能性が濃厚である(ただし、東大先端研の児玉龍彦東大名誉教授によると変異株による感染拡大は山を描くようで、いずれ谷を迎える)
  3. 新規感染を見通すうえで重要になる実効再生産数(免疫力を持った集団の中で、1人のスプレッダーが何人を感染させるかを示す指数)が指標に加えられていない。
  4. 新規感染者数の先行指標である公共交通機関や自動車、徒歩で移動する国民の移動指数が明確にされていない。
  5. 新型RNAワクチンがすべての変異株に効くとも限らない。南アフリカでの変異株は効かない。「新型ワクチン一本足打法」は危険である。

これらのことから、第三波が収束に向かっているとは言えない。ただし、第三波が収束しても、新型コロナウイルスの「幹」が無症状の国民の体内に存在している限りは、コロナ感染の波が何度も起きる。児玉東大名誉教授が示しているコロナ対策の基本、PCR検査・抗体検査の方法について下図に示しておく。

コロナ対策の基本
コロナ対策の基本
検査の方法
検査の方法

まとめると、日本での新型コロナ対策の基本は次のようになる。なお、未だにPCR検査は必要ではないと言っている「専門家」もいる。こうした「専門家」は、ニュージーランド、中国、台湾(世界に先駆けて即座に中国湖北省の武漢市からの渡航を禁止した)、それに韓国などで徹底的な検査を行い、昨年の実質経済成長率は中国が2.3%、台湾は2.72%だった。これらのコロナ対策先進国では、陽性者を保護・隔離・治療し、経済活動を再開させている。PCR検査は必要ではないと言っている「専門家」世界各国の現状を見ない、実質は理屈だけの「エセ専門家」に過ぎない。

新型コロナ対策の基本をまとめると次のようになる。

  1. PCR検査、抗体検査の大規模かつ徹底的な検査体制の確立。特に、感染拡大の原因になっているスプレッダーの無症状感染者の早期発見に努める。
  2. 検査陽性者の保護・隔離・適切な医療施設での治療する。
  3. 新型コロナウイルス感染症(Covid-19)のリスクについての正しい理解を周知徹底させる。ニセ情報を流さない。
  4. 高齢者や持病のある重篤化リスクの高い人の保護と治療を行う。高度の医療機関で受け入れることが主体になる。
  5. 全額国庫負担による医療機関への早期財政支援(減収補填)を迅速に実行するとともに、地域の実情に応じたコロナ専門病院・クリニックとそうでない病院・クリニックに分け、双方が協調して、医療体制の再建を実現する。
  6. 感染者が検査を安心して受けられるように、ホテル。旅館、オリンピック選手村や各種競技場の有効活用と自衛隊に要請して、簡易療養施設の確保を行う。政府が、新型コロナ感染事態を「災害指定」すれば可能だ。
  7. 日本国民の生命を守り、日本経済の供給能力が既存されないようにするため、すべての国民の生活を保障し、企業の存続を国家負担で支援する(生活支援金や持続化給付金、100%の雇用調整助成金などの支給の実施)。
  8. 各種の社会保険の納付停止(納付をしたこにする)や学生の奨学金徳政令の施行する。
  9. 利権絡みのGo To トラベルを中心としたGo To キャンペーンは中止し、第3次補正での予算はコロナ禍対策に回す。旅館・ホテルには直接、透明で公正な国庫による支援措置を行う。他の業種も同様にする。
  10. 東京オリンピック/パラリンピックのすみやかな中止を発表する(英国のタイムズ紙が政府内では中止が決定していると報道したが、リーク元は河野太郎行革・ワクチン接種担当相らしい)。政府は水面下で、中止の大義名分を探しているようだ(https://www.youtube.com/watch?v=-4t_k29yZng)。

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なお、政府のコロナ対策の分科会(尾身茂座長は)、緊急事態宣言延長のため「新たな対策」を発表したが、高齢者施設での定期的PCR検査を求めるにとどまり、PCR検査・抗体検査の大規模拡充社会検査体制の確立は打ち出しておらず、国民の不要不急の外出の自粛や飲食店を中心とした営業活動の自粛の継続が中心になっており、新鮮味はない(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210202/k10012845071000.html)。

中央政府(政府と日銀)の通貨発行権を使って、政府が国債で資金を調達し、これらの対策を真の財政規律であり、中長期的な為替相場を決める真の財政規律であるインフレ率に留意しながら実施すれば、それ自体が経済再建対策になる。れいわ新選組の山本太郎代表は90兆円規模の新発国債の発行が必要だとしている。政府は調達した円資金で小切手などを発行し、医療機関や介護センター、保育所・幼稚園などに配れば良い。


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