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アベクロノミクスの経緯(その20)―「マネー資本主義の最後の鐘がなる」

現在、もっとも注目すべき経済指標は長期金利である。長期金利が急騰すれば国債価格は暴落、つれて、株価の暴落と円の暴落が生じるからである。黒田東彦日銀総裁の最大の眼目は長期金利の急騰を抑えることであるが、日銀には短期金利をコントロールする手段はあるが、同総裁自ら認めるように、中央銀行が長期金利の水準をコントロールすることは不可能である。

日銀は長期国債の買い入れによるマネタリーベースの大幅増加(その大層は金融機関の日銀当座預金が占める)を目指している。日銀は金融機関から同機関保有の国債を購入し、民間金融機関は売却して得たマネーを0.1%の利子が付与される日銀当座預金講座に預金する。それだけ、日銀の国庫への納付金が少なくなるわけだが、要するに国民の税金を巧みに使って当座預金残高を増やしているわけである。

ブルームバーグが報じているように、その残高は70兆円規模もある。2012年末時点では、マネタリーベースは138円でうち、現金が91兆円、日銀当座預金残高が47兆円だ。このマネタリー・ベースを二倍の270兆円に増やすと宣言したのだが、現金を増やすのは容易ではないので、日銀当座預金残高を270兆円ー95兆円(増加する現金量)=175兆円に増やすことになるわけで、差し引き175−47=128兆円増やすことになる。現時点で言えば、175兆円−70兆円=105兆円規模だ。

しかし、これは、実際には不可能である。日銀の買い入れ予定額(入札額)に対して金融機関の応札額が足りない札割れが2012年05月16日に起き、その後も札割れは続いて09月は4,5.7、11、13日と六回連続で札割れとなった。

国庫証券が初の札割れ、日銀基金上限に満たない可能性も

これは、民間保有の国債を日銀に売却しても、キャピタルゲインを得られなくなったからである。日銀に売却して、マネーを日銀当座預金に預金しても0.1%(それでも定期預金よりはるかに高い)の金利しかつかない。現在の10年物新発債の国債利回りは0.85%程度だから、保有していたほうが経済合理性に合う。

だから、札割れは今後とも続き、マネタリーベースを二倍にすることなど、到底できないだろう。問題は二つある。ひとつは、マネタリーベースを仮に二倍に増やせたとしても、基本的には経済の招来に対する明るい展望が開けないため、民間に資金需要がないから、マネーサプライ(M2+CD)は増えず、経済は活性化しない。これは、2000年以降、実証済みだ。

もうひとつは、長期金利が上昇する場合である。このルートは第一に、景気が回復してくるルート。もうひとつは、国債の日銀引き受けを禁じた「財政法4条」の抜け穴(財政赤字の穴埋めのための新発国債をいったん金融機関が引き受け、それを日銀が買い入れる国債の間接的引き受けは禁じていない)国債の直接・間接引受を行なっている日銀に対して、市場から「国債の貨幣化」との批判が強くなり、日銀に対する信頼・日銀の信用がくずれ、管理通貨制度の破綻から長期金利が上昇するルート。現実には後者の事態が生じる公算が大きい。

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日銀としては、消費者物価上昇率目標を達成することを「錦の御旗」にいつまでも包括的金融緩和政策を続けることができる。しかし、①膨大なデフレギャップが存在し、デフレの原因となっているこ②日本は加工貿易国であり、円安による消費者物価上昇を期待しても、1%の円安が国内消費者物価上昇率を引き上げる効果は20分の一%程度であるから、1ドル=140―150円程度にまで円安が進まねばならず、そのためには、日米の短期金利差が3―4%に上昇しなければならない。これは米国で二年物国債金利が3―4%程度に上昇することであり、米国経済が破綻する―ことで、目標達成は不可能だ。

だから、財政当局(財務省)無限に新発国債を金融機関に購入させ、それを買い入れるということを行えると思っているが、要するに国債の貨幣化、国債バブルを引き起こしているのであり、上に記したようにどこかの時点で市場の不振を買い、長期金利は高騰する。

長期金利の高騰で大打撃を被るのは、国債を担保として保有している日本銀行と民間金融機関だ。野口悠紀雄氏の「金融緩和で日本は破綻する」によると、金利1%の上昇で3メガバンクだけで1.7兆円の評価損が発生する。この評価損は業務純益を大幅に食い尽くす。かつ、日本銀行も資産の劣化が大規模に発生し、同行が日本で最大の不良債権銀行になる。

これは、米国が陥っているジレンマでもある。国債バブルを引き押ししている「量的金融緩和政策」に出口はないのである。同国は、「財政、経常、対外純債務」の三つ子の赤字問題を抱えているので、根がもっと深い。5月の雇用統計がクセ球になったのは、そのせいであると考えられる。財政・金融の政策当局に失望し、「マネー資本主義の最後の鐘がなる」時は近い。

 

 

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