東京都の新規感染者数減少幅下げ止まり傾向、緊急事態宣言解除は困難な情勢にも

緊急事態宣言が延長された10都府県の中でも最大の感染震源地である東京都で新規感染者数が下げ止まりの兆しを見せてきた。病床逼迫も続いており、3月7日の解除はかなり厳しい情勢だ。加えて、PCR検査対象者を基礎疾患や高齢の都民に絞っていることもあり、最大の感染源になっている無症状感染者(ステル・ススプレッダー)は発見・保護・隔離・治療ができない状況だ。感染経路不明率が50%前後であることも考慮すれば、政府=菅義偉政権、東京都が採用してきた「積極的疫学調査」(濃厚接触者の追跡調査)は破綻している。本サイトでも繰り返し指摘してきたように、コロナ禍対策の抜本転換が必要だ。

2月22日コロナ感染状況

複数のメディアによると本日2月22日火曜日の新型コロナ感染状況は、東京都では新規感染確認者は1週間前の2月15日火曜日の266人から88人減少して178人。100人台は2020年11月24日以来。東京都基準の重症者は6人減って76人になった。ただし、死亡者数は9人。

東京都のモニタリング(https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/)では、7日移動平均での感染者数は329.0人、PCR検査人数は6846.0人だから、瞬間陽性率は4.81%。東京都独自の計算方式では3.8%。感染経路不明率は51.67%。7日移動平均での感染者数の対前週月曜日費は86.9%。

全国では午後23
時59分の時点で、新規感染者数は740人、死亡者数は56人が確認されている。重症者数は前日比1人減少の510人。
【参考】東洋経済ONLINE(https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/)では、2月21日時点の実効再生産数は全国が前日比0.01人減少の0.89人、東京都でも同0.05人減の0.93人。

政府=菅政権が新型コロナ感染症対策本部(本部長・菅義偉首相)で分科会とともに緊急事態宣言の解除の目安は、コロナ感染状況をステージ3以下に下げることだ。ステージ3とステージ4の状態は数値で言えば、下図の通りだ(https://corona.go.jp/news/pdf/jimurenraku_0811.pdf)。

コロナのステージ3とステージ4
コロナのステージ3とステージ4

これで見ると、感染の状況はステージ3が人口10万人当たりの週平均の感染者数が15人以下になること。これを東京都全体に直すと、15人×140(×10万人=1億4千万人)=2100人。1日当たりで300人以下になるが、より正確には7日移動平均で300人以下になることだ。この300人以下の状態が恒常的に続く必要があるだろう。ところが、一昨日2月21日の日曜日時点では、341.6人。前週の日曜日と比較すれば、89.9%。本日22日ではそれぞれ329.0人、86.9%。ただし、この比率は以前に比べてこのところ傾向的に上昇してきている。

朝日デジタルが2月22日月曜日の午前5時に公開した投稿記事には次のように記されている(https://digital.asahi.com/articles/ASP2P6CVWP2PUTIL012.html?iref=comtop_7_01)。

19日の定例会見で、小池百合子知事は危機感を示した。都内では前日の18日、445人の感染が確認され、前週の同じ曜日(11日、434人)を約1カ月ぶりに上回った。小池知事は緊急事態宣言を3月7日まで延長した際、前週比が7割以下になれば3月初旬には1日あたりの新規感染者が140人以下まで減らせるとの見通しを示していた。

緊急事態宣言が出た1月7日、東京の感染者は2520人(修正値)と過去最多を記録。その後、不要不急の外出自粛や飲食店の営業時間短縮などの呼びかけで、実際に週平均の感染者数は、前週比7割前後で推移し減少していた(注:ただし、季節要因、人の移動指数要因によるところがはるかに大きい)。1月29日には1千人を下回り、今月7日以降は500人以下の日が15日連続で続いている。

ところが、先週からその減少幅が鈍化し始めた。週平均(注:7日移動平均)の感染者数が355・1人だった18日時点の前週比は76・3%、翌19日が84・7%、20日は91・6%と9割超に。21日は89・9%に下がった(参考:https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/の「最新のお知らせ」で公開されている)。22日は東京都の公式発表でサイト管理者(筆者)推計で86.9%のようだが、それでも都が目標とする7割を大きく超える。

※本日22日の公式発表を踏まえた試算は、本欄の直後に記しています。
仮に、前週比で89.9%の状態が続くとすれば、341.6×0.899^x=140でxを求めれば、どの程度の期間で140人以下に減らせるかが分かる。これは、スマートフォンの関数電卓で対数計算を行えば分かる。サイト管理者(筆者)は次のように計算した。
x×log(0.898)=log(140÷341.6)
140÷341.6=0.410
x=log(0.410)÷log(0.899)=(-0.3872)÷(-0.0462)=8.38
検算してみると
341.6×0.899^8.38=139.9664
記号「^」はべき乗を表します。

ということで8.38週間、つまり、2カ月半近くかかることになる。なお、東京都の公式発表でサイト管理者(筆者)の推計によると、本日22日の7日移動平均での新規感染者数は329.0人、前週比は86.9%なので同じように計算すると、7日移動平均で新規感染者が140人まで減少するのは6.08週間後、つまり、3月末近くになる勘定だ。やはり、予定の3月7日に緊急事態宣言を解除するのはかなり難しい状況である。

PCR検査人数は週の曜日によってまちまちなので、1月下旬から2月22日までの最近の新規感染者数の前週の同じ曜日との差をまとめた表は次のようになる(東京都が新規感染者の微調整を行いましたが、それは明確でないので微調整前の新規感染者を使用しております。ただし、2月分については上記朝日デジタルの数値を記載しており、正確と思われます)。1月末から2月下旬までの新規架線者数。

東京都新規感染者の前週との差
東京都新規感染者の前週との差

これを見ると、2月14日日曜日の週から、前週と同じ曜日の新規感染者数の差(減り方)が傾向的に縮小していることが分かる。2月の18日と19日は逆に新規感染者数が増加した。22日火曜日は昨年2020年11月24日以来の100人台になったが、減少幅は21日曜日よりも縮小している。これは、政治経済評論家として知られる植草一秀氏がまとめた、米国アップル社が公開している人の移動指数が上昇していることと関係があるようだ。なお、下図の下にサイト管理者(筆者)がまとめたアップル社の人の移動指(交通機関を使った移動指数)を追加しておいた。サイト管理者(筆者)作製の表によると、1月末から人の移動指数は傾向的に上昇している。特に、2月19日は、基準にしている昨年2020年の1月13日を上回った。

アップル社が公開している人の移動指数
アップル社が公開している人の移動指数
アップル社が公開している人の移動指数(交通機関)
アップル社が公開している人の移動指数(交通機関)

前週に比べた減り方が少なくなると、政府=菅政権が緊急事態宣言を再延長した3月7日までだと、東京都では7日移動平均の新規感染者数の、前週の同じ曜日との比率は、小池百合子都知事の期待しているような70%に到達するのが遅れ、7日移動平均での1日の新規感染者が140人に届かないことも有り得る。その可能性は濃厚だろう。しかも、感染経路不明率はステージ3/4の段階の50%程度の水準が続いており、「積極的疫学調査」と称する濃厚接触者の追跡調査が極めて困難になっている。

なお、「8割おじさん」で知られる京都大学の西浦博教授(理論疫学専門)が新規感染者が100人程度以下でないと、再拡大が起きるとの試算を発表している。

西浦博大阪大学教授のシミュレーション
西浦博大阪大学教授のシミュレーション

西浦教授のシミュレーションはさまざまな仮定があり、また、信頼性に疑問があるとの他の専門家の指摘もあるが、実効再生産を精密に推定してシミュレーションを行うことができる専門家は西浦教授など日本では限られている。無視することはできないし、逆に参考にすることはできるだろう。7日移動平均での新規感染者数が1日100人になったところで、東京都に発出された「緊急事態宣言」を解除すれば、暫くは新規感染者数が横ばいになる。ただし、それでも少しずつ上昇していくとの見方だ。

政府=菅政権はステージ3を少し下回る程度で緊急事態宣言を解除しようとしているが、それでは新規感染者数が再拡大(リバウンド)してしまう。小池都知事の目標の140人に達したとしても、西浦教授の求めている100人よりは多いから、やはり再拡大(リバウンド)してしまうだろう。東京オリンピック/パラリンピックが強行開催されるとすれば、夏場にかけて新規感染者数が増加し、第3波が終わり切らないうちに、第4波が起きる可能性が濃厚になるため、新規感染者がリバウンドする中での強行開催になる。なお、新学期や新入社員を迎える4月前後には人の移動が活発化するから、これが第4波襲来を助長することになる。無観客競技の場合でもそうなるし、外国からオリ/パラ選手団とコーチなど大会関係者がそれなりに来日することになるから、入国検疫をはじめ、コロナ対策が極めて厳しくなるはずだ。

なお、医療体制のひっ迫状態も問題だ。上記の朝日デジタルは次のように報道している。

緊急事態宣言の解除へ向け、重要な判断要素になる医療提供体制はどうか。1月に3千人を超えていた都内の入院患者は21日時点で2035人で、病床使用率は4割台まで下がった。政府分科会のステージ4(感染爆発段階)の目安の50%は下回ったものの、依然として入院患者数は高い水準で推移している。

さらに、昨年2020年12月末から今年2021年の1月上旬にかけて東京都、神奈川県では感染者が急増したために、保健所の資源が枯渇し(パンク状態に陥り)、東京都と神奈川県ではPCR検査の対象者を基礎疾患や高齢者の住民に限定するようになった。このため、新型コロナの最大の特徴である無症状感染者(スプレッダー)を補足しきれていない。このため、東京都や神奈川県のコロナ感染状況は実態が掴めていない。

東京都の積極的疫学調査の限定
東京都の積極的疫学調査の限定

東京オリンピック/パラリンピックを強行開催しようとしている政府=菅政権や小池百合子率いる東京都知事に対して、東京都・世田谷区、広島県に続いて島根県の丸山達也知事(50)も地方から正当な反乱ののろしをあげた。「聖火リレー」と「東京オリンピック/パラリンピック」の中止も求めているhttps://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/285449)。

「東京都でオリンピックを開いてもらっては困る。資格がない」――。(2月)17日、県内の聖火リレー中止を検討すると表明した島根県の丸山達也知事(50)。実は10日の定例会見でも五輪開催にキッパリ反対していた。

主な理由は、都が新型コロナ感染経路を追跡する「積極的疫学調査」を縮小したこと。(丸山知事が)今月3日、厚労省に全国的な縮小状況の調査と情報提供を求めてもゼロ回答。さらに、都が先月(1月)22日に縮小を通知する前から都内保健所が事実上、調査できない状況だったと知り、不信感を募らせた。

怒りの矛先は小池都知事の「管理監督能力のなさ」に向かう。特に問題視したのは、緊急事態宣言下の千代田区長選(1月24日告示、31日投開票)で“愛弟子”候補の応援にフル回転したこと。会見では舌鋒鋭く、小池知事をこう批判した。「お仲間の当選のためにこういう行動をされていることも信じがたい。これが大きな問題になっていないことも二重に信じがたい」(中略)

「感染が(再び)拡大した時に同じことを繰り返さないのか。オリンピックの時に感染が拡大しない保証は誰にもない」(以下、略)

小池都知事はコロナ感染重症患者が相次いで亡くなられているのに、医療体制の充実(本人が提言していたオリンピック選手村の活用や簡易医療施設の設営など)はそっちのけで、「3密」もいとわず、千代田区長選挙を応援していたのである。下図で千代田区長候補の応援演説に入って選挙カーで応援演説をしている人物が小池都知事だが、ジャーナリストの横田一氏によると、有権者が自然発生的に集まったのではなく、あらかじめ地域政党の都民ファーストの会の支持者らに演説場所を連絡していたそうだ。写真の3密ぶりをみても、分かることだ(https://www.youtube.com/watch?v=BgRLfCxZxvQ)。

千代田区挑選に応援演説に入っている小池百合子東京都知事
千代田区挑選に応援演説に入っている小池百合子東京都知事

衆議院予算委員長、自由民主党国会対策委員長、自民党総務会長などを歴任した世襲議院の竹下亘衆院議員(7期)・自民党平成研究会会長は丸山知事を厳しく批判したが、大手メディアも批判調子の報道を行った。ただ、日本共産党の志位和夫委員長は記者会見で「勇気ある発言」と擁護した。サイト管理者(筆者)は、同党が現代版「共産主義」の中身を示し得ていないことには問題があると見ているが、同党の国会での論戦や記者会見をYoutubeで視聴する限り、ほとんど「的を射た」発言であると思っている。

やはり、「飲食店」を生贄(いけにえ)にした限定的な「緊急事態宣言」(改正コロナ関連法は行政罰と過料が明記されたが、補償の客観的な水準は示されていない。内閣が発令する政令によってどうにでもなる)では限界がある。コロナ感染状況をつかむ前提としては、➀季節的要因②人の移動指数③実効再生産数ーなどを踏まえることが不可欠だ。

本サイトでも繰り返し主張しているように、中央政府(政府と日銀)が持つ「通貨発行権」を利用して「インフレ率2%上限」という「新しい財政規律」をもとに国債を発行、その財源によって国民の生活と生業(なりわい)を補償することを大前提に、➀無症状感染者(ステルス・スプレッダー)の早期発見・保護・隔離・治療を中心に、「誰でも、いつでも、どこでも、何回でも」PCR検査を受けられるようにする、PCR検査体制の抜本的強化②経営が悪化している病院など医療機関の経営の下支え③国立病院、大学附属病院、民間の検査機関の積極的活用と大学のPCR検査技術・装置などの活用を通した文部科学省と厚生労働省の縦割り行政の撤廃ーなど、世界標準のコロナ禍対策に抜本転換することが欠かせない。


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