G7の「条件付き」オリ/パラ開催支持、狙いは日本を対中包囲網の先鋒に(補強)

英国のコーンウォールで開かれたG7共同声明では、結語の最後に付け足しで「安全・安心な形」で東京オリンピック/パラリンピック開催支持が明記された。今回のG7(共同宣言)は、中国の世界の超大国としての台頭を恐れるディープステート傘下にあるバイデン大統領の軍事的・経済的対中包囲網で参加各国の合意を得ることが狙い。日本に対しては「敵基地攻撃能力」を含む対中軍事的・経済的包囲網の先鋒に立たせることを目的(「エサ」)にオリ/パラ開催支持を表明した。日本にとっても世界にとっても不幸なことだ。

2021年6月15日時点のコロナ感染状況(追記予定)

6月15日火曜日コロナ感染状況
複数のメディアによると6月15日火曜日の東京都の新型コロナウイルスの感染者数は前週火曜日比32人減の337人、死亡者数は12人、東京都基準の重症患者は45人になった。7日移動平均では375.9人になり、前週比92.1%になった。東京都が参考として発表した14日の検査件数は9487件で、14日までの3日間の平均は5356.3件。
全国では午後23時59分の段階で、新規感染者数1418人、死亡者数67人、重症者数827人が確認されている。北海道は新規感染者数が87人、死亡者数が18人になっている。

1日の新規感染者数は7日移動平均では前週比の値が70%台から90%前後に上昇してきている。言い換えれば、新規感染者数減少のペースが鈍化しているということだ。

東京都のコロナ感染者数の推移
東京都のコロナ感染者数の推移

G7共同宣言とオリ/パラ開催、コロナ禍第5波襲来

今回のコーンウォールサミットでは、ドイツやイタリアなど欧州諸国は中国との経済交流が深いため、必ずしもディープステート傘下のバイデン大統領の「開かれた自由なインド太平洋地帯」の形成という名の対中軍事・経済包囲網には賛成していない。東京新聞6月15日付は3面の「対中包囲網(欧米で)温度差ー迫る米 経済懸念し欧州慎重」と題する記事で次のように伝えている。

一昨年に「一帯一路」の覚書に署名したイタリアは、ドラギ首相が「受け入れられない点は中国に率直に伝える必要があるが、気候変動などで協力する必要がある」と強調。フランスのマクロン大統領も「G7は中国に敵対するクラブではない」と明言した。ドイツも主力の自動車産業にとって中国市場は「お得意様」。日本も台湾情勢など安全保障は米国と同調しつつ、経済は欧州と似たような事情をかかえる。英BBC放送(電子版)は論評で「七カ国は中国に対する強硬姿勢での一致は難しいと理解した」と指摘した。

早い話が、米国が中国との貿易を完全に停止すれば、米国は消費財を中国に全面的に頼っている(米国の子供のおもちゃは中国製品)などのことから、同国経済は猛烈な輸入インフレに陥り、立ち行かなくなる。中国は内需が巨大だから政策宜しきを得れば、米国経済なしでもやっていけるのである。ディープステートが世界を牛耳った時代はもはや過去のものになったのである。中国も「G7の対中統一戦線はもろい」と思っているに違いない。

戦後、米国から真の独立をしておらず、対米隷属外交を続けてきた日本を、4月16日の日米首脳会談の延長線上で対中軍事・経済包囲網の先鋒にするため、「安全・安心な形」との条件付きで東京オリンピック/パラリンピック開催支持を共同声明に盛り込んだものと見られる。オリ/パラ強行開催によるコロナ禍の世界的拡大の責任は日本に負わせる文言だ

しかし、中国が現在および将来にわたって、世界の超大国として台頭していくことが確実な情勢のもとで、中国を敵視した対中軍事・経済包囲網を形成するなどのことは不可能である。共同声明では「台湾海峡条項」が盛り込まれたが、これは日本と中国との交戦を招くことにつながる可能性が極めて高い。そのうえ、今や日本にとって貿易総額では世界第一位の国家になっている中国との経済関係を弱めるなどのことは不可能である。今回のG7共同宣言は、日本国及び日本国民にとって極めて不幸なことである。

また、営利目的の大スポーツ大会興行主と化した国際オリンピック委員会(IOC)と日本のオリンピック利権集団(政府=菅政権、東京都、日本オリンピック委員会、日本オリンピック委員会=JOC=)は、東京オリンピック/パラリンピック強行開催が「世界規模のGo To トラベル」と化すこと、ならびに「安全・安心な形」での開催など今となってはもはや不可能であることを認識しているのに、大手マスコミをスポンサーに引き込んでいるため、そのことには触れさせないようにしている。これもまた、コロナ禍を拡大し、日本国及び日本国民にとって極めて不幸なことである。

コーンウォール・サミット
コーンウォール・サミット

 

まず、G7共同声明に盛り込まれた台湾条項とオリンピック条項を引用しておきたい(https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100200083.pdfhttps://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA143KS0U1A610C2000000/)。

我々は、包摂的で法の支配に基づく自由で開かれたインド太平洋を維持することの重要性を改めて表明する。我々は、台湾海峡の平和及び安定の重要性を強調し、両岸問題の平和的な解決を促す。我々は、東シナ海及び南シナ海の状況を引き続き深刻に懸念しており、現状を変更し、緊張を高めるいかなる一方的な試みにも強く反対する。(中略)

(最後の付け足しとして)新型コロナウイルスに打ち勝つ世界の団結の象徴として、安全・安心な形で2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会を開催することに対する我々の支持を改めて表明する。

「穏健な表現」を使ってはいるが、明らかに中国を敵視した条項である。米国の対中、台湾政策には大きな矛盾がある。1970年代初頭のニクソン・キッシンジャー外交の成果として1972年2月、パキスタンやルーマニアの仲介でニクソン大統領の訪中が実現し、周恩来首相との間で米中国交正常化を前進させた。その際の条件として、中国が米国に求めたのは「ひとつの中国論=中華人民共和国を中国の唯一の正統な国家と認め、台湾は中国の領土として認めること=」である。米国は最終的にこの条件を受け入れ、1979年1月1日に民主党のカーター大統領が中華人民共和国との国交を樹立し、中華民国(台湾)との国交は断絶された。

ただし、中国による台湾への武力侵攻を阻止する狙いがあったものと推察されるが、Wikipediaなどによると、同時に米華相互防衛条約の無効化に伴う米軍台湾司令部の廃止と在台米軍の撤退によって東アジアで急激な軍事バランスの変化が起きることが懸念され、「自由主義陣営」の一員である台湾が中国に占領される事態は避けるため、また民主党とほぼ唯一のパイプであった台湾保守派からの活発な働きかけもあって、台湾関係法が1979年4月に制定され、1月1日にさかのぼって施行された。事実上の米台集団安全保障条約である。

この台湾関係法(事実上の米台集団安全保障条約として機能する)は、米国が受け入れた「ひとつの中国論」と矛盾する。本来は、米中国交正常化の際、中国に対して武力侵攻を行わないことを求め、そのための軍事・外交的措置を講じることで中国政府と合意しておくべきだった。その後、中国と台湾との経済的関係は深まり、台湾も中国なしには経済的に存立できないようになった。

今後は、国連が1948年に定めた世界人権宣言に基づいて起草された国際人権規約(人権に関する多国間条約である経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(社会権規約、A規約)、市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約、B規約)及びその選択議定書の総称)を中国が条約として批准・尊守し、台湾との平和的統一を果たすことが世界平和にとって最も重要な課題になる。その場合は中国も当然、台湾だけでなく中国の他の地域でも住民の地方自治と人権を尊重しなければならないし、そうしてこそ、中国も世界の超大国として世界の平和と繁栄に責任をもって貢献することができるし、そうでなければ米国と同じような単なる覇権超大国になってしまう。日本は中国が覇権超大国にならないように、中国のそうした本来あるべき努力を惹起するように、日本国憲法が定める平和主義に基づいた言葉の真の意味での「積極的平和主義外交」を展開すべきところだ。

ところが、ディープステート傘下の米国は中国が超大国になることが確実な情勢になった現在、従来の「関与政策」を全面的に否定し、台湾関係法を盾に中国の正しい意味での超大国化を阻止しようとしている。対米隷属下の日本も「積極的平和主義外交」の真の意味をねじ曲げ、「敵基地攻撃論」を中心とした対中軍拡路線を推進している。在日米軍と自衛隊は連携を深め、米軍の指揮命令系統下に置かれつつある。憲法違反の安保法制を成立させたから、いつでも米国との「集団的自衛権」を行使できる。これは要するに、日本が対中軍事包囲網の先鋒に立たされることにほかならず、極めて危険な状況を引き起こすことにつながる。

サイト管理者(筆者)の思いではあるが、日本は本来、QUADに参加していない韓国や東南アジア諸国連合と組んで、中国に国際人権規約の意義を粘り強く訴え、「東アジア共同体」を構築する方向に進んでいくことが、日本の平和と繁栄を実現するための最良の方策であると信じる。軍事力に頼るのではなく外交・経済安保政策の積極的推進である。しかしながら、現実は真逆の方向に進んでいる。二階俊博幹事長は「親中派」として知られるが、「利権親中派」がその本質であったため、ディープステートから「媚中派」と非難されると、今度は自民党に設けられる「インド太平洋議員連盟」の会長になろうとしている。しかし、甘利明自民党税制会長が嫌味を言ったように、これは明らかな矛盾であり、二階幹事長の敗北・失脚を意味する。

二階幹事長は、まだらぼけのせいなのか真相は不明だが、コロナ禍のため東京オリンピック/パラリンピック中止を二度、唱えたことがある。しかし、二階幹事長の失脚は実質的に小池百合子東京都知事の失脚をも招き、東京オリンピック/パラリンピックの開催中止はほぼ不可能になった。オリ/パラの強行開催は、「世界的なGo To トラベル政策」になる。オリ/パラの舞台になる東京都の新型コロナウイルス新規感染者数は7日移動平均で前週比は70%台から90%台に上昇している。日本人を含むアジア人の新型コロナに対する免疫力をすり抜け、ワクチン耐性があるとされるインドで発見された二重変異株(デルタ株)の市中感染も徐々に増えてきているから、今後は新規感染者数がリバウンドする可能性が濃厚だ。

英国ではデルタ株の市中感染でコロナ対策の規制撤廃を1カ月延期した(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210615/k10013085061000.html)。

イギリス政府はインドで確認された変異ウイルスによる感染が国内で急速に拡大しているとして、新型コロナウイルス対策の規制をほぼ撤廃する計画をおよそ1か月延期すると発表しました。

英国で市中感染が拡大するインド発のデルタ株
英国で市中感染が拡大するインド発のデルタ株

 

イギリスでは首都ロンドンのあるイングランドで新型コロナウイルス対策として続けてきた規制をことし3月から段階的に緩和していて、6月21日にはナイトクラブの営業などほぼすべての規制が撤廃される見通しでした。しかし5月以降、インドで確認された変異ウイルスのデルタ株が急速に拡大し、ここ1週間ほどは1日の感染者が7000人を超える日が続いています。(以下略)

オリ/パラ強行開催前からデルタ株感染を中心に新型コロナ感染者再拡大の傾向が鮮明になってくるだろう。オリ/パラ組織委もそのことを隠していない。東京新聞は今月6月12日付で次のように報道している(https://www.tokyo-np.co.jp/article/110157)。ただし、これは京大・西浦博教授(理論疫学)ら京大チームの試算に比べて大甘だ。

東京五輪・パラリンピックを今夏に予定どおり開催した場合、都内の新型コロナウイルス新規感染者が8月下旬に1日当たり約1000人となり、中止や延期など開催しなかった場合よりも約200人増えることが、政府の試算で分かった。8月24日開幕のパラリンピックを感染拡大が直撃することになる(中略)。

三菱総研によるコロナ新規感染者の見通し
三菱総研によるコロナ新規感染者の見通し

試算によると、開催した場合、都内の新規感染者は7月中旬の約300人を底に増加に転じ、五輪開幕後の8月以降に急増して同月下旬に約1000人となる。開催しない場合は、8月下旬は約800人にとどまる。9月以降の予測はないという。

東京オリンピック開催には影響が出ないという試算で、恐らくそういう結果を導くためのやらせの「試算」を示したものだと推察される。東京新聞は今月6月10日付の3面の記事で、20日に緊急事態宣言解除なら、高齢者のワクチン接種率の如何にかかわりなく、7月下旬から重症者が急増、8月前半までに東京都では再宣言が必要になる(オリンピック開催中に感染爆発の段階になる)という西浦博教授ら京大研究チームの試算を報道している。インドで発見され、世界中に市中感染が広がっているデルタ株の影響は考慮していないについても述べている。次のサイトの記事(https://www.tokyo-np.co.jp/article/109688)は本紙掲載の記事とやや異なるの要約版。

新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言を今月20日で解除した場合、ワクチン接種が進んでいても東京では流行が再拡大し、8月に再び緊急事態宣言が避けられない恐れがあるとの試算を、京都大の(注:8割おじさんで知られる)西浦博教授(感染症疫学=注:理論疫学=)らのチームがまとめた。9日、開かれた厚生労働省に新型コロナ対策を助言する専門家組織の会合で報告した。
東京五輪・パラリンピック開催による影響は考慮していないが、専門家組織の脇田隆字座長は記者会見で「五輪やパラリンピックがあればさらに増加に向ける要素になっていくと思う」と述べた。またインド株が7月中旬には英国株から置き換わり、主流化するとの試算を示した。

組織委は新型ワクチンの接種に期待しているが、接種のスピードが大きく加速するのは難しいだろう。加えて、6月4日までの新型ワクチン接種後の死亡者数は196人に達した。ワクチン接種後の死亡率とコロナ感染による死亡率(特に、働き盛りの年齢層に占める死亡率)に大きな差がなくなることも予想されている。また、中長期的な副作用(専門家の間では抗体を産生し続け、ヒトの持つ自然の免疫力に悪影響を与えることなどが指摘されている)が発生してくる可能性も指摘されており、新型ワクチンの安全性、有効性については本格的な検証がなされる必要がある(https://okada-masahiko.sakura.ne.jp/)。

基礎疾患のある高齢者は新型ワクチン接種の意義はあると考えられるが、働き盛りの国民に対する接種については慎重な対応が必要になることも有り得る。それに、オリ/パラ開催までに新型ワクチンの接種は到底間に合わない。こうした中で、オリ/パラ組織委がかかげている「バブル方式」(オリ/パラ関係者=10万人規模=と日本国民を遮断する)も、破綻が確実視されている。オリ/パラ関係者(オリンピック貴族と報道陣を含む)の行動の監視策が杜撰だからだ。また、オリ/パラも有観客実施が明らかになってきており、東京新聞などでは300万人規模の国内での人の移動が発生すると試算している。加えて、明らかな国民からの医療体制の奪取、辞退によるボランティア不足、強行開催による大会開催費用の追加のため国民・都民の血税負担の増加など、オリ/パラ強行開催の問題は枚挙にいとまがない。

デルタ株の市中感染の広がりと「世界的なGo To トラベル政策」と言われるオリ/パラ強行開催でオリ/パラ大会以降、冬にかけてコロナの第5波が襲来するだろう。その時は、新規感染者の急増に加えて、医療ひっ迫・崩壊が起きることは確実であり、連れて重症者、死亡者が増加し、国民生活の窮状がさらに深刻化する。その責任は誰が取るのか。G7は抜け道を作っている。本来は政府=菅政権と小池都知事率いる東京都だが、「逃げの一手」を使うことが予想される。もはや、東京都議会選挙、総選挙で真正野党側が強力な共闘体制を築き、有効で分かりやすい政策体系、連合政権構想を示して、自公与党+維新の会+国民民主党に打ち勝ち、政権交代する以外に道はない。

【追記】立憲民主、共産、国民民主、社民の野党4党は15日午前、新型コロナウイルス対応で失策を重ね、さらに「現下の感染状況では、国民の命と健康を守りながら東京五輪・パラリンピックを開催することは極めて困難だ」として、菅内閣に対する不信任決議案を衆院に共同提出した。午後に衆院本会議で採決され否決された。「不信任案提出なら解散・総選挙」と脅しをかけていた二階幹事長は大失言をしたことになり、失脚がほぼ確定した。今後の政局を展望するうえで、東京オリンピック/パラリンピック強行開催前に行われる国政選挙並みの東京都議会選挙(7月4日投開票)が極めて重要な選挙になる。なお、立憲民主党の枝野幸男代表は衆院に提出した内閣不信任決議案の趣旨説明の中で「消費税率の5%への時限的な引き下げを目指す」ことを表明した(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210615/k10013085981000.html)。山本太郎代表率いるれいわ新選組も含めた野党共闘の可能性が強まった。


この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

Twitterでフォローしよう