「緊急事態宣言」ドタバタ劇の原因は「感染症利権ムラ」の失敗ー野党は「コロナ禍抜本対策」打ち出せ

政府=菅義偉政権は5月14日夕刻、北海道、広島県、岡山県に発出する予定だった「まん延防止等重点措置」を政府新型コロナ感染症対策本部分科会(会長・尾身茂独立地方医療機能推進機構理事長)の要請を受け入れ急遽、「緊急事態宣言」に切り替えた。前代未聞のドタバタ劇だが、分科会の「強硬姿勢」を称賛するのは筋違いだ。ドタバタ劇の原因は、政府=菅政権のコロナ禍対策についての無関心さと「コロナ収束」に向けての分科会や厚生労働省の専門家チーム(アドバイザリーボード)の「コロナ対策」の失敗にある。

5月16日日曜日のコロナ感染状況(追記あり)

5月16日コロナ感染状況
複数のメディアによると5月16日日曜日の東京都の新型コロナウイルスの感染者数は前週日曜日比490人減の542人、東京都基準の重症患者は84人になった。7日移動平均では806.4人になり、前週比101.0%になった。年代別では20代が165人で他の年代よりも多かった。年代別では20人台が165人で最多。
全国では午後23時59分時点で、新規感染者は5261人、重症者は1223人、死亡者は47人。大阪府では新規感染者数が620人になり、45人の死亡が確認された。

東京都の新規感染者数はこのところ前週末比で減少しているが、日本全体の新規感染者数の動向と「季節要因」、「変異株要因」を考慮する必要がある。以下の本文を参照してください。

感染症利権ムラのコロナ対策大失敗とインド二重変異株、五輪株

政府=菅政権はもともと北海道、広島県、岡山県には「まん延防止等重点措置(まん防)」を発出するつもりで5月13日、分科会に「諮問」した。しかし、諮問を受けた分科会は13日の政府諮問後断続的に打ち合わせを行い、14日午前7時から会議を開いて、全国で新型コロナウイルスが感染力と症状悪化力の強い英国型のN501Y変異株に置き換わっていることから、北海道札幌市や広島県、岡山県がステージⅣ(新規感染者数が人口10万人当たり25人以上)にあるため、政府=菅政権には「まん防」ではなく「緊急事態宣言」の発出を求めた。

政府=菅政権のコロナ対策4閣僚(菅首相、加藤勝信内閣官房長官、田村憲久厚生労働相、西村康稔経済再生担当相)が官邸で午前8時37分から同48分まで会議(というよりも打ち合わせを行い)、加藤官房長官が反対したものの田村厚労相が受け入れで打ち合わせをまとめ、菅首相が受け入れを了承した(参考:https://www.tokyo-np.co.jp/article/104133)。

菅義偉首相は14日夕、新型コロナウイルス感染症対策本部を官邸で開き、北海道、岡山、広島の3道県をコロナ対応の改正特別措置法に基づく緊急事態宣言の対象に追加すると表明した。期間は16日から31日まで。

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政府は当初、まん延防止等重点措置の対象に群馬、石川、岡山、広島、熊本の5県を追加する方針だったが、午前の基本的対処方針分科会で専門家から強い対策を求められ、急きょ転換した。群馬、石川、熊本の3県は予定通りにまん延防止措置に加える。期間は16日から6月13日まで。

分科会など政府の諮問会議(相当)が政府の諮問を覆すのは異例中の異例だが、「ドタバタ劇」の真相は、厚労省の医系技官を中心とした「感染症利権ムラ」の構成員からなる分科会や厚労省専門家会議(アドバイザリーボード)のコロナ対策が完全に破綻したためだ。「感染症利権ムラ」のコロナ対策は、➀政府=安倍晋三内閣(当時)に対して、新型コロナ感染症を「感染症法」に定めるⅡ類相当の指定感染症法に政令指定させ、PCR検査を行政検査とし、地方衛生研究所や指定医療機関でしかPCR検査、感染症患者の受け入れをできないようにする(業務はキャパシティの小さい保健所が行う)②「積極的疫学調査」と称して、保健所が感染者の「濃厚接触者」の追跡調査をする③国立病院や国公立大学附属病院、地方医療機能推進機構傘下の病院など特定機能病院の資格を持つ大型病院での新型コロナ感染症患者の受け入れを極力拒否する➃「コロナ対策」と「経済」の二兎を追うーことが中心だ。

なお、「感染症利権ムラ」とは、主として厚労省保健局結核感染症課とその傘下にある国立感染研究所、地方衛生研究所、末端の保健所=所長職は医系技官の天下り先=)とそのOBからなる。「ムラ」の村長(ムラオサ)は国立感染研出身の岡部信彦川崎市健康安全研究所長(内閣官房参与)。詳細は毎日新聞出版が刊行した「日本のコロナ対策はなぜ迷走するのか」(医療ガバナンス研究所理事長兼医師・上昌広著)の第2章に詳しい。

余談だが、自民党には各種業界から利益を得る族議員からなる分科会からなる政策調査会があり、各種の「利権ムラ」があって、「政官業癒着体制」が敷かれている。「自民党金権政治」の温床だ。2009年に誕生した民主党政権(当時)は、政策調査会を置かず、この「利権ムラ」を解体することがひとつの重要な目的だった(佐藤章著「職業政治家・小沢一郎」)。

話を元に戻すと、その結果、最新鋭のPCR検査システムを導入・利用してPCR検査を行うなどのことができなくなり、PCR検査を徹底的に抑制することになった。また、パンデミック対策としては、基本中の基本である「徹底した検査と保護・隔離・治療」を行うための体制を作り上げることができなかった。そして、感染拡大を抑えるための十分な補償付きの「都市封鎖(ロックダウン)」に近い措置を取ることもできなくなった。さらには、列島国家として有利な地理的環境にありながら、台湾とは異なり「徹底的な水際対策」も打たなかったから、「変異株」も自由に「入国」できた。

このため、人種による遺伝子の相違(Factor X)から、比較的新型コロナの悪影響が軽微だった中国や韓国、オーストラリア、ニュージーランドなどが属するアジア太平洋地域でのコロナ対策の成果は極端に悪いものになった。「二兎」を追ったが、「二兎」とも失ってしまったと言える。立憲民主党の枝野幸男代表は5月10日の衆院予算委員会でこのことを明らかにし、政府=安倍晋三、菅政権の失敗を追及している。

 

 

ただし、枝野代表は「感染症利権ムラ」のコロナ対策失敗に対しては踏み込めていない。さて、➀「水際対策」が「ざる対策」であった②変異株問題を軽視し、変異株を特定するためのPCR検査や国立感染研のゲノム解析能力(佐藤氏の取材によると1日300検体しかできない)が低かったーため、感染力と症状悪化力の強い英国型のN501Y変異株の市中感染が全国に蔓延し、「積極的疫学調査」は物理的に不可能になった。このため、市中で抗原検査キットを配布(1日5千人)して、無症状感染者を発見するというモニタリング調査なども行ったが、もともと話にならない調査件数であり、その調査目標件数も達成にはほど遠いというのが現実だった。

変異株が全国に蔓延し、「積極的疫学調査」が事実上できなくなったため、「感染症利権ムラ」出身者からなる「分科会」や厚労省の「アドバイザリーボード」としては、政府=菅政権に対して、実質的に補償なき「緊急事態宣言」を発出する程度の「コロナ対策」しか打ち出せなくなった。「緊急事態宣言」にはどれほどの効果があるのか、分からない。そして、もうひとつの「対策」が、ワクチン接種への「期待」である。

ただし、ワクチンについては、➀接種後の死亡例が少なからず出ており、看過できない②2回目の接種後に高熱や強い倦怠感が相当数出ており、接種休暇が必要になっている③米国のファイザー社やモデルナ社の最高経営責任者(CEO)が接種開始後、保有自社株を売却しており、不審な点があるーなどから、接種後に死亡事故など重い副作用が出た場合は、特別な事情がない限り、速やかに補償金を支給するーなどの対策が必要だ。mRNAワクチンやウイルスベクター・ワクチンは従来にないタイプのワクチンなので、正当な評価には時間がかかる。

このため、政府=菅政権としても「緊急事態宣言」は延長に次ぐ延長を余儀なくされた。こうした失敗した「感染症利権ムラ」のコロナ対策を受け入れてきたため、政府=菅内閣に対する最近の支持率は、時事通信社の世論調査では32%にまで落ち込んでいる(https://www.jiji.com/jc/article?k=2021051400817&g=pol)。30%を割り込めば、内閣総辞職ということになる。

時事通信が7~10日に実施した5月の世論調査で、菅内閣の支持率は前月比4.4ポイント減の32.2%、不支持率は6.9ポイント増の44.6%となった。支持率は政権発足後最低で、不支持率は最も高かった。不支持率が支持率を上回るのは5カ月連続。(中略)

新型コロナウイルス感染拡大をめぐる政府対応について、「評価しない」は前月比11.6ポイント増の64.6%。「評価する」は同8.9ポイント減の17.6%で、「どちらとも言えない・分からない」は17.8%だった。

政府=菅政権の「コロナ対策」を対策として効果があったと実感できない国民を含めると、82.4%の国民が「コロナ対策」に不満を持っており、これが内閣支持率の一方的な低下傾向につながっている。

しかし、「感染症利権ムラ」に所属する「専門家」たちにとって、政府=菅政権にとって都合の良い事実があった。それは、NPO法人・医療ガバナンス研究所の上昌広理事長・医師が診療経験と欧米の権威ある医学論文雑誌の読破で明らかにしたように、コロナには夏と冬にかけて感染が小流行、大流行するという「季節要因」があることだ。「風邪コロナ」という言葉があるが、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)にも「季節要因」がある。逆に言えば、冬と夏を過ぎると、新規感染者が減少するということだ。

新たなウイルスであるため、感染が拡大する「冬」と「夏」の時期は、それぞれの年によって異なるようだ。上理事長・医師に取材した朝日新聞社出身の佐藤章氏によると(https://www.youtube.com/watch?v=nQLJPi1oOP4)、今年の「夏」は5月の上旬から中旬が山で、5月の中旬から6月上旬にかけて新規感染者数は次第に減少していくという。コロナの波には「変異株要因」もあるので、英国型変異株が猛威を振るっているため、必ず5月中旬から6月上旬にかけて新規感染者数が減少すると断定はできない。

ただし、参考情報だが、GoogleのAI予測(2021年5月14日〜6月10日版、https://datastudio.google.com/u/0/reporting/8224d512-a76e-4d38-91c1-935ba119eb8f/page/ncZpB?s=nXbF2P6La2M)のうち、東京の新規感染者の予測はこの見方を裏付けるものになっている。ただし、日本全国では新規感染者数は7日移動平均で増加傾向を続ける予測になっている。英国型のN501Y変異株が首都圏、関西圏から全国に拡大しているものと予想される。

Googleの新規感染者数のAT予測(東京版)
Googleの新規感染者数のAT予測(東京版)
Googleの新規感染者数のAT予測(全国版)
Googleの新規感染者数のAT予測(全国版)

 

「感染症利権ムラ」はこの「季節要因」について、認識していると思われる。仮に、東京都を始めとする東京オリンピック/パラリンピック競技開催都市で、「季節要因」から新規感染者数の減少傾向が鮮明になると、政府=菅政権と「感染症利権ムラ」はそのことを隠したまま、「緊急事態宣言」が成功したとして、オリ/パラの強行開催に打って出るだろう。その場合に、大きな波乱が起きない場合は、支持率が上昇し、解散・総選挙にも有利になる。

しかし、コロナの波には「季節要因」に加え、「変異株要因」もある。さすがの分科会の尾身会長も14日夜の記者会見で、インドで3月に発見された二重変異株について、危機感をあらわにせざるを得なかった(https://news.goo.ne.jp/article/sankei/politics/sankei-plt2105140052.html?from=amp_web-article-link)。

菅義偉(すが・よしひで)首相が14日夜に官邸で行った記者会見に同席した政府の基本的対処方針分科会の尾身茂会長は、日本でインド由来の変異株が英国株と置き換わることがあるか問われたのに対し「可能性としてあり得る」と述べ、モニタリングを強化する必要性を強調した。

インドの二重変異株の感染力は英国型(従来型の1.3倍)の1.6倍ということだから、従来型の2.08倍(参考:https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/289191/2)。加えて、E484Q型とL452R型の変異のうち、L452R型の変異は日本人を含むアジア人が保有しているHLA-A24と呼ばれる型(白血球抗原)の白血球の免疫力を無効化すると言われているからだ。インドの惨状からすれば、重症化力(毒性)も英国型より強いのではないか。第4波の波がある程度まで静まったとしても、そのままインド型二重変異株要因で第5波につながっていく可能性は濃厚だ。

実際、インドの二重変異株は既に市中感染が始まっている。東京医科歯科大学附属病院が5月14日、インド渡航歴がなく今月初旬に入院した新型コロナ感染者から発見されたことを発表した。英国型の変異株が国内で発見され、今日まで全国的に蔓延するまで140日間だったが、英国株より1.6倍感染力が強いとすれば、同じように全国に市中感染が蔓延するには140÷1.6=87.5日と約90日の期間で済むことになる。東大先端研の児玉龍彦東大名誉教授は、変異株は自壊しやすいという(https://www.youtube.com/watch?v=fRhdKsB2pkM&t=218s)。東京オリンピック/パラリンピック開催期に市中感染が本格化する可能性が濃厚だ。ワクチン耐性も強いらしく、ワクチン接種を受けても安心できないようだ。

NHKのWebサイトで5月15日に公開された「英 インドの変異ウイルス 一部地域で拡大 規制緩和に影響も」と題する記事によると、ワクチン接種が非常に進み、規制の段階的緩和を行っている英国のジョンソン首相でさえ、インド型の二重変異株の感染拡大を懸念しているhttps://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/newvariant/)。

イギリスのジョンソン首相は、インドで確認された変異ウイルスの感染が一部の地域で拡大しているとして段階的に進む規制の緩和にも今後、影響が出る可能性があるという見方を示しました。(中略)ジョンソン首相は5月14日、記者会見し、インドで最初に確認された変異ウイルスによる感染がイングランド北西部やロンドンの一部で拡大しているとしたうえで、イギリスの変異ウイルスよりも感染力が強いとみられると述べました。

そして規制の段階的な緩和について「感染力の強さがわずかであれば、予定どおり進められるが、強ければ難しい選択を迫られるだろう」と述べ、今後の状況次第では、影響が出るという見方を示しました。ジョンソン首相はイングランドで5月17日から予定されている飲食店の屋内での営業再開などはそのまま行う方針ですが、6月予定しているほとんどの規制の撤廃については遅れる可能性があるとしています。

最新のデータでは、インドの変異ウイルスによる感染者の数は、イギリス全土で今週は先週に比べ2.5倍増えています。

インド型二重変異株以外に、東京オリンピック/パラリンピックの強行開催で、「五輪型変異株」が出現する可能性もある。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は、RNA型の一重螺旋構造(4個の塩基の配列で合計約2万9千、ヒトは30億)をしているため、増殖する(自分自身の複製=コピー=を作る)際に、自己複製に失敗して変異が生じやすいと言われている。自己複製というのはウイルスが増殖するということだから、感染が拡大すればするほど、自己複製とその失敗が多くなる。

このため、新型コロナウイルスの変異株は100種程度あると言われている。東京オリンピック/パラリンピックを強行開催すれば、1万5千人の選手団だけではなく、国際オリンピック委員会(IOC)の招待客(オリンピック貴族)や報道陣が6万人以上訪日する。これらの人々にボランティアや医療ボランティアが関わる(接触する)。

東京五輪型変異株の懸念
東京五輪型変異株の懸念

 

その過程で、オリ/パラ関係者の人流・人交が発生し、新型コロナウイルスの感染拡大が懸念されている。ヤフー・ニュースが掲載した記事(https://www.youtube.com/watch?v=h9yHtMqLeeIhttps://news.yahoo.co.jp/articles/8860f8bdc337e80530c0c42564ecdbf0508d4103)は次のように指摘している。

無観客での開催であっても、選手や報道関係者らの往来により、変異株ウイルスを拡散し、新たな変異株を生み出す恐れがあるとして、勤務医らでつくる「全国医師ユニオン(組合員約130人)」が東京オリンピック・パラリンピックの開催中止を求めている。

同ユニオンは5月13日、内閣府や厚労省に要請書を送付。記者会見を開いた団体の代表で、医師の植山直人氏は、「世界から『東京五輪型(変異株)』と言われかねない」「ワクチンすら接種していないのに、『おもてなし』なんてできるはずがない」と訴えた。(以下略)

これまでは、オリ/パラの強行開催で医師や看護士、医療資源(30の病院、医療機器、薬剤など)が不足することが懸念されてきたが、「東京五輪型変異株」が生じる懸念を示したのは、「全国医師ユニオン(組合員約130人)」が初めてだろう。海外では、米国の有力紙「ニューヨーク・タイムズ」がコラムで、オリ/パラが「一大感染イベント」になることを懸念する論調を打ち出したが、「東京五輪型変異株」が出現する可能性も考慮しなければならない。

分科会の尾身会長や全国医師ユニオンの懸念を考慮すれば、日本の新型コロナウイルス感染者の陽性判定が確定した全検体のリアルタイムでのゲノム解析は必須だ。日本では、東大医科学研究所(https://www.ims.u-tokyo.ac.jp/imsut/jp/about/press/page_00075.html)や医療機器メーカの島津製作所(https://www.shimadzu.co.jp/news/press/i0zcquzlpoogh2bu.html)、伊藤忠商事の子会社iLAC(http://www.i-lac.co.jp/)など関連研究所、民間医療機器関連メーカーの 総力を結集すれば、陽性全検体の変異株用PCR検査(スクリーニング)や変異株確定のためのゲノム解析は可能だ(佐藤氏によると1日6千検体)。

本来ならば、財政資金を投じてコロナ変異株リアルタイム検出システムを大々的に構築する必要がある。ところが、政府=菅政権は、国民が切実に求めているコロナ禍対策は頭にはなく、国民投票法改正やデジタル庁設立関連法の成立、入国管理法改正案の成立などのいわば「火事場泥棒」を行うことに力を入れ、合わせて政権の維持にのみ意識が向いている。そして、「感染利権ムラ」の厚労省アドバイザリーボードは、新型コロナウイルスのスクリーニングやゲノム解析には極めて消極的だ(https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000776469.pdf)。

変異株の調査についてアドバイザリーボードは、「ただし、感染拡大地域(ステージ3相当、15人/10万人/週)であって、変異株の陽性割合が高い自治体(8割)については、抽出割合を自治体で判断する運用に改める(自治体の検査は40%程度を必須とはしない)」としている。現実は事実上、新型コロナウイルスは全国的に英国型のN501Y変異株に置き換わっているから、同株の検出は事実上しなくて良いとしている。

変異がさらに進んだ場合は、「国立感染症研究所の見解を踏まえ、全ゲノム解析を自治体及び民間検査機関の検体を合わせて地域に偏りがないよう全国的に5-10%程度(のスクリーニング検査を)実施、迅速かつ定期的に情報を公開」するとしている程度だから、どうにもならない。本来はリアルタイムでの変異株の検出システムを作る必要がある。これらは、「感染症ムラ」のゲノム解析の「主力」になっている国立感染研の能力が貧弱であることに由来するのだろう。PCR検査を徹底的に抑制してきたことや陽性全検体のゲノム解析の具体案がないこと、政府=菅政権に忖度してGo To トラベルで第3波が生じたことを隠蔽してきたことなど、「感染症利権ムラ」の罪は重い。

 

法政大学法学部の山口二郎教授は立民の枝野代表と会談した際、枝野代表が、「現時点では変異株感染蔓延で医療体制の崩壊ないしひっ迫が非常に厳しい事態にあるから『内閣不信任案』は出さないが、政府=菅政権が五輪強行開催を正式に決定するなら『内閣不信任案』を出す」旨、語ったという(https://www.youtube.com/watch?v=aSVUYWbu2Jo)。「コロナ禍対策」は解散・総選挙の焦点、目玉政策になる。日本のコロナ対策を根本から誤った「感染症利権ムラ」を解体し、心ある感染症、遺伝子工学、情報工学の専門家を糾合し、日本版疾病予防センターを組織化すべきだろう。


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