飲食店限定の「緊急事態宣言」では効果なし

政府=菅義偉政権は本日、1都3県で緊急事態宣言発令の要請があったことを踏まえ、感染症対策の専門家に意見を聴く「諮問委員会」にはかったうえで、国会衆参の議院運営委員会での報告(冬入り間近にGo To キャンペーンで全国に感染を拡大した菅首相は逃げ、西村康稔経済再生相が答弁に立つ)のあと、夕方の新型コロナウイルスの対策本部で「飲食店」をやり玉に限定的な緊急自他宣言を正式に発令する予定だ。しかし、東京では6日の移動平均でさえ感染経路不明率は68.29%と70%に達している。飲食店を含むいたるところで市中感染が発生している中、限定的な「緊急事態宣言」では、実効再生産数計測の専門家である京都大の西浦博教授も指摘するように、1都3県での感染爆発を抑えることはできない。

【追記】菅首相は本日7日午後17時ころ、東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県を対象に新型コロナウイルス対策の特別措置法に基づく限定的な緊急事態宣言を再発令した。期間は、明日8日午前零時から2月7日までとしているが、7日で終了するかは不明だ。

1月7日木曜日コロナ感染状況

本日1月7日水曜日の新型コロナ感染状況は、東京都では新規感染確認者は1週間前の12月31日木曜日の1337人を一挙に1110人も上回る過去最多更新の2447人に激増、死亡者は11人、重症者も前日から8人増えて過去最多の121人になった(https://www.fnn.jp/articles/-/61484)。限定的な「緊急事態宣言」の再発例ではなく本来なら十分な補償措置を含む「都市封鎖」に近い対策が必要な情勢だ。
全国では、午後23時59分時点で新規感染者数は7570人、死亡者は65人、重症者は前日から12人多い796人が確認されている。大阪府は新規感染者が607i人、死亡者は8人が確認されている。緊急事態宣言発令必要なしと現状に目を向けなかった維新大阪府の吉村洋文知事も医療機関や府民の批判の声を受けて、明日8日にも緊急事態宣言発令を要請することになった。いつものように、菅首相の「静かな年末年始」は破綻した。
東京都のモニタリング(https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/)では、7日移動平均での感染者数は1230.4人、PCR検査人数は7628.3人だから、瞬間陽性率は15.13%。東京都独自の計算方式でも14.7%。感染者のうち感染経路不明率は67.81%だった。
【参考】東洋経済ONLINE(https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/)では、1月6日時点の実効再生産数は全国が前日比0.04人増の1.11人、東京都は前日比0.05人増の1.22人となっている(本投稿記事参照して下さい)。

 

東京都のコロナ感染者数推移

東京都のコロナ感染者数推移

東京都のモニタリング(https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/)では、7日移動平均での感染者数は初めて1000人を突破して1071.9人、PCR検査人数は6799.3人だから瞬間陽性率は15.76%だが、東京都は独自の加工をしており、公表陽性率も低く押さえられている。その東京都公表値の陽性率でさえ14.4%と、世界保健機構(WHO)が各国に対してそれ以下に抑えることを要請している5%の3倍近い水準になっている。

感染者のうち感染経路不明率は68.29%と70%に接近している。大規模な市中感染が急速に広がっている状況だ。「飲食店」だけが感染源だとすると、新規感染者の追跡調査をすれば、感染経路は特定できても良さそうなものだ。実態は、政府=安倍晋三政権(当時、官房長官は現在の菅首相)1都3県の保健所そのものを削減してきたため、保健所職員を含め医療資源が非常に不足しており、追跡調査もままならない状況なのだろう。


 

全国では、昨日6日には新規感染者数はこれまで経験のなかった5000人台を通り越し、初の6000人台で過去最多の6001人、死亡者は65人、重症者は前日比11人増加の784人が確認されている。1都3県どころか、全国で状況の悪化は明らかになっている。

菅首相

菅首相(首相官邸のサイトより)

こうした中で菅首相は本日7日夕刻、1都3県に対して正式に「緊急事態宣言」を再発出する予定だ。適用は明日8日午前零時からになる。NHKWebで予定の概要をまとめている(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210107/k10012800461000.html)から、引用させていただく。

これを前に、7日午前、感染症の専門家などでつくる「諮問委員会」が開かれ、政府側が、緊急事態宣言について、首都圏の1都3県を対象に期間を8日から来月7日までとするといった方針を説明し、意見を聴くことにしています。(中略)

今回の宣言のもとで、政府は、経済への影響を最小限に抑えたいとして、飲食の場での感染リスクの軽減策など、限定的な措置を講じることにしています。

そして、実効性を高めるため、知事が行う営業時間の短縮要請に応じない飲食店の店名などを公表できるよう、政令を改正する一方、要請に応じた事業者への協力金を拡充し、店舗ごとに、1日あたり6万円とする方針です。

このほか、➀テレワークの7割化②大規模イベントを5000人以下もしくは収容人数の半分以下の少ない方に抑えるーことが加わる。基本的には昨年初めて発出して感染拡大をそれなりに抑え込んだ「緊急事態宣言」とは規模がまるで異なる。飲食店への店舗支援金も1日6万円、1カ月で180万円程度と固定経費(店舗の家賃や電機・ガス・水道代などの固定経費、従業員へのまともな給与収入補償)や遺失機会利益の補填にはまるで不十分である。

これは、感染拡大の震源地(スプレッダー)になっている無症状感染者を早期に発見し、保護・隔離・簡易医療施設など適切な治療で重症化を抑えるーための大規模検査体制の確立や経営不振に陥っている医療機関への迅速な経営支援措置(現在は自治体が2割負担しなければならないことが妨げになっている)、企業の経営持続・雇い止め・解雇を防ぐための「持続化給付金」の延長、事実上の営業停止による従業員の収入補填をするための「生活保障支援金」などの財政措置が経済の下支えと供給力不足に陥ることを緩和することになることを無視しているからだ。

こうした、「飲食店」をやり玉にあげた限定的な「緊急事態宣言」では感染爆発を防げない。このことを厳密な計算に基づいて指摘した専門家が、有効再生産数計測の専門家である京都大の西浦博教授だ。西浦教授は大手メディアに発表したが、朝日デジタルは昨日6日22時00分に「沈静化に2カ月以上、飲食店対策では限界 西浦教授試算」と題して公開した。下記に中心的内容を引用させていただく。

西浦さんは現在、厚労省の専門家組織の委員ではないが、座長が必要性を認め、この結果を6日の会合に非公開資料として提出した。(中略)

計算には、感染者1人が感染させる人数を示す実効再生産数を使った(本サイトで紹介している東洋経済ONLINE=https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/=の実効再生産数の計算方法は西浦教授厳密な計算方法の簡易版)。1未満なら感染が収まっていく。都の12月16日以降のデータでは平均1・1ほど。この状況が続けば、2月末に1日あたりの感染者は3500人を突破し、3月末に7千人を超える(注:べき乗で増加するため)。

(しかし)今回の緊急事態宣言に伴う対策が昨春の(緊急事態)宣言時に近い(規模で実施されて)効果を持てば、2月下旬にも都内の1日の感染者を100人未満にできるが、飲食店の時短営業で期待できる効果では、減らすことはできないという結果だ。(中略)

西浦さんの計算では、実効再生産数が0・7ほどになると、都内の1日あたりの感染者は1カ月後に300人を切り、2カ月後に50人を下回る。西浦さんは、分科会が挙げた対策が十分に効けば(注:分科会の提言も表面的には菅首相の意向を忖度して飲食店対策が中心であり疑問)、0・7ほどに到達できるとみる。(中略)

ただし、西浦教授の試算には恐らく、日本の市中で英国で変異したウイルスの感染者が確認されている(数十人の規模)らしいが、その感染力は考慮されていないと思われる。なお、サイト管理者(筆者)は、実効再生産数を引き下げるための感染拡大防止策(接触感染対策、排泄物対策)は必須で、そのために知己でない国民同士の接触を大幅に減らすことは必要だと思ってはいる。

しかし、それ以上に、無症状感染者が感染拡大の震源地(スプレッダーが集積したエピセンター)ことから、東大先端科学研究所に所属し、遺伝子工学に詳しい世田谷区在住の児玉龍彦東大名誉教授らが指摘するように、感染爆発地域での全員PCR検査(行政検査ではなく社会的検査)を含む大規模検査体制の確立が不可欠と見ている。この検査体制の確立は、「東京オリンピック/パラリンピック」強行開催を戦中の「国体護持」のように最上位目標に置いてきたから、徹底的に抑制されてきた。

立憲民主党の参院銀で急逝された羽田 雄一郎参院幹事長(参院5期)はコロナ感染者との濃厚接触が疑われたが、無症状感染の状態であった際、参院議院に設けられた医療施設にPCR検査について依頼したところ、同施設も含め検査機関が紹介されなかった。このため、羽田参院議員がインターネットを使って自分で検査機関を探していたところ、症状が突然悪化し、救急車の中で逝去された。新型コロナに感染した場合、こういう事例がしばしば起こる。その一方で、大相撲の白鵬は容態の悪化を訴えると、2〜3日後にPCR検査が行われ、入院することになった。

日本の国民は、PCR検査をすぐ受けられ、医療措置も可能な上級国民と下級国民にほぼ分断されている。羽田参院議員は立憲の重鎮だったが、野党議員であるため結果として下級国民扱いになったのだろう。

大阪府や北海道旭川市は自衛隊看護班の出動を要請し、飲食店対策を強化したから、新規感染者が減少に転じたと報道されているが、事実には反する。政府=菅政権が、飲食店の営業自粛強化で感染拡大が減っているとしている大阪府の6日の新規感染者数は560人、死亡者数は10人が確認されており、新規感染者数が上昇傾向に転じている。北海道は人口密度が低いために、減少傾向が見られるが、6日は新規感染者が115人、死亡者が5人確認されている。

大阪府の吉村洋文知事

大阪府の吉村洋文知事(大阪府のサイトより)

なお、ニュース・サイトリテラのネット投稿記事(「大阪の感染者560人…吉村知事『感染拡大が抑えられている』『緊急事態宣言は不要』に非難殺到! 12月死者は東京の倍」=https://lite-ra.com/2021/01/post-5756.html?utm_source=onesignal&utm_medium=button&utm_campaign=push)によると、大阪府の吉村洋文知事(日本維新の会副代表、代表に就任すると見られている)が緊急事態宣言の発令を要請しなかったことに、大阪府・大阪市の医療機関や市民の非難が集中している。

大阪府のコロナ感染者数の推移

大阪府のコロナ感染者数の推移

北海道の感染者数の推移

北海道の感染者数の推移

西浦教授と上図が示すように、「飲食店」をやり玉に挙げた期間も短い「緊急事態宣言」では感染拡大・爆発を抑制することは困難だろう。やはり、菅首相の「頭の中」は異常だ。恐縮だがやはり、リテラの「菅義偉首相の緊急事態宣言が遅れた言い訳がもはやホラー!『専門家と医療業界が年末年始に感染者が少なくなると考えたから』」(https://lite-ra.com/2021/01/post-5757.html?utm_source=onesignal&utm_medium=button&utm_campaign=push)の投稿記事から中心的な内容を引用させて頂きたい。

実際、菅首相は緊急事態宣言の再発出が遅くなった理由について、とんでもないことを口にしていた。記者会見のあとに生出演した4日放送『BSフジLIVE プライムニュース』(BSフジ)で、「年末年始において陽性者数が少なくなるだろうと専門家を含め考えたのも事実」と発言したのである。
あれだけ感染者数が急拡大していたというのに「年末年始に陽性者数が減ると考えていた」って、この国の首相は本当に正気なのか。しかも、そんな専門家がどこにいたというのか。もしいたとすれば、それは年末(年始)の検査数の減少によって陽性者数も減るという意味であって、当然ながらそれは感染が落ち着いたことをまったく意味しない。そんなことはいまどき小学生でもわかる話だ。

やはり、菅首相の退陣と分科会など政府の意向を忖度する「専門家」の交代によるコロナ禍対策の抜本的転換しか道は残されていない。なお、ワクチンについては次の記事を参照して下さい。