オミクロン株など新型コロナ変異株への対応ー国民皆保険制度で保健所から医療機関へ(追記:27日の感染状況)

感染力が極めて強いオミクロン変異株の市中感染が拡大しているが、東大先端研究所の児玉龍彦東大名誉教授によると今後は医療体制を保健所下に置くこれまでの「医療体制」なるものを抜本転換し、国民皆保険制度を徹底化して高度専門病院を含む一般の医療機関を中心とした検査・診療体制へと抜本的に転換する必要があるとのことだ。これまで本サイトで述べてきた「医療体制」の抜本転換に加えておきたい。

オミクロン株対策は医療機関を主力に国民皆保険制度復活を

オミクロン株への新規感染者は欧州諸国を中心に世界的に急拡大している(https://www.jiji.com/jc/article?k=2021122500102&g=int)。日本でも市中感染が少しずつ拡大しているが、ただし、沖縄県の在日米軍基地でのクラスター発生はオミクロン株によるものかどうか詳細は不明だ。

英国、フランス、イタリアで24日、新型コロナウイルスの新規感染者数が過去最多を更新した。新たな変異株「オミクロン株」への感染の急拡大を受け、各国が対応を迫られている。

都道府県では合わせて58人のオミクロン株への感染が確認されています。最も多いのが大阪府で19人、次いで東京都と沖縄県がぞれぞれ10人、京都府が8人、愛知県が2人、神奈川県と岐阜県、群馬県、埼玉県、山口県、福岡県、千葉県、奈良県、広島県がそれぞれ1人です。感染経路が分からないいわゆる「市中感染」の可能性があるとされているのは全国で合わせて20人です。

本稿はYoutubeの番組「デモクラシータイムス」が12月25日土曜日に公開した児玉東大名誉教授と立教大学の金子勝特任教授の「新型コロナ対策連続対談(随時公開)」による内容に、サイト管理者(筆者)がこれまで主張してきた「コロナ対策抜本的転換」の内容を付け加えるものだ。今回の二人の対談は今年2021年の最後になるものだが、二人の結論を先取りして言えば次のキャプチャ図になる。

図では「濃厚接触者」という言葉は使っているが、感染の主流経路が「空気感染=コロナ感染患者が呼吸をする際に空気中に肺の中から吐き出した微小なエアロゾルによる感染」であることをはっきり指摘している。感染経路についての世界の医学界の常識を踏まえた内容だ。本来は「濃厚接触者が多くなる」という表現ではなく、「感染経路を特定できない感染者が多くなる」と言った表現を使うべきだろう。上手の提言は、「濃厚接触者」の定義を曖昧にして「積極的疫学調査」と称する「対策」しか行わなくなった厚生労働省の「感染症利権ムラ」の「コロナ対策」の破綻を示す内容だ。

オミクロン変異株についての全貌はまだ明らかにされていないが現時点で判明している内容は、➀感染力が極めて強い(小学生以下の児童・子供も感染する)②重症化力(毒性)はデルタ株ほどではなく中程度ーとされている。しかし、感染力が強いため、重症化力(毒性)がそれほど強くなくても中等症以上の患者数はデルタ株が流行した今年の夏を下回らない(上回る)公算が大きい。デルタ株は駆逐しているようだが、世界ではデルタ+(プラス)株が感染を広げている国家もあるようだ。

なお、児玉名誉教授は新型コロナウイルスは遺伝子構造が一重らせんのRNA型であるため、自己増殖の際にコピーに失敗して、自壊作用が起こり、消滅しやすいとも語っている。今後の研究の進展により、オミクロン株の存在持続能力や重症化力などが変更される可能性はある。南アフリカで感染拡大のピークが過ぎたとの報道もある(https://news.yahoo.co.jp/articles/7296d2c9a4c91deeaa89bcf529c2f1c8ea790a5f)。

WHO(世界保健機関)は、新型コロナウイルスのオミクロン株が初めて報告された南アフリカでは感染拡大のスピードが落ちていると明らかにしました。

さて、オミクロン株に対する対策のためにはオミクロン株の特徴を把握する必要がある。現在時点で判明している内容は、オミクロン株(ウイルス)は気管支まで到達するが、肺まで到達して肺の内部で増殖する程度はデルタ株より低そうだ。オミクロン株の重症化力が中程度とされるのはこのためだ。また、新型コロナ用のワクチンが産生するオミクロン株を防御する抗体は現在のところ、mRNAは別にして効きにくいという特徴がある。

ただし、ヒトの体内に侵入してくるウイルスなどの異物に対する免疫力は、ワクチンなどによって産生される抗体(中和抗体、ウイルスなどのヒトの体内への侵入を阻止する)液性免疫力とリンパ球のT細胞による細胞性免疫力がある。ワクチンによる抗体はオミクロン株には効きにくいようだ。これが、従来のワクチンがオミクロン株に対して、効果(感染と重症化の阻止)がないとされる理由と見られる。ただし、児玉教授によるとワクチンを主体とした液性免疫が効かなくても、リンパ球のT細胞による細胞性免疫は効果があるようだ。

児玉名誉教授によると、この細胞性免疫力を誘導・強化するのが、mRNAワクチン(米国の製薬大手ファイザー社とドイツの新興企業ビオンテック社が共同開発したファイザー社製ワクチンと同じく同国のモデルナ社が開発したワクチン)は細胞性免疫力を誘導・強化する効果を持つそうだ。だから、mRNAワクチンのブースター接種は有効であるし、高齢者や基礎疾患を持つ方々からブースター接種を行うべきだと説明されておられる(英国の権威ある医学誌Natureなどから説明)。

ただし、mRNAワクチンは緊急性から第三層の治験が十二分に行われないままに新型コロナ用ワクチンとして米国のアメリカ食品医薬品局(Food and Drug Administration=FDA=)から承認されたため、政治・経済評論家の植草一秀氏らによって死亡を含む副作用が、例えばインフルエンザ・ワクチンなどと桁違いに大きいことが指摘されている。厚労省はmRNAの副作用について曖昧にするのではなく、mRNAワクチンの接種に反対または疑問視している医療関係者など第三者の機関を設置し、詳細に研究すべきだ。その間の特例措置として、ワクチン接種後、一定の期間内に接種者が重篤化した場合は薬害対策として取り敢えず補償金を支払うべきだ。

また、児玉名誉教授は米国のメルク社が開発したモルヌピラビル社やファイザー社が開発したバスクロビルなどの治療薬の使用も前向きに検討すべきだとしている。ただし、メルク社のモルヌピラビルは当初発表していた効果を下方修正している。やはり、副作用も含めて安全性と効果性を詳細に調査すべきだろう。ただし、新型コロナウイルスに関してはワクチンではなく、安全性が確認され効果の高い治療薬開発のほうが望ましいことは言うまでもない。

こうしたオミクロン株の特徴やmRNAワクチン接種の効果、新型コロナワクチン用の新薬の新規開発、新型コロナウイルスの感染経路が空気感染であることを踏まえ、児玉名誉教授は厚労省医系技官がコントロールしてきた保健所をコロナ対策の「司令塔」とする従来の新型コロナ対策を抜本的に転換し、検査・治療の主体を医療保険を適用できる高度専門病院(大学や大学附属病院は新型コロナ対策について積極的な協力を惜しんできたと主張されている)を含む日本の医療機関に移行すべきだと主張しておられる。下図がその主要内容だ。

これに加えて本サイトで主張してきたようなコロナ対策の抜本転換策として、➀厚労省医系技官の支配する「感染症利権ムラ(特区構想で設立された国際医療福祉大学も含まれる)」の解体②国立病院機構、地域医療機能推進機構、労働者安全機構傘下の多数の病院をコロナ専門病院に転換する(法的根拠は既に整っている)③政府から助成金や補助金の出る国公私立大学附属病院をコロナ重症患者を受け入れることの出来る病院に再編する④これらの新型コロナ専門病院と地域の医療機関と密接な関係を実現するーなどのことが必要だろう。次のページなどを参考にして下さい。

立教大学の金子特任教授も、医系技官が中心になって「感染症利権ムラ」を守るために行ってきた厚労省の新型コロナ対策について、次のように指摘、批判しておられる。

ただし、岸田文雄政権にコロナ対策の抜本的転換を実現する能力があるかどうかは疑わしい。

2021年12月の東京都の感染状況と実効再生産数の推移

日本のエピセンターである東京都の2021年12月の新型コロナ感染状況は下図の通り。新型コロナウイルスの遺伝子構造の解析は不明。7日移動平均の新規感染者数はまだ第五波ほどではないが、着実に増加している。実効再生産数(一人のコロナ感染者がコロナの感染を拡大する人数)の推移はその次の図の通り(https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/)。図の説明にあるように新規感染者数がまだ多くはないため東京都は上下に振れているが、それでも基調的には上昇傾向にあり1.3前後、全国では上昇傾向が鮮明になってきており、1.3を超えている。



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