日米首脳会談、日本が中長距離ミサイル基地大量配置の場にーワクチン9月末迄の追加供給で実質合意か(第4波関連追記)

日本国内での深刻なコロナ禍の中、2時間半に及ぶ日米首脳会談が日本時間で4月17日早朝行われた。菅義偉首相が記者会見で台湾の防衛を念頭に「台湾海峡の平和と安定の重要性」を強調し、「日米同盟の抑止力、対処力を強化する必要があるとして、同盟強化の具体的な方策について、両国間で検討を加速することを確認」したと述べた。1972年の日中国交正常化以来、大前提としてきた「ひとつの中国論」から逸脱する内容で、取り敢えずは沖縄県、南西諸島での精密中長距離ミサイルの「積極的配備」につながる可能性が濃厚になった。また、東京オリンピック/パラリンピックの開催については、菅首相の記者会見ではバイデン大統領からは「開催の決意」を「支持する」との曖昧な発言にとどまったようだ。注目のファイザー社製などの新型コロナ用のワクチン供給については、菅首相とファイザー社のアルバート・ブーラ最高経営責任者=CEO=)との10分間の電話会談で、9月末までの完全供給で日本政府とファイザー社が供給「実質合意」することになったが、「ワクチン一本足打法」では限界だろう。

4月17日土曜日コロナ感染状況
複数のメディアによると本日4月17日土曜日の新型コロナ感染状況は、東京都では新規感染確認者は1週間前の4月10日土曜日の570人から189人増加して759人になった。2回目の緊急事態宣言語では最多。7日移動平均では569.0人になり、前週土曜日比では124.1%になった。年代別では、20代が人と239人最多が続いている。20歳未満は73人。東京都基準の重症者は45人になった。変異株による市中感染が本格化してきたと思われる。
全国では、23時59分の時点で4802人が新規感染。4日連続の4000人台で、2回目の緊急事態宣言解除後での最多数を更新した。死亡者は41人、重症者は41702人だった。東京都の死者は10人、大阪府は新規感染者数が5日連続の1000人超えの1161人になった。死亡者は12人だった。
【参考】東洋経済ONLINE(https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/)では、4月16日時点の実効再生産数は全国が前日比0.01人増の1.20人、東京都は同じく4月16日時点で前日と同じ1.16人だった。前日比上昇、下落を繰り返しているが基調的には上昇傾向のようだ。ただし、1.10人は超えているので新規感染者数が指数関数的に増加していくことが懸念される。

東京都のコロナ感染者数の推移

4月18日からの東京都の新規感染者数の推移を下図に示しておきます。4月17日の新規感染者数は、2回目の緊急事態宣言解除語では最多となった。英国で変異が発見され、感染力も重症化力も強いN501Y型変異株の市中感染が本格化してきた模様だ。4月15日から5月12日までの米Google社のAI予測(https://datastudio.google.com/u/0/reporting/8224d512-a76e-4d38-91c1-935ba119eb8f/page/ncZpB?s=nXbF2P6La2M)では17日の新規感染者数は592人、7日移動平均は520人だったから、現実は予測を上回っている。ただし、学習機能を持つから、本日の公表値は将来予測の正確さのために生かされる。AI予測を軽んじてはいけない。上図な付き合い方を見出す必要がある。

昨日の全国での新規感染者は4802人と2回目の緊急事態宣言解除された3月22日以降では最多数となった。第4波の襲来は明らかであるが、菅首相は新型コロナ感染4波襲来の予見も出来ず、事実上の対中軍事同盟を世界に宣言する日米首脳会談に狂奔した。そればかりか、「非常事態宣言発出(発出しても感染急増・爆発は抑えられない)は訪米(の成果=東京オリンピック/パラリンピック開催への積極的支持)に差し支える」と思ったのであろう、否定すらして、米国に逃げ込んだ。その責任を問わなければならない。

4月16日(ワシントン現地時間)の日米首脳会談の真相

今回の日米首脳会談は、米中の経済力、軍事力の近い将来の逆転が予想される中、米中の世界的な覇権争いの中で開かれた。首脳会談の背景について、触れておきたい。

米国は1987年12月7日にソ連(当時、以下同じ)との間で調印された中距離核戦力全廃条約(INF=Intermediate-Range Nuclear Forces Treaty=条約、核弾頭ミサイルだけでなく通常の中距離ミサイルも含む)の中で、中長距離ミサイルの開発が出来なかったことに加え、2001年9月11日の米国同時多発テロ事件(米国を実質的に支配するディープステート=軍産複合体と多国籍金融資本・企業=による陰謀説も根強い)以降、発展途上国での対テロ戦争に注力(終始)してきた。その結果として、軍事力の現代化に立ち後れが目立つようになった。

一方で、中国は、ニクソン大統領・キッシンジャー大統領補佐官(外交担当)の忍者外交から開始された関与政策(中国を国際社会に応分の責任あるひとつの国家として育てることが狙い)をきっかけに(好機にして)、1972年9月29日の日中国交正常化声明、1978年8月12日の日中平和友好条約調印をテコにして、外国(とりわけ日本)の資本と技術を導入し、経済発展を遂げる「改革・開放路線」を推進。1989年6月4日の日曜日に起こった天安門事件で一時頓挫したものの、引退していた鄧小平が1992年1月から2月にかけて武漢、深圳、珠海、上海などを視察し、南巡講話(なんじゅんこうわ)を行って改革・開放路線を再び軌道に乗せた。

この結果、中国の科学・技術・経済の発展とともに、軍事力も増強された。特に、中国はINF条約には無関係で全く縛られなかったから、中長距離ミサイルの開発と性能強化(精密中長距離ミサイルの開発と製造、実戦配備)を中心に、軍事力の近現代化に大きな力を入れた。その結果として、少なくとも東アジア地域においては米中の軍事力が逆転してしまった。米国としてもそのことを十分に認識しており、その結果として、トランプ政権末期の2020年7月23日、マイク・ポンペオ米国務長官はカリフォルニア州のあのニクソン大統領記念図書館で、「関与政策」を否定し、決別する「対中対決路線」を鮮明にした。

本サイトでしばしば指摘させていただいたように、バイデン大統領はディープステート傘下にあるから、ポンペオ路線を引き継いで、「対中強硬路線」を驀進している。ただし、米国では対中強硬路線の危険性を指摘し、批判するシンクタンクも少なくない。鳩山友紀夫元首相が理事長を務める「東アジア共同体研究所」が紹介したクインシー研究所(The Quincy Institute for Responsible Statecraft=責任ある政治手腕を目指すクインシー研究所=)もそのひとつだ。

日本では、東アジア共同体研究所」や「新外交イニシアティブ(ND=New Diplomacy Democrative=)」(特定の個人・団体・企業などから独立した特定非営利活動法人)などのシンクタンクが。米国の対中強硬路線を強く警告している。NDが今年の2021年3月にまとめた報告書・提言「抑止力一辺倒を超えてー時代の転換点における日本の日本の安全保障戦略」(https://www.nd-initiative.org/wordpress/wp-content/uploads/2021/04/84b87771c22f8ba2e1b5dc8acc37eb2e.pdf)から、現在の米中軍事事情勢の一文を引用させていただきたい。

トランプ政権の後半、米中の対立関係はいっそう先鋭化した。米国は、台湾海峡や南シナ海に軍艦や爆撃機を派遣し、空母機動部隊を集結させた訓練を行うなど、中国に対する軍事的プレゼンスを強化した。中国も、台湾周辺での海・空軍の活動を活発化するとともに、米海軍艦艇や基地への攻撃を想定したミサイル演習を行うなど、軍事的緊張が激化した。

米国は、伝統的な対中関与の政策を否定し、中国封じ込めのための同盟国・友好国による新たな連携を模索した。また、台湾の国連加盟を主張するとともに、高度な武器の売却や閣僚級の高官派遣など、米中台三者によって共有されていた「一つの中国」という、台湾海峡両岸関係の基本的認識を否定する動きが見られた

さらに米国は、貿易の不均衡是正のための追加関税のみならず、国家安全保障を理由とした鉄・アルミニウム等の関税引き上げを行うとともに、ハイテク分野での中国企業の締め出しや、中国経済との相互依存関係を分断するデカップリングまでも追求を始めている。中国も、中国を批判する貿易相手国への制裁や、戦略物資の輸出規制などを可能とする国内法を制定して対抗した。

米国の「中国関与政策」や日本の「中国国交正常化」、「日中友好条約」の大前提だった「ひとつの中国論」を否定してきたのが、米国であり、それに追随してきたのが安倍晋三政権以降の日本政府なのである。台湾が「独立国」として生き延びるためには戦後、米国が唯一の超大国であった時代に、台湾が「独立宣言」を行い、独立国家化しておけば良かったのではないだろうか。今回の日米首脳共同声明に盛り込んだ「台湾海峡の平和と安定」を大義名分に、米国が中国との覇権争いを覆い隠すというのはいかがなものか。また、米国もダブル・スタンダードな「人権外交」を行うべきではない。

バイデン政権はトランプ政権ほど中国敵視政策はとらず、国際協調主義路線を採るだろうと見られていたが、バイデン候補は大統領選挙投票日の数カ月前にディープステートから多額の資金供与を受けるなど、その傘下にあることは明白だった。だから、対中強硬路線を採るのは当然であり、事実上の「台湾防衛」を論議を行った。中国を極度に刺激したのも当然のことではあった。今回のバイデン大統領・菅首相の日米首脳会談もこうした観点から評価する必要がある。

政府=菅政権の広報機関となっているNHKのWebサイトで公開された「日米首脳会談 菅首相 “台湾海峡の平和と安定の重要性確認”」(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210417/k10012980451000.html)と題する報道を一部抜粋させていただきたい。

菅総理大臣は、アメリカのバイデン大統領と初めての日米首脳会談を行い、中国が東シナ海などで力による現状変更を試みていることに反対していくことで一致し、自由で開かれたインド太平洋の実現に向け、日米に加え、ASEAN=東南アジア諸国連合などと連携を強化していくことで一致しました。また、台湾海峡の平和と安定の重要性について、確認しました。(中略)

 

 

この中で両首脳は、中国への対応をめぐって意見を交わし、東シナ海や南シナ海での力による現状変更の試みと、威圧的行動に反対していくことで一致しました。一方で、日米両国が中国と率直な対話を行う必要があり、国際関係の安定を追求すべきだという認識で一致しました。

また、両首脳は、日米同盟の抑止力、対処力を強化する必要があるとして、同盟強化の具体的な方策について、両国間で検討を加速することを確認しました。そのうえで、菅総理大臣が、日本の防衛力強化への決意を述べたのに対し、バイデン大統領は、沖縄県の尖閣諸島が日米安全保障条約第5条の適用対象であると改めて表明しました。(以下略)

この中で、「両首脳は、日米同盟の抑止力、対処力を強化する必要があるとして、同盟強化の具体的な方策について、両国間で検討を加速することを確認しました」というのは、米国が大幅に立ち後れている精密中長距離ミサイルの沖縄を含む南西諸島への配備だ。NDの報告書が次のように述べていることからも分かる。

中国は、台湾や南シナ海をめぐる武力紛争に備えて、米国の介入を阻止するための接近阻止・領域拒否(A2/AD)の能力を向上させるべく、中距離・短距離ミサイルや潜水艦の能力強化に重点を置いた軍拡を進めるとともに、米軍の指揮・通信・情報システムの基盤となっている宇宙・サイバー領域における妨害能力を高めてきた。今日、米軍にとって、西太平洋・東アジアで中国のミサイルから安全な地域は減り、行動の自由が失われている。

米国は、当該地域における軍事的優位性を回復させるべく、インド太平洋軍の態勢を変換しつつある。すなわち、大規模な地上基地や空母などの大型艦艇が中国のミサイル攻撃に対して脆弱であることから、兵力を小型化・分散化して、精密打撃ミサイルのプラット・ホームを増やし、相手の攻撃目標を分散しつつ、海洋におけるミサイルの打ち合いに勝利する態勢を構築することで、失われつつある優位性を回復しようとするものである。同時に、西太平洋における米軍のハブであるグアム島の防衛のための地域統合ミサイル防衛網を、同盟国と共同して構築しようとしている。

そこでは、南西諸島を含む日本列島が前線拠点として重視される。同時に、自衛隊のミサイル防衛や長射程化したミサイルの能力が米軍の統合作戦の一部に組み込まれ、ひいては、米中の戦争となった場合には、沖縄や日本本土の基地が攻撃されるリスクが高まることに留意しなければならない。

この場合、沖縄県および南西諸島で中長距離ミサイルの配備が始まることになるだろうが、要するに、中長距離ミサイルの配備と発射基地の整備を行わなければならなくなる。既に、その配備計画も着々と進められているようだ。下図は、NDに所属している軍事ジャーナリストの半田滋氏によるものだ。しかし、米国の指令に従って、中長距離ミサイルを配備したとしても、日本(と米国)には勝ち目はない。米空軍嘉手納飛行場と本土にある在日米軍の主要な6基地である三沢、横田、厚木、横須賀、岩国、佐世保基地の滑走路が攻撃を受けてしまい、空軍基地としての役割を果たすことができなくなる(使用不能になる)のがオチだ。

「抑止力」というのは、相手方の先制第一撃に対して報復攻撃を行い、それによって先制攻撃した側に莫大な損害を与えることができることを知らしめることによって、相手側に「先制攻撃」を思いとどまらせることを意味する。しかし、日本が米軍(米国)の指示に従って中長距離ミサイルを配備したとしても、「抑止力」は確保できないというのが、軍事ジャーナリストの半田氏の認識であり、サイト管理者(筆者)も恐らくそうだろうと思う。

 

米軍と自衛隊による中距離ミサイルの配備計画
米軍と自衛隊による中距離ミサイルの配備計画

 

また、菅首相は、バイデン大統領が「尖閣諸島は日米安保条約の適用対象領域」にあると再度「言明してくれた」ことを誇らしげに語っているが、第5条は次のようになっている。「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する」。条文では「施政の下」と記載されており、米国政府は従来、「領有権」問題には立ち入らないとしてきたので、「尖閣諸島」の防衛問題についてはあいまいにしてきた経緯がある。

日中国交正常化や日中友好条約調印時には「尖閣諸島」の領有権問題については「棚上げ論」だったから、バイデン大統領のサービス発言とは言える。しかし、中国の精密中長距離誘導ミサイルの性能を考慮すれば、米国が尖閣諸島を「防衛」しようとしても、軍事技術的には不可能だと思われる。加えて、以前から言われていたことだが、「自国の憲法上の規定及び手続」に従ってとあるから、バイデン大統領は米議会の判断を仰がなければならない。尖閣諸島の奪回が軍事技術的には不可能な中で、米議会が米兵士の血を流してまで「尖閣諸島」を防衛してくれるかと言えば、そうはならないのではないか。要するに、日米安保条約は名実ともに「張子の虎」になっている。それが、現実だ。

なお、半田氏によると、米国の軍部では6年以内に台湾海峡で有事が勃発すると予想しているという。中国が起こすのか、陰謀が謀られるのか不明だが、「有事」を大義名分に沖縄県ー南西諸島に中長距離ミサイル基地建設が急がれることになるだろう(https://www.youtube.com/watch?v=wDKH4xR-qiM&t=7s)。

なお、米国では経済面でも中国とのデカップリングを進めるつもりであり、日本に対しては表面的には経済関係に影響を及ぼすことはないとしているが、裏では経済面でのデカップリングを求めてくる可能性がある。その場合、中国との経済関係が深まっている日本は大きな経済的打撃を被ることは避けられない。中国が日本に対して報復をすることも考えられる。日本は自公連立政権内で、「媚中派(代表は自民党の二階俊博幹事長)」と揶揄される「親中派」と「対米隷属派」との闘争が起こり、「股裂き状態」に陥るだろう。朝日デジタルは午後18時27分に、「受け身の菅氏 米中から『踏み絵』迫られる恐れも」というタイトルの記事を投稿・公開している。一部を抜粋させて頂く。

これまで日本は「安保は米国、経済は中国頼み」と使い分けてきた。ただ、軍事・経済・人権・技術といった広範な分野で米中対立が激化すれば、そうした外交手法が限界を迎えることになるのも事実だろう。

日米共同声明の内容については取り敢えず、こちら(https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100177719.pdf)をご覧下さい。中国は取り敢えず、在米中国大使館を通して「強い不満と断固とした抗議」を表明した。なお、ディープステートが支配している米国、対米隷属外交を続け政官業癒着の利権政治を展開してきた日本も「国民主権と基本的人権」を保障し、世界の平和を追及する真の意味での「民主主義国家」とは言えず、「似非民主主義国家」の段階にとどまっている。

軍事ジャーナリスト・半田滋氏による
軍事ジャーナリスト・半田滋氏による

 

現在及び将来の米中の経済力・軍事力から推測すると、「敵基地攻撃能力の保有」のためと称して中長距離ミサイル建設基地を建設し、中国と交戦するのは実際のところ。無謀だろう。日本はディプステート傘下のバイデン大統領の指示に従って中国相手に軍拡を推進するのではなく、日本に相応しい安全保障外交を展開していかなければならないのではないか。NDの報告書は次のょうな提言をしている。多少長くなるが、引用させていただきたい。まず、大前提は次の通りだ。

  • 世界は、構造変化の時代にあり、相互不信が「安全保障のジレンマ」を顕在化するリスクを高めている。民族・人種・宗教・社会的階層の分断が進み、国内的・国的不安定化と対立を助長する一方、自然災害・感染症の蔓延のなかで、人々の不安が拡大している。
  • 変化と不安の時代にあって、国民が安心して生活できる国と社会のあり方を守ることが本来の安全保障である。それは、軍事のみで成り立つものではなく、また、学に基づく国民への説明が強く求められている。安全保障に必要なものは、広角的視野と説明責任である。
  • 戦後日本は、「東西冷戦下における安定的抑止」と「多国間協力による連携」という国家像のもとで発展した。いま再び日本が、世界の架け橋として、対立から協調に導く役割を果たす必要がある。
  • 軍事面では、米中対立が戦争に至らないようにすることが喫緊の課題である。抑止力を高める一方で、抑止を安定化させるための「安心供与」と、信頼醸成・多国間協力を通じた対立の管理を「車の両輪」として機能させなければならない。
  • これらの観点から私たちは、政治における議論が、戦術的抑止のレベルにとどまっている現状を危惧する。

そのうえで、NDは次のような具体的な提言を行っている。

米中対立のなかで、防衛努力は重要であるが、戦争となった場合の日本の被害が甚大となることへの思慮も不可欠である。米国の戦略に協力する場合には、「戦争に巻き込まれない」心構えが必要である。米中の架け橋として、また、地域の架け橋としての役割を追求すべきである。

  • 米軍の中距離ミサイルの配備など、日本をミサイル軍拡の場とする政策に反対すべきである。
  • 自衛隊ミサイルの長射程化や艦艇のプレゼンスなどがかえって地域の緊張を招くことがないように配慮すべきであり、「敵基地攻撃の禁止」など自衛隊の運用に関する新たな「歯止め」を設けるべきである。
  • 沖縄への過重な基地負担は、日米同盟の最大の不安要素である。膨大な経費を必要とする辺野古新基地の建設は、取りやめるべきである。また、米軍基地の県外への分散を進めるとともに、日米地位協定の改定を目指すべきである。
  • 日中の紛争要因である尖閣については、力だけで守り切ることが困難なことを踏まえ、海上保安庁の態勢を強化し、加えて、日中間の政治的危機管理体制を構築すべきである。
  • 在日米軍駐留経費負担については、コロナ禍で財政がひっ迫するなか、合理的根拠に基づかない安易な増額をすべきではない。
  • 「インド太平洋」諸国との連携を進めるべきである。その際、対中封じ込めと軍事協力一辺倒ではなく、地域の協調関係を推進するためのアジェンダの包括性と当事者の多様性を追求すべきである(QUADを対中包囲経済・軍事同盟にしてはならないということ)。
  • 日本の発信力の源泉としての「唯一の戦争被爆国」であること、憲法第9条を持つ「非戦の国」であることを活かし、多国間枠組みの創設とその活性化を目指すべきである。また、核兵器禁止条約締約国会議に積極的に参加し、地域の信頼関係を醸成すべく核廃絶に向けた主導的役割を担うべきである。

鳩山友紀夫元首相が理事長を務めているシンクタンクの「東アジア共同体研究所」も、戦後一貫した対米隷属外交に変わる新たな国家外交戦略の必要性を指摘している。独自のミャンマー情勢を披露した鼎談番組:https://www.youtube.com/watch?v=cVotXDOLzAQ外務省国際情報局長、イラン大使、防衛大学教授を歴任し、戦後の日本外交の深層に詳しい同研究所の孫崎享所長の国際情勢分析を紹介した対談番組:https://www.youtube.com/watch?v=baSLa1dvHHAなどがそれだ。

NHKがWebサイトで共同記者会見の内容として、菅首相は「中国とは日米両国が中国と率直な対話を行う必要があり、国際関係の安定を追求すべきだ」と語ったと言うが、その裏ではバイデン大統領を傘下に置くディープステートの指示に従って、軍事大国でもある中国に対して無謀な「敵基地攻撃能力」を着々と進めることを約束させられたというのが、本当のところなのである。

中国は近代西欧が達成した価値観が反映されている「国連憲章」を守り(ただし、「敵国条項」は削除しなければならない)、「国際連合」を前提とした国家外交を行うことか国是になっており、近代西欧社会が達成した基本的価値観は無視することができない。韓国は中国との経済的・外交的関係が、日本より深まりつつある。日本は本来なら、韓国とともにまず、世界人権宣言に基づいて作成された人権に関する多国間条約である「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(社会権規約、A規約)」、「市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約、B規約)」の双方の批准を求めていく粘り強い言葉の真の意味での「積極的平和外交」を行っていく必要がある。

菅首相の訪米・帰国に「お土産」はあるか?

さて、菅首相がバイデン大統領にひざまずいて得たものは何か。東京オリンピック/パラリンピック開催問題とワクチン入手問題(ただし、安全性と有効性ー特に、変異株に対する有効性ーが大前提)が焦点になるが、現時点(4月17日午前8時段階)では次のようなものだ(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210417/k10012980451000.html)。

さらに、新型コロナウイルス対策で重層的な協力の推進に取り組むとしたうえで、ワクチン供給や国際保健分野での官民協力の強化について、両政府間で引き続き協力していくことを確認しました。(中略)

さらに、東京オリンピック・パラリンピックについて、菅総理大臣が「ことしの夏、世界の団結の象徴として、東京オリンピック・パラリンピックの開催を実現する決意だ」と述べたのに対し、バイデン大統領は支持を表明しました。(中略)

これに対するバイデン大統領の共同記者会見の発言は次のようなものだ(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210417/k10012980401000.html)。

新型コロナ収束が最優先


「われわれの最優先課題は、新型コロナウイルスの感染拡大を収束させ、インド太平洋地域を支援することだ。われわれは世界的なワクチン接種への支援を強化することで一致した。次のパンデミックに備え、新たなパートナーシップを構築する」

 

まず、共同記者会見では、バイデン大統領からは東京オリンピック/パラリンピックについては特段の言及はなかったようだ。東京オリンピック/パラリンピック開催に関しては、「日米首脳共同声明」では「競技に参加する日米両国の選手たちを誇りに思う」との表現があるが、「安全・安心な開催」であることが条件。また、共同記者会見でのバイデン大統領の発言は、バイデン大統領が菅首相の「開催に向けての決意」を支持しただけとも受け取れる内容で、開催そのものを支持したかは不明だ。いわんや「開催式に訪日・出席する」との確約を示す発言はまだ明確な報道がないようだ。

米国の大統領の場合は、3カ月先程度のスケジュールなら、既に決まっている可能性が高い。共同記者会見でのバイデン大統領の発言は、日本側関係者の「努力は支持する」ということだった可能性が高い。ただし、菅首相が開会式への出席を正式に要請したのかどうか、そして米側の対応はどうだったのかについては、極秘事項になっているようだ(https://digital.asahi.com/articles/ASP4K671VP4KUTFK012.html?iref=comtop_7_01)。

自民党の二階俊博幹事長が15日、オリ/パラ中止に言及したのも、菅首相の訪米前の折衝・調整でバイデン大統領側から「オリ/パラ開催積極的支持」の発言が得られないことが明らかになったことによるという可能性もある。なお、朝日デジタルによると、菅首相は東京オリンピック/パラリンピック開催に対する外国のメディアの質問には答えなかったという(https://digital.asahi.com/articles/ASP4K2G5CP4KUTFK007.html?iref=comtop_7_02

バイデン米大統領との共同記者会見では、米メディアが菅義偉首相に東京五輪開催について、新型コロナウイルスのワクチン接種が進んでいないことを念頭に「公衆衛生の観点から日本は五輪の準備ができていない段階で進めるのは無責任ではないか」と質問した。だが、菅首相はこれには直接は答えず、日本メディアに次の質問を促した。

また、日本のメディアの質問に対しても、「東京大会を実現すべくしっかり準備を進めていく」と述べただけで、「人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証し」という威勢の良い言葉は語らなかったという。なお、韓国から3月28日、ゴルフ・ツアー来日したゴルフの選手が14日の「隔離期間」後の4月12日に受けたPCR検査では陰性と判定されていたが16日朝、38.5度の発熱があり、試合会場には来ずに三重県桑名市内の病院で抗原検査を受けたところ、陽性と判定された(https://news.yahoo.co.jp/articles/591ebbecdfc742cf0f629dc4dbcb9b94f349f822)。日本国内で感染した可能性も否定できない。78歳と高齢のバイデン大統領が変異株に感染すれば、国際情勢を揺るがす事態になる。

開催都市・東京都の小池百合子都知事も東京都に出入りしないように呼びかけている。また、NPO法人・医療ガバナンス研究所の上昌広理事長・医師は夏場が新型コロナウイルスの第二の活性期になることから、第4波が第5波に続く可能性があると指摘している。バイデン大統領の場合は特別警戒体制が取られるだろうが、外国の高齢者はいかなる人物であれ、東京オリンピック/パラリンピックに来ないほうが良いのではないか。

次に、菅首相と米国の大手製薬会社・ファイザー社のアルバート・ブーラ最高経営責任者(CEO)との電話会談については、朝日デジタルの報道によると菅首相が「国内の対象者全員に9月までに確実に行き渡るよう、追加供給を要請」したところ、ブーラ氏は、日本政府と協議を進めると応じた」という(https://digital.asahi.com/articles/ASP4H750DP4HUTFK01X.html?iref=comtop_7_02)。

【追記:4月18日午後15時30分】河野太郎行政改革・ワクチン担当相が18日のフジテレビ番組で明らかにしたところによると、16歳以上の対象者全員(約1億1千万人)分のワクチンの追加供給で菅首相とファイザー社のブーラ最高経営責任者(CEO)が実質合意に達したというhttps://www.tokyo-np.co.jp/article/98923)。

ただし、感染症対策の基本は、➀検査と保護・隔離②抗ウイルス剤による適切な治療③第3相の治験を通過した安全で有効なワクチンの開発と接種ーだ。「ワクチン一本足打法」では限界がある。

ファイザー社のブーラ最高経営責任者(CEO)は日本政府=菅政権との協議には応じた形だ。河野氏の「実質合意」という発言が、同CEOが日本への追加供給を確約したことを意味するかどうか確認する必要がある。わけではない。期待されている菅首相の日本への「お土産」は実際のところどうなるのか。



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