大手メディアで流れた「二階外して衆院議員任期満了総選挙」には不確定要素(菅辞任説追記)

8月31日夕刻以降、政府=菅義偉政権が日本国憲法に基づいて要求していたコロナ対策のための「臨時国会」召集を拒否し(憲法違反)、二階俊博幹事長を更迭するなど党役員を刷新したうえで、10月5日公示、12日総選挙を軸にした「任期満了総選挙」を行うことを決めたとの報道が流れている。この報道は菅首相が安倍晋三前首相、麻生太郎副総理兼財務相側に与したとの立場(安倍・麻生サイド)に立った報道だが、二階幹事長の不満のほか菅内閣の支持率の激落による選挙基盤の弱い自民党衆院議員の「怒りの声」が反映されていない。もう暫く様子を見る必要がある。

8月31日のコロナ感染状況(予定)

複数のメディアによると、8月最後の31日火曜日の新規コロナ感染者数は前週火曜日に比べて1311人減の2909人だった。コロナ第5波はピークアウトに転じてきていると思われる。死亡者は15人、東京都基準の重症者は287人。7日間の移動平均で見た新規感染者数は3520.7人とまだ非常に多いが、前週比では75.9%だ。この傾向が6週間続くと単純計算で622.8人になり、菅首相の描く10月17日任期満了解散には有利になる。ただし、事実上の医療崩壊状態はなお続く。

全国では午後18時3523時59分時点で、新規感染者数は1万7713人、死亡者が65人、重症者2110人になっている。

東京都のコロナ感染者数の推移
東京都のコロナ感染者数の推移

菅総理・総裁による「二階幹事長切り」に対する疑問

野党側はコロナ対策のため、日本国憲法第53条「内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない」に従って、臨時国会の召集を要求していた。憲法の規定によれば、内閣は招集しなければならないのであって、召集を拒否することはできない。既に自公連立政権の常套手段と化しているが、臨時国会召集拒否は憲法違反だ。この意味で、自民党総裁選への出馬には敢えて言及しなかったとしているが、石破茂元幹事長の次の発言はまともだ(https://www.sankei.com/article/20210830-ZH73VS7OOZKUPMNZTS42LC7OTY/)。

自民党の石破茂元幹事長は30日、菅義偉(すが・よしひで)首相(党総裁)の総裁任期満了に伴う総裁選への対応について「白紙だ」と述べるにとどめた。石破氏が不出馬を示唆したとの一部報道には「示唆した覚えはない」とも語り、出馬の是非は慎重に検討していく考えを示した。国会内で記者団に語った。また、石破氏は「総裁選の議論が多いが、国会の本来の役割を忘れてはいけない」と述べ、臨時国会を召集し、新型コロナウイルス対策を議論すべきだとの考えを重ねて強調した。

石破氏は当初は自民党総裁選に出馬しないとしていたが、新型コロナ感染患者が「自宅療養=自宅放置=自宅遺棄」の状況に置かれ、治療を受ければ助かる生命が助からないケースが相次いでいることを踏まえ、臨時国会召集の必要性を説き、臨時国会が召集されない場合は総裁選出馬に含みを持たせていた。

こうした中で、30日夕刻から大手メディアの間で菅内閣は臨時国会を召集せず、「任期満了解散」を行うことを決めたとの報道が流れ始めた。例えば、朝日デジタルは30日22時58分では次のように伝えている(https://digital.asahi.com/articles/ASP8Z7HPSP8ZUTFK01Z.html?iref=comtop_7_03)。

菅義偉首相は次の衆院選を前に、自民党役員人事を行う検討に入った。二階俊博幹事長は交代させる方向だ。また、衆院選については、解散権を行使せず閣議決定で衆院選の日程を決める任期満了選挙案が浮上。10月5日公示、同17日投開票を軸にした調整が行われている。首相に近い複数の政権幹部が明らかにした。人事をめぐっては、二階氏も交代を容認しているという。首相は衆院選前に党運営の顔ぶれを代えることで、刷新感を打ち出したい考えだ(以下、略)。

こうなれば憲法違反だが、臨時国会を召集しないわけだから、石破氏は出馬すべきだ。そして、コロナ対策を中心に菅氏と政策論争をすれば良い。ただし、いくら自民党内に二階幹事長への不満が強く反二階勢力をなだめる菅総理・総裁の策略としても、コロナ対策を中心とした政策の抜本転換を伴わない自民党役員人事そのものが、冬場にかけて襲来する第6波も含めて「抜本的なコロナ対策」になるのか誰が考えても理解は不可能だ。どうも、安倍・麻生氏側の立場を忖度した報道のような気がしてならない。さて、共同通信も最初は同様の報道を行っていたが、報道内容を変化させている。30日午後22時13分では次の第一報だった(https://news.yahoo.co.jp/articles/b3573cf772d3334e95e96195d055411b7d63fdf0)。

菅政権が二階俊博自民党幹事長の交代を含めた衆院選前の党役員刷新を検討していることが分かった。複数の関係者が30日、明らかにした。

ところが、東京新聞者のWebサイトが共同電として30日午後22時44分に伝えた記事は次のようになっている(https://www.tokyo-np.co.jp/article/127884?rct=main)。恐縮だが、全文転用させていただきたい。

菅義偉首相が衆院解散の権限を行使せず、衆院議員の任期満了(10月21日)に伴って次期衆院選を閣議決定する案が政権内で浮上した。「10月5日公示、17日投開票」が軸となる。自民党の二階俊博幹事長の交代を含めた衆院選前の党役員刷新も検討されている。複数の政権関係者が30日、明らかにした。10月上旬の衆院解散案を軌道修正する日程案となる。関係者によると、総裁選(9月17日告示、29日投開票)を先送りするかどうかや、総裁任期延長、内閣改造も課題となる。

ただ、党内では複数候補による総裁選を先行して衆院選に臨むべきだとの意見が根強く、流動的な要素が残っている。今後、党役員会などで協議するとみられる。(共同)

共同電ではただ、党内では複数候補による総裁選を先行して衆院選に臨むべきだとの意見が根強く、流動的な要素が残っている。今後、党役員会などで協議するとみられると、事態が流動的であることを付け加えている。二階幹事長が菅首相(総裁)の話を素直に了解したのかどうか、疑問は残る。二階幹事長は、2019年参院選広島選挙区での大型買収事案で、当時の河井陣営(河井前法相・案里候補)に支給された政党助成金1億2000万円を含む1億5000万円の使途をつかんでいる。このうち、半分ほどの「選挙資金」は安倍首相(当時)が横領したという疑惑(「取り敢えず半分」疑惑)だ。

執念深いとされる二階幹事長が簡単に安倍・麻生側に屈服したとは容易に想像し難い。また、政府=菅政権の数々の失政、特にコロナ無策によって菅内閣の支持率は激落している。自民党内の選挙基盤の弱い衆院議員は菅総理・総裁の下での総選挙は、落選に直結すると反発していることも見逃せない。

ただし、31日午前零時38分に共同電は次のように修正されている(https://nordot.app/805046097039228928)。

菅義偉首相(自民党総裁)は衆院選前に党役員を刷新し、二階俊博幹事長を交代させる調整に入った。二階氏も容認した。首相が衆院解散の権限を行使せず、衆院議員の任期満了(10月21日)に伴って次期衆院選を閣議決定する案も政権内で浮上した。「10月5日公示、17日投開票」が軸となる。複数の政権関係者が30日、明らかにした。首相は二階氏と会談し、新型コロナウイルス感染拡大を受けた追加経済対策を策定する意向を伝えた。政府、与党は9月の自民党総裁選前の臨時国会召集を見送る方針を固めた。

本来なら石破氏の指摘するように、菅内閣はコロナ第6波も踏まえた抜本的コロナ対策のための臨時国会を召集し、そのうえで解散・総選挙を行うというのが筋だろう。菅首相がそれをしないならば、既に述べさせていただいたが、石破氏は総裁選に出馬すべきで、コロナ対策を中心に徹底的に論戦を挑めば良い。石破氏が総裁選出馬の意思表示をしないならば、「楽観論」で突き進んできた菅総理・総裁の顔で与野党激突の総選挙が行われることになる。

しかし、第5波で明らかになった事実上の「医療崩壊」は次の諸要因で起きていることを国民が知れば、自公両党は大敗するだろう。第一に世界的には、コロナ感染の主流が飛沫ではなく微小なエアロゾルによる感染ということになり、コロナ感染者に接しなくても感染者が居たところでは、容易に感染することが次第に明らかになってきた。感染が判明しても日本では、「自宅療養=自宅放置=自宅遺棄」だ。日本では夏休み明けの新学期開始に踏み切るかどうかが重要な問題になっている。千葉県では学校でのパラリンピック観戦を全面的に中止した。第二に、コロナ感染の主流が飛沫沿線ではなく、エアロゾル感染=空気感染であることからすれば、政府コロナ感染症対策本部分科会などの「厚労省医系技官」からなる専門家の「積極的疫学調査」なる「日本型モデル」には全く科学的根拠がなかったということになる。

第三に、医系技官の天下り先である国立病院機構や地域医療機能推進機構、労働者安全機構傘下の多数の大規模・中規模病院は、設置法に「コロナ病院」として転換する義務がありながら、コロナ患者をほとんど受け入れてこなかった。世間の批判の高まりに、地域医療機能推進機構の城東病院(東京都江東区亀戸、117床)が50床だけコロナ病床を確保すると言い出した。第四に、国立大学附属病院は文科相と厚労相の権限と要請で、東京都のほとんどの都立病院など各地方自治体の公立病院は知事の権限と要請で、コロナ専門病院に転換できるはずだが、一部を除いてコロナ専門病院への転換が本格化していない。第五に、病院としては多額の補助金を受け取っている私立大学附属病院もコロナ専門病院に転換すべきだが進んでいない。これらの病院は中等症から重症のコロナ患者を受け入れるべきだ。

これらの病院の非コロナ患者は近隣の私立病院で受け入れるか、入院が必要でない場合は自宅治療(十分な経過観察体制の確保は必要)すれば良い。軽症患者は、宿泊療養施設を確保、整備して経過観察と治療が行えるようにしなければならない。医療体制の抜本的再編は不可欠だ。

季節要因から新型コロナが第5波以上に大流行する秋から冬場にかけて、世界的な感染症対策の基本原則「徹底検査と隔離・保護・治療」に立ち返ることと抜本的な医療体制の再編・構築なくして、現在の第5波にも危うさはつきまとい、6波はもちろん乗り切れない。これらのことを踏まえると、今回の報道については警戒が必要だ。二階幹事長の更迭を中心とした党幹部人事の一新だけで、「コロナ禍」という戦後最悪の事態を乗り切ることが出来るのか。

本サイトが参考にさせていただいた朝日新聞出身でフリージャーナリストの佐藤章氏はツイッターで次のように疑問を呈している(https://twitter.com/bSM2TC2coIKWrlM/status/1432341008327446530?ref_src=twsrc%5Egoogle%7Ctwcamp%5Eserp%7Ctwgr%5Etweet)。

(上記の共同電第一報は)主語が「菅政権」となっているがそんな名前の人はいない。二階を外すとなれば菅の決断以外ありえない。菅に確認したのか? 共同は最近、安倍・麻生側の情報が多すぎる。信頼度ゼロ。そんなに甘くない。

菅政権、二階幹事長の交代など刷新検討(共同通信)

なお、共同通信は「流動的な要素が残っている」と記載したことはある。当初、二階幹事長が「菅総裁再選」を支持したのは、「幹事長職留任」を前提としてのことだろう。また、二階幹事長が自民党と公明党の「良好な関係」の立役者だったという指摘もある。

菅首相が安倍前首相・麻生副総理兼財務相と結託して、二階幹事長を捨てたのかどうか、あるいは二階幹事長が自民党内最大派閥ではあるが、簡単に安倍・麻生の反撃はないかどうか。また、二階グループはどうするのか。暫く様子を見なければならない。それに、石破氏や自民党員で選挙基盤の弱い現職衆院議員の動静も見極める必要がある。朝日デジタルは午後15時55分「シナリオ崩れ続けた首相 二階切りと岸田つぶしの成算は」と題する記事を投稿している(https://digital.asahi.com/articles/ASP804VXHP80UTFK00N.html?iref=comtop_7_01)。

無派閥出身で、党内基盤の弱い首相にとって主要派閥の動揺は、総裁選への致命傷になりかねない。首相には派閥領袖(りょうしゅう)らからも「劣勢」が報告されていたという。岸田氏の目玉公約をつぶすとともに、安倍、麻生両氏だけでなく、若手らを改めて振り向かせる――。首相が生き残りのために決断したのが「二階切り」だったというわけだ。

さらに政府・与党では、衆院選について、解散権を行使せず閣議決定で日程を決める任期満了選挙案が浮上した。10月5日公示、同17日投開票を軸にした日程案だ。議員の任期が切れる前に衆院選を行い、コロナ禍でできる限り「政治空白を無くす」というのが党幹部らの「大義」だ。この日程の場合、総裁選のさなかの9月下旬に閣議決定が必要とされており、首相の再選に向けて総裁選を事実上形骸化させる狙いも指摘されている。

ただ、政局が流動化するなかで、首相の思惑通りに進むかは見通せない。外された格好の二階氏の周辺には、首相への不快感も渦巻いている。二階氏がこのまま唯々諾々と従うだけなのかもわからない。内閣支持率が低迷するなかで首相本人は残りつつ、二階氏を代えるだけで、党内や世論の支持を集めることができるのか。野党がコロナ禍の経済対策の必要性を指摘するなかで、国会を開かない首相の衆院選戦略は自身の想定通り進むのか。首相のかじ取り次第で、さらに窮地に追い込まれる可能性もある。

コロナ対策で完全に失敗したことから、菅首相(内閣)の支持率は激落している。自民党内の二階幹事長への不満をなだめて党内での支持を固めようとした菅首相だが、コロナ対策の抜本転換を行わない限り(コロナ対策の無為無策を認めない菅首相には無理なことだ)、その思惑通りに進むかは極めて不透明だ。また、二階幹事長が30日の首相との会談で「幹事長辞任」を承諾したと伝えられているが、二階幹事長が唯々諾々と受け入れるかどうかも極めて不透明だ。加えて、自民党総裁選のカギを握るのは河野太郎行革担兼ワクチン担当相と石破元幹事長の出馬表明と言える。そして、何よりも菅首相には自身の「コロナ似非対策」に対する国民の審判が待っている。

ただし、中国の台頭を許さないとしている米国のディープステート(闇の帝国:軍産複合体と多国籍金融資本・グループ)が「媚中派」と揶揄される二階幹事長とそのグループを排斥しようと圧力をかけているなら、別の次元の話になり得る。

【追記:08月31日午後22時】朝日新聞出身のフリージャーナリスト佐藤章氏によると、菅首相が二階幹事長を「辞任させる(切る)」ために利用したのは、InFact編集長の立岩陽一郎氏が明らかにした二階幹事長の使途不明の総額37億円にのぼる不正政党資金取得(寄附)疑惑(https://news.yahoo.co.jp/byline/tateiwayoichiro/20210831-00253894)。政治資金規正法では、政治家個人が有権者から直接寄附を集めることは禁じられているが、「抜け穴」がある。

政党助成金が収入の太宗を占める政党収入から政党所属の国会議員に寄附を行うことは可能だ(https://www.tokyo-np.co.jp/article/127817)。二階幹事長は幹事長就任後、自民党が得た政党収入の中から合計37億円の寄附を受け取り、その使途を明確にしていないというのが立岩氏の取材内容。この記事は昨夕から今朝にかけて永田町を駆け巡ったと言う(https://www.youtube.com/watch?v=iBjCyXFOSTY)。

この「使徒不明37億円疑惑」の発覚には、中国と敵対する米国のディープステート(闇の帝国:軍産複合体と多国籍金融資本・企業)傘下の同国戦略国際問題研究所(Center for Strategic and International Studies, CSIS)が絡んでいるという情報もある。ただし、自民党の政党収入からの党所属国会議員(二階幹事長)への寄附は法的な抜け穴だから、理屈の上から言えば二階幹事長にも反撃の道は残されている。

さて、佐藤氏が明らかにしたそれ以上の内容は、菅首相自身が辞任に追い込まれる可能性があるということだ。これには、①今や世界的な常識になっている新型コロナ感染の主な経路が、厚生労働省の主張してきた飛沫感染ではなく、飛沫よりも微小なエアロゾルによる感染=エアロゾル感染=空気感染であることを無視してきた②厚労省の医系技官のトップである福島靖正医務技官と正林督章健康局長の「進言(入れ知恵)」で、新型コロナ感染者を原則「自宅療養=自宅放置=自宅遺棄」にしたため、「自宅遺棄」者の死亡や同居人の感染を多数出しているなど、コロナ対策を根本から誤っている③従来のコロナ対策の抜本的転換が必要で、そのために憲法第53条に基づく国会召集は必要不可欠なのに、憲法を無視に違反して野党の要求する臨時国会を召集しないーことなどで、国民からの信任信用を完全に失い、総選挙(神奈川2区)で落選する可能性が強まってきたということがある。このため、佐藤氏によると菅首相(総裁)は自民党内で急速に求心力を失っているという。

佐藤氏によれば、自民党総裁選に出馬すれば必ず新総裁に選ばれるとされる河野太郎行革兼ワクチン担当相は、現在のところはワクチン担当相としての責務を強く感じて総裁選出馬を迷っており、総裁選告示日の9月17日ぎりぎりまで態度を明らかにしない戦略を取る可能性があるという。その間に菅首相は一挙に求心力を失い、「八方塞がり」になって辞任に追い込まれる可能性が出てきたというのである。現時点では時々刻々と情勢が変転する情勢にあることを考慮に入れなければならないだろうが、自民党が大混乱に陥っていることは確かだろう。その現れとして、9月1日早朝の複数のメディアの報道を総合すると菅首相(総理)総裁選を無効にするため、任期満了解散だけでなく、党新役員人事・内閣改造直後の解散・総選挙も視野に入れているという。菅首相が首相を辞任し、政界引退を表明しない限り、大混乱は収まらない。



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