モンゴル、台湾でインド型2重変異株市中感染表面化かー日本も警戒必要

東京都では新規コロナ感染者数が前週に比べ減少傾向が続いているが、1日だけの実数、7日移動平均でみてまだステージⅣの段階だ。加えて、国内の感染状況はまだまだ厳しい状況にある。こうした中で、これまで感染者数が少なかったモンゴル、台湾で新規感染者が急増している。アジア人の白血球の免疫力無効化するインド型の二重変異株の市中感染が広まっている可能性がある。日本でもインド型の二重変異株の市中感染が確認されており、本来なら最新鋭のPCR検査システムを使って陽性検体のゲノム解析をしなければならないところだ。

最近の日本のコロナ感染状況

最近の東京都での新規感染者数は下図のように5月14日以降前週末比減少傾向が続いている(本日5月19日追記予定)。19日は7日移動平均でも2日連続して前週比減になった。しかし、緊急事態宣言が出された先月下旬並みの高い水準。7日移動平均でも727.9人で、これはステージⅣの段階(25人×140【140×10万人】÷7=500人)よりはかなり高い。こまこの数値は、東京都医師会の尾崎治夫会長が東京オリンピック/パラリンピック開催の条件とした(7日移動平均で)「100人以下」という状況には極めて遠い(https://news.yahoo.co.jp/articles/9ca1fd688581909c9f6767612f64ecb38a02d481)。

18日は東京都のモニタリング調査(https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/)で見ても、診察・治療が行き届かない宿泊療養1230人、自宅療養2025人、入院待ち感染者907人は合わせて4162人、19日は宿泊療養1176人、自宅療養1903人、入院待ち感染者913人は合わせて3992人であり、医療ひっ迫状況であることに変わりはない。

5月19日コロナ感染状況
複数のメディアによると5月19日水曜日の東京都の新型コロナウイルスの感染者数は前週水曜日比203人減の766人、15人が死亡、東京都基準の重症患者は73人になった。7日移動平均では727.9人になり、前週比83.3%になった。年代別では20代が210人で他の年代よりも多かった。
全国では午後23時59分時点で、新規感染者は5819人、重症者は1293人、死亡者は97人。大阪府では新規感染者数が477人になり、22人の死亡が確認された。
東京都のコロナ感染者数の推移
東京都のコロナ感染者数の推移

 

全国的には、18日の新規感染者は5230人、死亡者216人(兵庫県では神戸市で神戸市が今年3月から5月17日までの1か月半余りの期間に亡くなったが、これまで計上していなかった人を追加計上したことで129人になった)、重症者1235人だ。GoogleのAI予測(2021年5月15日から6月16日まで)(https://datastudio.google.com/u/0/reporting/8224d512-a76e-4d38-91c1-935ba119eb8f/page/ncZpB?s=nXbF2P6La2M)は新規感染者5184人(7日移動平均5968人)、死亡者92人だから実際よりも低めの予測となっていた。それでも下図のように、7日移動平均で新規感染者数は4000人から6000人の間を増加気味に推移する予測になっている。

【追記】複数のメディアによると沖縄県の玉城デニー知事は19日、県内で新型コロナウイルスの感染が拡大していることから、緊急事態宣言の対象地域に加えるよう政府に要請する考えを示した。県では18日、186人の新規感染者が確認されたが1920日は200人を超える見込み203人。

Googleの予測
Googleの予測

 

世界的には、新型コロナは風邪コロナの一種であり、夏に小流行、冬に大流行するという「季節的要因」があるため、新規感染患者は減少傾向に転じている。下図が、医療ガバナンス研究所の上昌広理事長・医師による新規感染者数のグラフだ。上理事長によると、日本の波のピークは何故か欧州に比べて後ずれする傾向があると言う。

ただ、上記に示したように7日移動平均では新規感染者数は下がりきっていない。これは、感染する新型コロナが感染力と重症化力の強い英国型のN501Y株に置き換わっているためだと思われる。「季節要因と変異株要因」がせめぎ合っていることに注意が必要だ。

児玉龍彦東大名誉教授のYoutube動画
児玉龍彦東大名誉教授のYoutube動画

なお、東大先端研究所に在籍、遺伝子工学に詳しい児玉龍彦東大名誉教授によると、変異株は自壊しやすいという特徴があるが、最後の段階で最も狂暴な変異株が出現するという(https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/world-data/)。

モンゴルと台湾での新規陽性者急増

こうした中で、モンゴルと台湾での新規陽性者急増している。その前に、インドの状況だ(https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/world-data/)。ピークは越したようだが、依然として高水準(https://www.nippon.com/ja/japan-data/h00673/)。ピークをつけている原因が、ワクチンの接種によるものか、あるいは、季節要因によるものなのかどうかなどは不明。

【追伸】インドの農村部でのコロナ感染者数は不明との情報もある。また、インド滞在の在留邦人約8000人の帰国が始まるが、「水際対策」に苦慮しているようで、はっきりしない(https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/289234)。

感染が広がるインドから日本人を脱出させるのは当然のことだ。しかし、8000人もの日本人を脱出させ、しかもインド変異株の蔓延を防ぐことが、菅政権にできるのかどうか。インド株は、感染力が従来株の1.3倍といわれる英国株よりさらに強く、重症化するリスクも高いとされる。

イングランド公衆衛生庁によると、いったん新規感染者を抑え込んだ英国も、インド株による感染者数が5日の520人から、13日には1313人に増加。今後、インド株が主流になるとみられている。インド株が日本で蔓延したら、現在の英国株の感染爆発どころの規模ではないだろう。

 

次にまず、モンゴル(面積は日本の4倍、人口は330万人)だが、モンゴルはこれまで新型コロナの新規感染者数は極めて少なかった。ところが、4月以降感染者が急増している。取り敢えずは、強力な人口移動規制を行っているため、5月に入ってから新規感染者数は減少に転じている(https://graphics.reuters.com/world-coronavirus-tracker-and-maps/ja/countries-and-territories/mongolia/)。

 

モンゴルのコロナ感染状況
モンゴルのコロナ感染状況

 

ただし、これまでは新規陽性者数は極めて少なかった。それが、4月下旬から急増し始め5月1日は1306人のピークをつけた(https://graphics.reuters.com/world-coronavirus-tracker-and-maps/ja/countries-and-territories/mongolia/)。専門家の間ではインドで3月発見された二重変異株の市中感染が拡大したことの結果と指摘されている。二重株は感染力が平国型の1.6倍、重症化力(毒性)も強いというのが一般的な見方だ。ワクチン耐性も考慮しなければならない。特に、E484Q型とL452R型の変異のうち、L452R型はアジア人が持っている白血球抗原(白血球の型)でHLA-A24タイプ型の白血球の免疫力を無効化すると言われている。日本の相撲界ではモンゴル出身の力士が大活躍しているが、人種的にモンゴル人と日本人は似ていると言われる。

さて、「市中感染」が、インド、パキスタン、アフガニスタン、モンゴルなどで広がっている懸念があるが、ここにきてアジア・太平洋地域で「最優等生」だった台湾でもこのところ、新規感染者が拡大している(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM187OC0Y1A510C2000000/)。

台湾当局は18日、新型コロナウイルスの感染者が新たに245人確認されたと発表した。14日に34人の感染者が確認されてから一気に増え、最近5日間だけで計1000人を突破した。事態を重く見た当局は、19日から28日まで全土で幼稚園から大学までの一斉休校を決めた。

原則、オンライン授業に切り替える。急増した台北市では、18日も市内中心部の人出は少なく、地下鉄の乗客やオフィスに出勤する人が大幅に減った(以下、略)。

日本でもなお、栃木県でネパールから帰国した3人の男女がインドで発見された二重変異株に感染していたことが分かった(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210517/k10013035681000.html?utm_int=nsearch_contents_search-items_013)。神奈川県でもインド帰国の30代の女性がインドの二重変異株に感染していることが分かった(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210518/k10013037831000.html?utm_int=nsearch_contents_search-items_004)。これらは5月の時点。

しかし、感染経路不明の「市中感染」も始まっているようだ。東京医科歯科大学からインドの二重株の市中感染が公表された。入院した感染症者の感染の経過をたどると、3月下旬にインドに渡航歴のない日本国民が市中感染したようだ。日刊ゲンダイによると、インドの二重変異株の市中感染は7月中旬頃からになるとの見通しだ(https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/289191/2)。

東京医科歯科大は14日、国内で市中感染が広がっている可能性があると発表。インド型に感染し、今月初旬に付属病院に入院した40代男性には海外渡航歴がなく、感染経路が不明なためだ。英国型によって感染爆発した大阪府でも、インド型感染が初めて確認された。(中略)

英国株が国内で初めて確認され、全国的な蔓延まで要した期間は約140日。インド株の初確認は先月26日ごろで、英国株の1.6倍速で感染を広げるとすれば90日足らずになる計算で7月中旬には国内で主流になる。東京五輪開催はどう考えても絶望的である。

医療ガバナンス研究所理事長の上昌広氏(理事長・医師)が言う。「英国株比1.6倍速という数字は累計感染者数から逆算したと考えられますが、問題はインドで発生した感染爆発がインド固有の条件によるものなのか、変異ウイルスの特性によるものなのか。アジアでは新型コロナ感染による死亡者は少なかったのに、インドで突如として爆発的に増加しました。インド株の性質に起因するのであれば非常に危うい。英国株の蔓延を許したように、日本の水際対策はスカスカで、モニタリング体制も緩い。新型コロナは夏と冬に大きな流行の波が来ますから、このまま冬につながっていき、破滅的なダメージを食らう可能性があります

政府は5月14日の段階でインドの二重株検査の体制(PCR検査、ゲノム解析体制)の強化を行うとしているが(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210514/k10013032001000.html?utm_int=nsearch_contents_search-items_018)、二重変異株が発見されたのは3月末のことで、遅すぎたことは否めない。上理事長・医師の指摘するように、日本の水際対策が「ザル対策」であることはよく知られている。また、本来なら全検体の検査が必要だが、厚労省の医系技官を中心とした「感染症利権ムラ」が「行政検査利権」を握っており、ゲノム解析の主力となる国立感染研のゲノム解析能力が低いため、十分な検査体制が確立できるか不明だ。

日本でインド型の二重変異株の市中感染が拡大するようになれば、極めて重大である。本来は、日本での新規陽性者の陽性検体はすべてゲノム解析を行わなければならない。島津製作所と伊藤忠商事の子会社iLACが開発した最新のPCR検査検査キットまた。iLACだけで1日に6000検体のゲノム解析が可能になるという。日立製のスーパーコンピューターを導入している東大医科学研究所とiLACが組むほか、財政措置を講じた上で他の大学研究機関と民間検査会社が提携すれば、全陽性検体のゲノム解析が可能になると言われている。保護と隔離・治療を強化するためだ。ワクチン耐性を持っているならが、対応ワクチンの開発・生産に寄与することになると思われる。

厚生労働省保健局結核感染症課傘下の国立感染研は旧式の検査システムを用いているため、全ゲノム解析は不可能だというが、「感染症法」を盾に取り、検査を独占したいようだ。これでは重大な問題が発生する可能性が濃厚だ。真正野党は、オリ/パラ組織委が東京オリンピック/パラリンピックの観客人数を公表し、強行開催に踏み切ることを決意した場合、オリ/パラ強行開催が「一大感染イベント」になる可能性は極めて濃厚だから、「内閣不信任案決議」を出すとともに、日本のコロナ感染状況についての分かりやすい説明と抜本的なコロナ禍対策を提示する必要がある。



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