第2四半期コロナ感染状況、季節要因と変異株要因のせめぎあいー五輪政局へ(「小池都知事の乱」重要追記)

昨日5月10日火曜日の東京都での新型コロナ感染者数は前週比153人減の573人、全国でも4940人とこのところの高水準からやや減った。現代の「緒方洪庵」と称されるNPO法人・医療カバナンス研究所の上昌広理事長兼臨床医師が感染者数の傾向を決める基本要因としての季節的要因(冬と夏に感染者が増加する)が利いてきた可能性を考えてみる必要がある。一方で、英国型の変異株(E401Y)や日本にも上陸し、市中感染が拡大しそうな兆候が出てきているインド型の二重変異株による新規感染の拡大と感染者の重症化、死亡もまた、懸念される。両者のせめぎあいで5月中旬から6月初めにかけての新規感染状況、そして医療体制の状況が決まる。仮に季節的要因が変異株要因を上回れば、政府=菅義偉政権は5月31日まで延長した「緊急事態宣言」が効を奏したとして東京オリンピック/パラリンピックの強行開催を行うだろう。そうでない場合は、自民党のオリ/パラ中止の「観測気球」をあげた二階俊博幹事長が窮地に陥っているため、立憲民主党の枝野幸男代表が腹をくくるしか「小池都知事の乱」は起きないが、その可能性はゼロに近い。しかし、ワクチンの変異株に対する有効性について懸念が出始めていることもあり、秋から冬にかけて第5波がやってくることは確実だ。コロナ禍対策の抜本的転換をしない限り、日本は再び巨大な「政府=菅政権の無為無策、ごまかしによる人災」に見舞われる可能性が極めて濃厚だ

本稿は次の投稿記事の続きです。

なお、本日5月11日午後15時前、衆議院本会議で憲法改正の手続きを定めた国民投票法の改正案が自民・公明両党や立憲民主党などの賛成多数で可決され、今国会で可決されることになった。憲法改正=壊憲への道が切り開かれることになった。

季節要因と変異株要因によるコロナ感染者数の波

新型コロナ(SARS-CoV-2)は広い意味での風邪コロナの一種だ。風邪は冬に流行し夏場にも小流行する。新型コロナも同様だ。このことは世界の新型コロナ感染症の研究者によって明らかにされている。世界の権威ある医学誌を読みこなしている上理事長兼医師はこのことを早くから指定していた(例えば、https://gentosha-go.com/articles/-/32427)。

【夏と冬…年2回に流行する「季節性コロナ」の性質】

コロナウイルスは風邪ウイルスだ。以前から4種類のコロナウイルスが世界で流行を繰り返していた。このようなウイルスを季節性コロナという。季節性コロナの特徴は、夏と冬、1年に2回流行を繰り返すことだ。流行の規模は冬の方が遙かに大きい。研究者の関心は、新型コロナも、このような性質を持っているかだった。昨年1年間の流行状況をみていると、どうやら答えは「イエス」のようだ。【図表】をご覧いただきたい。この図表は世界各国で感染者数がピークになった日と、その時の新規感染者数を示している。1月と8月に二峰性の分布をしていることがわかる。

感染者数、感染対策は各国で異なるのに、感染がピークになった日は驚くほど似ている。季節性の変動なしに、このような状態ができることはない。

ここで特記すべきは、ブラジル、南アフリカの存在だ。1月の感染者のピーク数は北半球のカナダやメキシコを上回る。真夏の南半球で、真冬の北半球並みの流行が起こっていることを意味する。その理由は変異株の存在だ。南アフリカ型、ブラジル型などの変異株は、従来型と比較して、感染力が強いことが知られている。これら2つの型以外にも英国型の変異株の存在が知られており、これも感染力が強い。【図表】を見れば、今年1月のイギリスでの感染者数はドイツやイタリアなどを遙かに上回っていることがわかる。変異株の中にはワクチンが効かないものもある。南アフリカ型の場合、アストラゼネカ製ワクチンの有効性はわずかに22%だったし、ノババックス製のワクチンの有効性も43%に過ぎなかった。南アフリカ政府は、100万回分のアストラゼネカ製ワクチンを購入し、接種を予定していたが、急遽取りやめ、2月17日から南アフリカ型変異株にも有効とされているジョンソン・エンド・ジョンソン製のワクチンの接種開始へと方針変更を余儀なくされている。

ただし、冬の時期については北半球、南半球での秋から冬ということで一致しているが、夏の時期については新型コロナの感染が世界的に始まったのは昨年2020年初頭からであり、事象の経験が浅いことから、年によってずれる可能性もある。日本で言えば第4波が本格化した5月上旬である可能性もあれば、通常の梅雨開けの7月から8月の可能性もある。朝日新聞の記者出身で、上理事長兼医師から取材したジャーナリストの佐藤章氏によると、今年は5月の可能性もあると言う(https://www.youtube.com/watch?v=m6NpKnlqbyQ)。参考までにロイター通信による世界各地域のうち、欧州と中東・アジアの最近の情勢を下図に示しておきたい。欧州は新規感染者が減少に転じており、アジア・中東でもピークを打ちそうな気配だ。

日本では英国型の変異株(N501Y)が関西圏で猛威をふるい、東京都を中心とした首都圏も感染源の中心が英国型の変異株に置き換わっている。第4波の新型コロナ感染状況が最悪になっているのは、変異株要因によるものと思われるが、ワクチン接種が米国や英国に比べて少ない欧州で新規感染者数が減少していることや中東・アジアでは新規感染者が頭打ちになりそうな気配を見せていることから、今年の「夏場」の時期が5月であり、日本ではこの季節性要因と変異株要因が重なったことから、関西圏、特に大阪府では100万人当たりの死亡者数がインドよりも多く、医療体制が崩壊している(https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/288909)という状況になっているとも考えれる。

衝撃のインド超えだ。世界保健機関(WHO)の調査を基に「札幌医大フロンティア研ゲノム医科学」が公開したデータによると、大阪府の直近7日間の新型コロナウイルスの死者数は人口100万人あたり22.6人。日本全体だと同4.1人だから、全国でもダントツで、インドの同16.5人を上回っている(8日時点)。

一方で、昨日10日の大阪府の新規感染者数は新規感染者数が668人で、死亡者数は15人。また、首都圏の要である東京都は新規感染者数が前週の708人より135人減少して573人になった。東京新聞5月11日1面によると、東京都の感染状況は次の通りだ。

【10日火曜日の東京都の感染者数573人】

(東京都発表速報) 3日月曜日 10日月曜日
感染者数 708人 573人
検査件数 5342件
(30〜2日平均)
7002件
(7〜9日平均)
入院・療養調整中 1348人 1359人
自宅療養 2062人 2253人
確保病床使用率
(入院者数)
37%
(2062人)
42%
(2346人)
重症者用
病床使用率
(重症者数)
17%
(65人)
21%
(78人)
陽性率
(7日移動平均)
7.9%
(2日)
7.9%
(2日)

宿泊施設療養者が1204人存在することも考慮すると大阪府や兵庫県の医療体制崩壊とまでは言えないが、医療体制が逼迫していることは確かだ。しかし、PCR検査件数は結果が10日に明らかにされる7-9日間平均で7002件と前週4日の5342件よりも多い。検査件数は減ったが、陽性判定者は少なくなった。日本でも季節要因が利いてきた可能性は一応、考慮しておく必要があるだろう。

【参考】GoogleのAI予測(https://datastudio.google.com/u/0/reporting/8224d512-a76e-4d38-91c1-935ba119eb8f/page/ncZpB?s=nXbF2P6La2M:2021年5月9日から6月5日まで)では全国、東京都ともに7日移動平均で新規感染者数は5月中旬以降、減少する見通しだ。

5月11日火曜日のコロナ感染状況

5月11日火曜日のコロナ感染状況
複数のメディアによると5月11日火曜日の東京都の新型コロナウイルスの感染者数は前週火曜日比316人増の925人、東京都基準の重症患者は81人になった。重症患者数が80人を超えるのは、今年2月21日以来のこと。7日移動平均では5月4日以来800人を超えて824.3人になり、前週比97.9%になった。
全国では午後23時59分の時点で、新規感染者は6242人、重症者は3日連続過去最多の1176人、死亡者は113人。大阪府で新規感染者数が974人になり、過去最多の55人の死亡が確認された。

少なくとも変異株要因は続いている。季節的要因での第4波の波はまだピークには達していないようだ。季節的要因での波が4月から6月か、あるいは通常の風邪コロナのように7月から9月7日は今月末までの新規感染状況を見極める必要がある。


変異株要因によるコロナ感染の波のきっかけとそのサイクルは、下図のようになる(遺伝子工学に詳しい東大先端研の児玉龍彦東大名誉教授による)。東京・埼玉型第一波、第二波(一般的には双方併せて第3波と呼ばれている)は季節要因にもよっている。東京・埼玉型第ニ波(一般的には第3波)は季節的要因によって波が一応収まりかけたころ、英国型の変異株要因により下げ止まり、第4波になった。季節的要因も第4波の形成に関与している可能性もある。

政府=菅政権による2回の緊急事態宣言の発出(2回目:2021年1月8日~3月21日、3回目:4月25日から5月31日)は、PCR検査を旧態依然のまま徹底的に抑制してきた「感染症利権ムラ(厚生労働省医系技官が主導する同省保健局結核感染症傘下の国立感染研究所、全国基礎自治体の地方衛生局、保健所、それらの出身者からなる政府コロナ感染症対策本部分科会)」が季節的要因と変異株要因について無知であったか、あるいは意図的に無視したため、後手後手に回り、延長を余儀なくされた。なお、地方自治体では「感染症利権ムラ」に属さない感染症対策専門家兼臨床医師の主導で、東京都世田谷区、広島県、山梨県などのように寄付金その他を財源に、最新鋭のPCR検査装置を導入、検査体制の拡充を行っているところもあり、成果を挙げている。

変異型の2つの起源
変異型の2つの起源

 

季節要因と変異株要因によるコロナ感染の波
季節要因と変異株要因によるコロナ感染の波

変異株問題と今後の政局

ただし、変異株要因による新規感染者の拡大はまだまだ続く。現在は英国型の変異株(N501Y)が主流だが、E484Q型とL452R型の二重変異株であるインド型のインド変異株の市中感染が懸念される。インド型の変異株のうちL452Rは、日本人を含むアジア人に多く、特に東アジア地域でのコロナ禍を軽微に食い止めてきたと見られる白血球抗原(白血球の型:HLA-A24)タイプの白血球の免疫作用を無効化するとの研究結果があるからだ。その場合に、日本でインド型の変異株の市中感染が広がれば、事態は深刻化する。

ところが、厚生労働省は変異株の調査を止めるという考えられない「決断」を下した。時事通信社が5月7日19時59分で「東京、変異株で大阪上回る 疑い例、計1万3000人超―厚労省」と題して報道した(https://www.jiji.com/jc/article?k=2021050701131&g=soc)。

厚生労働省は7日、変異した新型コロナウイルスの疑い例が4日までに累計で1万3836人となったと発表した。都道府県別では東京都が2789人で、前週まで最多だった大阪府(2472人)を上回った。(中略)

厚労省の専門家組織は6日、関西圏では従来株から「N501Y」変異株に置き換わったと推定され、東京都や愛知県でも置き換わりが進んでいると分析。厚労省は各自治体に変異株の抽出検査を患者の40%に行うよう求めていたが、置き換わった地域では続ける必要性は低いとして運用を改める方針だ。

厚労省では医系技官が中心になって、PCR検査を徹底的に抑制してきた。その結果、新型コロナウイルスを大量に保有し、市中感染を助長するスーパースプレッダーを含む無症状感染者を放置するという中国や台湾、ベトナム、オーストラリア、ニュージーランド、それに韓国などの東アジア諸国ないしオセアニア州とは真逆の「対応」なるものを行い、比較的被害が軽微だったこれらの諸国では最悪の「コロナ対策」なるもののパフォーマンスを演じた(結果をもたらした)。

厚労省はそのPCR検査の抑制だけでなく、100種程度あるとも言われる新型コロナウイルスの変異株の調査まで放棄したのである。上理事長兼医師らの政府=菅政権を忖度しない、医学的見地から国民の生命と健康を守るために正論を発信し続けると同時に、臨床医師として患者を治療している感染症対策専門家にとっては考えられない判断だと言わざるを得ない。PCR検査技術はコロナ禍の今日、飛躍的に進んでおり、優秀な検査装置・試薬のキットが開発されている。

政府による財政支援で、タカラバイオのリアルタイムPCR検査装置(https://catalog.takara-bio.co.jp/product/basic_info.php?unitid=U100006972)、サーモフィッシャーサイエンティフィックの変異株を特定できる検査試薬キット(https://www.atpress.ne.jp/news/251718)などを国公立私立大学附属病院、済生会系病院、日赤病院や民間の調査機関で導入すれば、相当の短時間でPCR検査とともに変異株を特定でき、感染患者に対する対策・治療にも役立てることができる。

ところが、厚労省の医系技官が健康局結核感染症課を通してコントロールし、彼らの天下り先になっている国立感染研や地方衛生研究所、保健所などの「感染症利権ムラ」では、こうした装置を導入せず、PCR検査も徹底的に抑制し、陽性検体の変異株分析もしないことを決めたのだ。信じられないことである。そして、彼らが政府のコロナ感染症対策の分科会のメンバーであり、厚労省のアドバイザリーボードの「専門家」にもなっている。安倍晋三首相(当時)が昨年、PCR検査を保険適用にして拡大すると公言したもののそれが実現せず、「PCR検査の拡大は目詰まりになっている」と言わざるを得なかったのは、政府=安倍、菅政権が「感染症利権ムラ」によってコントロールされているからであり、また、政府=安倍、菅政権が目論んでいる東京オリンピック/パラリンピック強行開催にとっても都合が良いからだ。

なお、ワクチンには接種によって発症化を防ぐ効果、重症化を防ぐ効果が期待されているが、ワクチン接種によって感染そのものを抑止する効果は定かでなく、ワクチンを接種したとしても大量の新型コロナウイルスを保有したままで、スプレッダーであり続ける可能性も否定できない(https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/000680224.pdfの2頁目に「ただし、ワクチンで感染が防げるかどうかは、この段階では分からない=ワクチンの効果により発症しないが、感染してウイルスを持っている、という可能性も=とある」)。そこで、以上を踏まえて次のシナリオを考慮しておく必要があるだろう(https://www.youtube.com/watch?v=B0D4EJrDfmI)。

  1. 季節性要因が変異株要因に勝り今後、新規感染者数が減少していくとともに、医療体制崩壊・ひっ迫状況が多少改善される。この場合は、東京オリンピック/パラリンピックは強行開催され、「つつがなく」終われば、各種の世論調査で支持率が過去最低に落ち込んだ菅内閣が息を吹き替えし、東京都議選と解散・総選挙で大勝する。ただし、秋にはコロナの第5波が襲来し、日本は大きく大混乱する。
  2. 季節性要因が変異株要因に勝り今後、新規感染者数が減少していくとともに、医療体制崩壊・ひっ迫状況が多少改善されるにしても、この場合は、東京オリンピック/パラリンピックは強行開催される可能性はあるが、➀医師や看護士の大幅な不足②数万人から10万人規模の国際オリンピック委員会の海外からの招待客やボランティアに対するコロナ対策の不備③選手団を含む来日外国団と日本国民バブル方式の破綻ーから、オリ/パラ開催中に大きなアクシデントが起こってしまう。小池百合子都知事は都知事としてオリ/パラ強行開催には迷いがあるが、本日11日夜の二階俊博幹事長が和歌山3区への総選挙出馬問題(総理・総裁の座を目指して世良弘成参院幹事長が同区からの出馬を狙っている)などから菅首相に追随せざるを得ないため、「小池の乱」を起こせず、オリ/パラ大失敗の汚名を着たまま政界引退する。自公連立政権も退陣を余儀なくされる。
  3. 季節性要因が変異株要因に勝り今後、新規感染者数が減少していくとともに、医療体制崩壊・ひっ迫状況が多少改善されるにしても、この場合は、東京オリンピック/パラリンピックが強行開催される可能性はあるが、➀医師や看護士の大幅な不足②数万人から10万人規模の国際オリンピック委員会の海外からの招待客やボランティアに対するコロナ対策の不備③選手団を含む来日外国団と日本国民バブル方式の破綻ーから、オリ/パラ開催中に大きなアクシデントが起こってしまう。小池百合子都知事は都知事としてオリ/パラ強行開催には迷っているが、自民党に期待はできない。そこで、立憲民主党の枝野幸男代表が「腹をくくって」小池都知事と「政策協定」を結び、同知事を支援する。ただし、この可能性は限りなくゼロに近い。
  4. 季節性要因が7月から8月にかけての時期であれば、東京オリンピック/パラリンピックの開催は「一大感染イベント」(米紙ニューヨーク・タイムズ)になる。この場合は、菅内閣の退陣は避けられない。菅政権は追い込まれ解散を余儀なくされ、総選挙で大敗する。
  5. 変異株要因が季節性要因に勝る場合は新規感染者数は一定程度発生し続け、医療体制崩壊・ひっ迫状況が続く。この場合、野党側が日本の政府=安倍政権、菅政権のコロナ対策の失敗と国民の生命・生業の犠牲が政権の無為無策にあり、それを主導してきた「感染症利権ムラ」にあることを国民に対して分かりやすく説明し、「感染症利権ムラ」の正体を知り、政府=菅政権への忖度よりは国民の生命を守ることを当然とする上理事長・医師らの感染症対策専門家・医師や遺伝子工学、情報工学の専門家を糾合し、コロナ対策の抜本転換を図ることを国民の前に打ち出す。

 

本サイトで紹介してきた「小池百合子都知事の乱」が起きるかどうかは、5月31日までの新規感染状況、医療体制状況によって左右されるだろう。いずれにしても、緊急事態宣言が終了する予定の今月5月31日までの感染状況が東京オリンピック/パラリンピックの開催とともに、日本の政局の焦点になる。東京都議会が開催される6月1日以降が日本の分水嶺になるだろう。


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