コロナで米有力紙「オリ/パラ中止」要求強める、米陸連も千葉県での事前合宿中止(追記「感染症利権ムラ」大失敗)

日本のコロナ禍対策が根本から間違っているため、英国の有力紙タイムズ紙を皮切りに、世界のメディアは東京オリンピック/パラリンピックの強行開催中止を求める論調が目立つようになった。オリ/パラの開催期限が近づくに連れて、中止を求める論調が強まるだろう。こうした中で昨日5月12日、千葉県から、オリンピックの花形競技である陸上競技の主役である米国陸上競技連盟(米陸連)が千葉県で行うことになっていた事前合宿(ホストタウン事業)を取り止めることが正式に発表された。オリ/パラの強行開催を中止できるのは、小池百合子東京都知事と米国オリンピック・パラリンピック委員会( USOPC)、それにバイデン大統領だろう。

5月13日木曜日コロナ感染状況

5月13日コロナ感染状況
複数のメディアによると、5月13日木曜日の東京都の新型コロナウイルスの感染者数は前週木曜日比419人増の1010人と9日以来の1000人台になった。東京都基準の重症患者は84人になった。7日移動平均では900人を突破して933.9人になり、前週比126.8%になった。
全国では午後23時59分時点で、新規感染者は6880人、重症者は1214人、死亡者は101人。大阪府では新規感染者数が761人になり、33人の死亡が確認された。要注意自治体は北海道で、712人もの新規感染者が出た。北海道新聞によると集団感染(クラスター)地帯は大きな百貨店や飲食店ではなく、病院や学校であり、「緊急事態宣言」が全く間違っていることを意味している。

昨日5月12日はコロナ新規感染者数が7057人、死亡者106人、重症者は106人1176人だった。北海道が危機的状況になっている原因は、国立感染研究所が突然、チョロッと申し訳程度に、全国で新型ウイルスが英国型のN501Y変異株に90%、関西圏や首都圏で100%置き換わっていることにある(https://news.goo.ne.jp/article/abematimes/nation/abematimes-8657947.html)。しかも、通達でN501Y変異株に置き換わった基礎自治体では検体の変異株調査をしなくても良いという通達を出している(https://www.mhlw.go.jp/content/000777007.pdf)。

これは詰まるところ、変異株のゲノム解析を行う力が「感染症利権ムラ(厚生労働省保健局結核感染症課傘下の国立感染研、地方衛生研究所、保健所)」に無くなっていることを意味し、新型コロナ敗北宣言を出したに等しい。このことは、保身のためにPCR検査を徹底的に抑制し、失敗を重ねてきた「感染症利権ムラ」を廃し、正しい感染症学、遺伝子工学(全ゲノム解析)や情報工学の専門家を糾合して、スーパーコンピューターと最新鋭のPCR検査検査システムを擁する「日本版疾病予防センター(CDC)」を設置し、政府に忖度しない抜本的なコロナ感染対策を早急に転換する以外に、救いの道はないことを意味する。

東京都のコロナ感染者数の推移
東京都のコロナ感染者数の推移

米国メディアで噴出する東京オリンピック/パラリンピック中止論

英国の医学誌BMJ(ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル)はさる4月14日、今夏に強行開催予定の東京オリンピック/パラリンピックについて、科学的(医学的)見地から「再考」、要するに「中止」を求める論文を掲載した(https://www.jiji.com/jc/article?k=2021041600207&g=int)。一部を引用させていただく。

東京五輪をめぐっては、開幕まで100日を切ったが、国内外から大会に対する懸念の声が次々と上がる事態に発展している。

論文は「他のアジア太平洋の国々と異なり、日本は新型コロナウイルスを封じ込めていない」と指摘。その上で「限定的な検査能力とワクチン展開の遅れは、政治的指導力の欠如に起因している」と批判した。加えて、「国内観客数の上限はまだ決まっていないが、逼迫(ひっぱく)する医療体制と非効率な検査・追跡・隔離の仕組みは、大会を安全に開催し、大量動員によって起きる感染拡大を封じ込める日本の能力を大きく損なうだろう」と懸念を示した。

論文の執筆者には国立病院機構三重病院の谷口清州氏、英キングス・カレッジ・ロンドンの渋谷健司氏、英エディンバラ大のデビ・スリダー氏らが名を連ねた。

論文の「限定的な検査能力とワクチン展開(接種)の遅れは、政治的指導力の欠如に起因している」という指摘は正鵠を得ている。日本の政府=安倍晋三、菅義偉政権が、厚生労働省の医系技官による「感染症利権ムラ(厚労省健康局結核感染症課とその傘下にある国立感染研究所・地方衛生研究所・保健所)」の操られるままに、そして相互に癒着して、パンデミックに対する最も重要な対策である検査と保護・隔離・治療を徹底的に抑制し、安全で有効なワクチンの開発・供給確保・供給体制の確立も怠ってきたからである。

このため、オリンピックの最有力国である米国のメディアからの批判が特に厳しい。日本では、朝日、読売、毎日、産経、日経という全国紙(海外には存在しない)が全てオリ/パラのスポンサーになっているため、社説で「オリンピック中止」を訴えない。地方ブロック紙の中日新聞の系列にある東京新聞だけが、オリンピック強行開催にいくらか批判的な記事を報道しているだけだ。例えば、東京新聞が昨日12日午後20時17分にサイトで公開した「東京五輪『中止する時がきた』米有力紙が相次ぎ掲載 かつての五輪選手も批判」と題する記事がそれだ。

東京五輪・パラリンピックに関し、米有力紙で中止を求める評論が相次いでいる。ニューヨーク・タイムズは11日、新型コロナウイルスの感染危機の中では大惨事となる恐れがあるとして「中止する時がきた」との寄稿を掲載した。寄稿したのは、五輪問題に詳しい米パシフィック大のジュールズ・ボイコフ教授(政治学)。米五輪代表にもなった元プロサッカー選手。東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長(当時)が女性蔑視発言をした際はNBCテレビへの寄稿で辞任を求め、大きな影響を与えた。(中略)

米有力紙の東京オリンピック/パラリンピック開催中止を求める論調
米有力紙の東京オリンピック/パラリンピック開催中止を求める論調

5日にはワシントン・ポスト紙がコラムで、国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長を、新型コロナ禍で開催国を食い物にする「ぼったくり男爵」と非難し日本に五輪中止を促した。サンフランシスコ・クロニクル紙も3日、日本を含め世界でワクチン接種が進んでいない中で「五輪は開催されるべきではない」とのコラムを掲載した。

 

ボイコフ教授は元プロサッカーの選手で、米国パシフィック大学政治学教授だが、東京オリ/パラ組織委員会の森喜朗会長(当時)が女性蔑視発言をした際に、米国NBCテレビへの寄稿で辞任を求め、世界的に大きな影響を与えた。同教授のオピニオンは、「A Sports Event Shouldn’t Be a Superspreader. Cancel the Olympics.(オリンピックという名のスポーツ・イベントを一大感染源にしてはならない。オリンピックは中止せよ)」と題するオピニオンだ(https://www.nytimes.com/2021/05/11/opinion/cancel-olympics.html)。重要な箇所を引用させていただきたい。

It’s time to listen to science and halt the dangerous charade: The Tokyo Olympics must be canceled.

And yet, the Olympic steamroller rumbles forward. There are three main reasons: money, money and money. And let’s be clear: Most of that money trickles up, not to athletes but to those who manage, broadcast and sponsor the Games.

(科学に耳を傾け、危険なジェスチャー=見え透いたまねごと=茶番劇)は中止されるべき時が来た。しかしながら、(国際オリンピック委員会=IOC=や日本政府=菅政権、自民党清和会系のオリ/パラ組織委の上層部からなる)オリンピック関係者は(オリ/パラ開催に向けて)突進している。その理由を明らかにしてみよう。カネ、カネ、カネ(を利権獲得すること)が目的だからだ。しかし、そのカネの大半はアスリート達ではなく、オリ/パラを管理し、宣伝し、(開催によって利益を得る)スポンサーたちにしたたり落ちる。

ここで、「科学に耳を傾ける時が来た」との指摘は重要である。米国のバイデン大統領も「オリンピックの開催に当たっては、科学的根拠に基づいて安全に開催できるということが証明できなければならない」と表明しているからだ。IOCはオリ/パラ強行開催のため「別枠」で米国のファイザー社からmRNA型のワクチンの提供を受けるとの覚書を交わしたと言うが、ワクチンは3週間おいて2回接種しなければならない。2回目の接種はかなりの確率で高熱、強い倦怠感に見舞われることが明らかになっている。遅くとも6月末までには接種しなければならない(最終予選の日程も考慮する必要がある)が、ワクチン供給開始から接種に至るまでのスケジュールは不明だし、アスリートの体調にも強い影響を与えるから、接種を拒否するアスリートも出てこよう。しかし、彼/彼女たちは、オリ/パラ参加を断念しなければならないことになる。「フェアプレイ」のオリンピック憲章とは完全に矛盾する。

また、日本の厚労省や地方自治体の無料接種説明書には、ワクチンを接種しても発症を抑える効果はあるが、感染そのものを抑える効果は不明という「但し書き」がついている。厚生労働省は、ワクチン接種を受けた者が、コロナウイルスを保有する可能性を否定していない。海外からの選手団は総勢で1万5千人程度と言われる。また、オリ/パラ組織委は外国人観戦客の入国は認めないとしているが、IOCのスポンサー企業の招待客(オリンピック貴族)や報道陣は入国を許可さざるを得ない。6万人から10万人と言われている。

オリンピック選手には毎日、PCR検査を行い、厳しい行動制限を課して日本の国民との接触は遮断するというバブル方式を採用すると言っているが、それ以外の外国人入国者とボランティアに対する行動規制とコロナ対策は全く不明だ。選手団と報道陣、オリンピック貴族、ボランティア相互の接触は避けられない。相互に感染しあう可能性は濃厚だ。感染者が拡大すれば、新たな変異株が発生する可能性も必然的に高くなる。「一大感染イベント」になると指摘されるゆえんだ。

こうした政府=菅政権の無為無策の無能さ、オリ/パラでの感染拡大の可能性から、競泳と並ぶオリンピックの最大の人気競技は陸上だが、その主役である米国陸上競技連盟(米陸連)が千葉県で行うことになっていた事前合宿(基礎自治体が選手団の「おもてなし」をするホストタウン事業)を取り止めることを正式に発表した(https://www.pref.chiba.lg.jp/oripara/press/2021/usaprecamp.html)。その理由は、「新型コロナウイルスの世界的流行が続き、今後も感染症収束の見通しが立たない中で、選手の安全面に関して懸念が生じているため」ということだ。もちろん、日本も入っている。ただし、明示的には記載されていない。

米国がオリ/パラに選手団を派遣するか、大きな疑問が出てきた。同時に全国の約500の基礎自治体でホストタウン事業が予定されていたが、必要経費は基礎自治体持ち。千葉県の場合は少なくとも、佐倉市、成田市、印西氏が財政面で大きなダメージを被ることになった。島根県奥出雲町などホストタウン事業を辞退する自治体も相次ぎ、朝日デジタルによると全国40の基礎自治体が断念(辞退)に追い込まれている(https://digital.asahi.com/articles/ASP573W0BP4MUTIL03Q.html)ようだ。奥出雲町は人口1万2700人の小さな町で、町としては破格の7千万円を投入しており、財政面での打撃は大きい。

 

千葉県のホストタウン事業
千葉県のホストタウン事業

 

また、バブル方式の採用により、開催費用はさらに膨らむ。立憲民主党の斉木武志衆院議員が昨日12日の文教委員会で、博報堂出身でオリンピック問題に詳しい本間龍氏が手に入れた延期費用の詳細な文書を委員会に出席した議員に配り、さらに、コロナ対策の費用について追及しようとしたところ、清和会系の丸川珠代五輪相はじめとする自民党議員は資料を受け取らず、文教委員会は紛糾したまま散会した(https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=52141&media_type=https://www.youtube.com/watch?v=ERjgwEtf3Ac)。

本間氏によると、これまでのオリンピックで最もカネがかかったのはリオ大会の1兆5000億円だが、東京オリ/パラの場合は当初は7000億円程度の大会にするとしていたものの、政府や組織委員会が直接にかかった費用として発表しているものだけでも1兆6400億円に上る。これにオリ/パラ競技場新設・整備費など間接的費用(この中には東京都がマラソンコース整備のために投下した費用8000円=マラソンコースがIOCによって札幌に変更されたため、大金をドブに捨てたようなもの=)と大会延期費用を加えると、既に少なくとも3兆6000億円はかかっている(https://maga9.jp/210310-6/)。これには、コロナ対策は含まれていない。医師や看護士2万名を人材派遣業者を通して確保するようだが、4兆円程度はかかるだろう。

緊急事態宣言と行政検査・行政治療の実態

本サイトでは風邪コロナと同様、新型コロナにも夏、冬に感染が拡大するという季節的要因と感染力と重症化力(毒性)の強い変異株要因があることをしばしば指摘させていただいた。GoogleのAI予測(2021年5月11日〜6月7日、毎日更新)(https://datastudio.google.com/u/0/reporting/8224d512-a76e-4d38-91c1-935ba119eb8f/page/ncZpB?s=nXbF2P6La2M)によると、全国での新規感染者数は7日移動平均で上昇傾向にある。東京都は5月下旬から7日移動平均は低下傾向に転じるとの予測だ。季節要因が利いてくることを反映しているのかも知れない。

Googleの東京都の新規感染者予測
Googleの東京都の新規感染者予測

 

しかし、6月7日の時点で7日移動平均での新規感染者数は604人と500人を上回る。厚労省の新型コロナ感染ステージでは「感染爆発段階」の「ステージⅣ(人口10万人当たり25人、東京都では人口10万人/1日当たりで、25×120(10万人)÷7=429人の計算=)」だ。季節要因が利いて減少に転じたとしても、新規感染者数の水準はかなり高い。また、全国では増加傾向が続くとの予測であるから、GoogleのAI予測を無視できないとすれば、季節要因が利いているとは判断しかねるところがある。仮に季節要因が通常の夏の7月から8月ということになると、新型コロナ感染拡大さなかでの東京オリンピック/パラリンピック強行ということになる。その場合は、オリ/パラ強行開催が、日本にとって重大な危機をもたらすことになる。

 

上昌広医師と郷原信郎弁護士との対談
上昌広医師と郷原信郎弁護士との対談

 

東京オリンピック/パラリンピック強行開催と政局

オリ/パラ強行開催は、カネがかかるとともに貴重な医療資源を奪い、国民の生命と健康、生業を危機に陥れる。菅首相は10日月曜日の衆院予算委員会で立憲民主党の山井和則の質問に対して、色をなして「五輪ファーストではない」と明確に語った。これは菅首相以外の誰にとっても、「オリ/パラ強行開催より、国民の生命と財産を守ることを優先することが政府の役目」ということを、首相が言明したと理解するはずだ。「オリ/パラ中止」の判断が遅れれば遅れるほど、国内外に重大な悪影響を与える。

政府=菅政権はIOCと同じ「ぼったくり男爵」。2つの道しかない。第一は米国が選手団を派遣しないと公式に発表すること。第二は、立憲の枝野幸男代表が腹をくくって「東京オリンピック/パラリンピック中止」をオリ/パラ開催前の都議会選挙の公約にすることを早期に打ち出し、開催か中止か迷っている小池百合子東京都知事に会い、説得することだ。

なお、国民に対して自粛を要請するだけでは「緊急事態宣言」をいくら繰り返しても、季節要因と変異株要因はコロナの波は繰り返して起きる。変異株要因によるコロナ感染の波は水際対策を徹底的に強化しなければならない。やはり、水際対策の徹底強化とともに「感染症利権ムラ」による検査(PCR検査など)の独占を容認し、医療崩壊の原因になっている感染症法を改め、検査と保護・隔離・治療を行うとともに、安全で有効なワクチンを接種することにより集団免疫を獲得することが収束への道だ。現状では、民間が安いコストでPCR検査を行っているが、陽性と判定されても感染症法の規定で保健所指定の医療機関で再検査を受けなければならない。

 

変異株の2つの起源
変異株の2つの起源

 

また、「マスク」をしている国民は、身近の方(例えば高齢者養護施設での要介護高齢者)が行政検査で陽性と判定されても「濃厚接触者」ではないとされ、検査を受けられないなど、常識はずれの行政検査・「医療措置(基本的には自宅療養で治療なしの状態で放置されるだけ)」が「施される」程度で、「捨て置かれる」と言ったほうがより適切な表現になる。なお、指定医療機関でも「治療法がない」と言われ、自宅待機ということになる場合が多いようだ(参考Youtube:デモクラシータイムスのhttps://www.youtube.com/watch?v=msxBT0KL3WM)。

「緊急事態宣言」を行っても、こうした状況では「一応の収束」には何の薬にもたたない。第3波で新規感染者数が一時的に減少したのは菅首相が自画自賛したように「緊急事態宣言」が功を奏したからではなく、冬が終わって季節要因からたまたま感染者数が世界的に減少する時期に入っただけのことだ。最新鋭のPCR検査装置と試薬を使って早期に感染者を発見すれば、重症化しないように治療を開始できる体制を構築する必要があるhttps://www.youtube.com/watch?v=B_L71K91ZTg&list=PLtvuS8Y1umY9sfiqMlek4Bg2D_e2naby3)。

 

新型コロナ感染症に罹患した患者の治療
新型コロナ感染症に罹患した患者の治療

 

政府=菅政権が東京オリンピック/パラリンピックを強行開催するなら、日本維新の会と自民党に入りたがっている国民民主党を除く真正野党は、早急に財源を明示したうえで、➀正しいコロナ禍対策②原発ゼロ社会に向けての明確なスケジュール③弱肉強食ではなく共生の経済政策➃日本国憲法に基づく平和主義外交の確立ーで政策協定を結び、野党連合政権構想を示すことだ。


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