菅首相の早期解散・総選挙、石破氏か河野氏総裁選出馬次第ー総選挙になれば落選も(訂正補強)

9月29日投開票の自民党総裁選に関心が集まっているが、安倍晋三前首相、麻生太郎副総理兼財務相に支援のシグナルを送っている岸田文雄前政調会長では菅義偉首相(総裁)の相手にはならない。菅首相(総裁)が致命的と思っているのは、石破茂元幹事長か河野太郎行革担当相兼ワクチン担当相が正式に出馬を表明した時だ。その場合、菅首相(総裁)が総裁選で敗北することは確実だから、同首相(総裁)は東京パラリンピック終了後の9月6日から総裁選が告示される17日までの間に臨時国会を開き、①冒頭解散か臨時国会開会中に解散・総選挙に踏み切る②10月21日の現職衆院議員の任期満了総選挙(最速9月26日日曜日)を行うーのいずれかで対応することになるだろう。

8月30日月曜日コロナ感染状況

複数のメディアによると、8月30日の東京都の新規コロナ感染者数は7月26日以来約1カ月ぶりに2000人を下回る1915人だった。死亡者数は30代を含む12人で、東京都基準の重症者数は前日から9人減少した217人だった。季節的要因から東京都が先行して第5波がピークアウトしつつあるようだ。今週が見極めの週になると思われる。ただし、コロナ感染の主流がエアロゾル感染=空気感染であることが明確になったことから、従来の「積極的疫学調査」なるものを中心としたコロナ対策を抜本的に転換しない限り、新規感染者が減少しきらないうちにコロナ感染が大流行する第6波が襲来することになるだろう。
全国では午後18時30分23時59分の時点で新規感染者が1万3638人、死亡者は46人、重症者2075人になっている。

東京都のコロナ感染者数の推移
東京都のコロナ感染者数の推移

菅首相による解散・総選挙と自民党総裁選

本サイトでは、朝日新聞出身のフリージャーナリスト・佐藤章氏の見解を軸に、菅首相が9月6日に臨時国会召集・冒頭解散に踏み切るシナリオを中心に伝えてきた。

ところが、菅首相(総裁)の再選を支持してきた石破元幹事長が8月27日、総裁選への出馬を匂わせてきた(https://www.jiji.com/jc/article?k=2021082701181&g=polhttps://www.yomiuri.co.jp/politics/20210828-OYT1T50319/。また、河野太郎行革担当相兼ワクチン担当相も9月29日の時点で菅首相の総裁再選支持を明言してはいない(https://medical.jiji.com/news/46646)。以下、それぞれの報道を引用させていただきたい。

自民党の石破茂元幹事長は27日、菅義偉首相の任期満了に伴う党総裁選への対応について「現時点で全くの白紙」と述べた。これまでは新型コロナウイルス禍を踏まえ、総裁選を衆院選後に先送りすべきだと主張していた。総裁選を先行実施する流れとなり、姿勢を変化させたとみられる。(中略)

さらに「自民党の地域支部や青年部などから、お前が出ないでどうするんだという電話やメールが山ほど来る。同僚議員からも声をいただく。まだこれから先、いろんな変化があると思う」とも語った。出馬する場合、推薦人20人の確保が課題になるとの認識も示した。

自民党の石破茂・元幹事長は28日、鳥取県倉吉市で講演し、新型コロナウイルス対策を議論する臨時国会を召集すべきだとした上で、「やらないということであるなら、志ある方と相談し、自分はどうすべきかを判断したい」と述べた。

ただし、医療体制崩壊のおり、「臨時国会召集」は正論だが、菅首相は別の目的(解散・総選挙)で臨時国会を召集することを考えていてる。政治の正論から言えば、石破氏は先手を打って総裁選出馬を表明すべきだろう。下記は、出馬か見送りか、思案に暮れている河野行革兼ワクチン担当相の動静。

河野太郎規制改革担当相は29日のフジテレビ番組で、9月の自民党総裁選で菅義偉首相の再選を支持するか問われ、「今はワクチン接種(の調整)を閣僚としてやっているから、まず自分の仕事をしっかりやりたい」と明言を避けた。

毎日新聞社と社会調査研究センターの最新の世論調査によると、菅内閣の支持率は26%と7月17日の前回調査の30%から4ポイント下落して過去最低を更新し、不支持率は前回の62%から4ポイント増えて66%と過去最悪になっている(https://mainichi.jp/articles/20210828/k00/00m/010/251000c)。コロナ対策で「無為無策」どころか「Go To トラベル」や「東京オリンピック/パラリンピックの強行開催」など「コロナ感染拡大策」を続けた挙げ句、「行政検査・行政入院」を続けられなくなるなどの致命的な失政を犯したためだ。

このため、「自宅療養」という名の「自宅遺棄」に乗り出し、事実上の「医療崩壊」を招いている。東京新聞8月30日付け1面トップ記事(https://www.tokyo-np.co.jp/article/127667?rct=main)によると、首都圏の1都3県では今月1~29日、救急搬送後に死亡が確認されたケースやみとりを含め、少なくとも31人が亡くなった。毎日新聞社と社会調査研究センターの最新の世論調査では、政府=菅政権の「コロナ対策」を「評価しない」と応えた回答数は全体の70%にも上った。毎日新聞と社会調査研究センターは28日、全国世論調査を実施した。菅内閣の支持率は26%で、の最新の世論調査では7月17日の前回調査の30%から4ポイント下落した。2020年9月の政権発足以降で初めて30%を切り、最低を更新した。調査方法は異なるが、第2次安倍政権で最も低かった17年7月の支持率と並んだ。不支持率は66%で前回の62%から4ポイント増え、過去最悪となった。

毎日新聞による内閣支持率の推移
毎日新聞による内閣支持率の推移

菅政権の新型コロナウイルス対策を「評価する」と答えた人は14%で、前回(19%)から5ポイント減少し、「評価しない」の70%(前回63%)を大幅に下回った。「どちらとも言えない」は16%(同18%)だった。

常識的に考えれば、菅首相(総裁)の続投では総選挙は戦えないはずだ。また、次期自民党総裁に相応しい自民党現職衆院議員の第一位は石破元幹事長、第二位は河野行間担当相兼ワクチン担当相だ(https://mainichi.jp/articles/20210828/k00/00m/010/290000c)。

毎日新聞と社会調査研究センターが28日に実施した全国世論調査では、携帯電話での回答者774人を対象に「自民党の総裁にふさわしいと思う政治家の名前」を1人だけ挙げてもらった。104人(13%)が挙げた石破茂元幹事長がトップで、82人(11%)の河野太郎行政改革担当相が2位で続いた。

石破氏と河野氏のどちらかが9月17日に告示される総裁選への出馬を正式に表明すれば、党員と党友票からなる国会議員票(383票)と同数の地方票(383票、ドント方式で票を配分)で、菅首相(総裁)を圧倒するだろう(参考:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210826/k10013223851000.html)。

菅総理大臣の総裁としての任期が9月末で満了するのを前に、自民党は、午前の総裁選挙管理委員会の会合に続き、午後には総務会を開き、総裁選挙の日程などを協議しました。

 

自民党総裁選挙
自民党総裁選挙

 

その結果、9月17日告示、29日投開票の日程で、党の規程に基づいて党員投票も実施することを決めました。

石破氏、河野氏双方が総裁選出馬を表明しても、「コロナ対策」への不信を中心に国民の菅内閣に対する支持率が25%程度に激落していることから、地方票では両氏が圧倒し、それが菅・二階俊博幹事長体制に巨大な不満を持つ選挙基盤の弱い現職衆院議員を中心に、国会議員票にも反映されることになる。自民党総裁選は行われるとしても、総選挙を控えているため、過去のように派閥の領袖通りに現職国会議員は投票しないだろう。

派閥領袖による締め付けは効かない情勢だ。こうした中で、石破氏、河野氏のいずれか、もしくは双方が総裁選に出馬すれば、菅首相が総裁に再選される見込みはないだろう。東京都から第5波はピークアウトしてきているとはいえ、治療を受けられない「自宅待機=自宅放置=自宅遺棄」または「入院待ち」の感染患者は東京都で依然として3万人を超えており、医療体制はまことに貧弱な状況であることには変わりなく、また、冬場の大流行期に備えて医療体制を抜本的に再構築するため、本来なら臨時国会を開催すべき時だが、仮に、両氏が出馬表明をしなければ、コロナ対策・国民の生命・健康そっちのけで総裁選を行うことになる。

なお、岸田前政調会長は「反二階」を鮮明にして、細田派(安倍派)と麻生派に支援要請のシグナルを送っている。しかし、二階幹事長が2019年夏の参院選広島選挙区での大型買収事件で、安倍首相(当時)が河井克行前法相・案里候補(当時)に支給した政党助成金1億2000万円を含む1億5000万円の半分程度を横領した「公金横領事件」の詳細を熟知しているものと見られ、安倍前首相に脅しをかけていることから、安倍前首相・麻生副総理兼財務相もうかつに動けない。

このため、「権力掌握術」にかけては超一流の菅首相としては、東京パラリンピック終了直後の9月6日から17日の当総裁選告示日前の16日までに臨時国会を召集、①冒頭解散か臨時国会会開会中に解散・総選挙を行う②10月21日の現職衆院議員の任期満了総選挙(最速9月26日日曜日)を行うーのいずれかに踏み切り、総裁選を事実上停止するものと思われる。佐藤氏は石破、河野両氏の動向次第だが、9月6日の臨時国会召集・冒頭解散の可能性もなお強いとしている(https://www.youtube.com/watch?v=pW-_6BvCAC8&t=5s)。

なお、菅首相は緊急事態宣言中でも法的には衆院解散は可能であるとしており、解散に踏み切る場合は解散日から選挙管理委員会の準備期間を経て9月下旬に総選挙を公示し、少なくとも12日間を置いた10月上旬の日曜日(3日か10日)に総選挙に踏み切るものと予想される。「緊急事態宣言」などの効果によるものではなく、季節的要因から第5波のピークは9月上旬までに到来すると予想される。このことも、菅首相には好都合だ。

菅首相が総選挙に踏み切れば、菅首相(菅政権)に対する支持率の激落から、自公両党でも過半数を獲得できない可能性がある。ただしその場合でも、真正野党の共闘体制が確立されていなければ、自民党支持層の中で菅氏に投票しない「保守層」が「日本維新の会」に投票し、「自公プラス維新」の連立政権が誕生するだろう。その場合は、名実ともにファシズム政権が誕生することになる。維新の片山虎之助共同代表は東京新聞のインタビュー(8月30日付け3面)に応じ、次のように応えている(https://www.tokyo-np.co.jp/article/127670?rct=main)。

(前略)

―コロナ禍で経済的な不安も高まっている。
 「ピンチをチャンスに変える日本大改革プランを今準備している。それは可処分所得を倍増するため税制改革と社会保障改革、成長戦略を一体としたものだ。まず国民に1人6万円のベーシックインカムを保障する。それに伴い、「」廃止する。働き方改革や徹底した行財政改革も行う」
―経済をどう回復する。
「消費税率を2年間5%、その後8%に下げて消費を喚起する。法人税や所得税のフロー大減税を行い、フェアでシンプルな仕組みとする。もっとも、当面はコロナを抑えることが一番の景気回復策だ」
―維新の立ち位置に近いのは与党か、野党か。
「自民党出身議員が多いので親近感があり、外交や安全保障、マクロ経済政策などは与党と共通するところが多い。党の綱領でも『自立した個人・地域・国家の実現』を目指しているので菅内閣の方向性と一致する。しかし、今後の税制改革、社会保障や規制改革、地方分権等では全く違う。維新は自民党に『活』を入れる役割を担っていると自認している。自民党とは良いライバルの関係を持てればと思う」
―維新ならコロナ対策をどう転換するか。
 「感染症も人類の恐るべき脅威になることが分かった。今の法律や憲法は、感染が急拡大した非常事態に対応するものになっていない。要請だけでは、逆に国民の生命、身体や権利、自由が守られないことになる。国民のためにも、公権力を必要な限度で行使できる法制が求められるのではないか」(後略)
要するに維新は、日本国憲法に「緊急事態条項」を盛り込むことを視野に入れており、ベーシックインカム制度を導入するいう形で、「生活保護や児童手当、基礎年金等を廃止する」として、現在の国民皆保険制度や憲法に定められた「生活保護制度(生活保障制度)」の破壊など、憲法改悪を進めるということだ。これは、「自公維新」政権による「ファシズム政権」をもたらすことになる。

ただし、立憲民主党の福山哲郎幹事長によれば、日本共産党との政策協定は水面下で進んでおり、立民は小選挙区ごとの独自調査でも手応えを感じているという。それが真実なら、真正野党側が国民の手に政権を奪還できる可能性は残されている(https://www.youtube.com/watch?v=b-kvbAi0mm4https://www.youtube.com/watch?v=pW-_6BvCAC8)。

次期総選挙での最大の焦点は、菅首相の選挙区てある神奈川2区だ。佐藤氏は真正野党側が知名度の高い人物を統一候補に擁立すれば、現職の菅首相が落選する可能性がなくはないとしている。野党の「接着剤」の役割を果たしてきた「市民連合と野党の共闘」の世話役の山口二郎法政大学法学部教授も同じ考え方だ(https://www.youtube.com/watch?v=tzZoiUqiHwk&t=1948s)。横浜市長選挙では小此木八郎氏と林文子氏への投票数の合計より山中竹春氏と田中康夫氏の投票数の合計のほうが、1万5千票ほど多かったことが参考になる。

 

横浜市長選挙での神奈川2区での投票状況
横浜市長選挙での神奈川2区での投票状況

 

その知名度の高い人物として、山口教授はれいわ新選組の山本太郎代表と長野県知事を務めた田中康夫氏を挙げている。佐藤氏は山本代表の名前を挙げている。山本代表にとっても、現職の菅首相に勝てば戦後政治史にない大金星だし、少なくともれいわ新選組の比例ブロックでの得票数を飛躍的に伸ばすことができる。れいわ新選組にとっても勝負の時かもしれない。ただし、そのためには立民が社民党や維新と同じように消費税の凍結といった政策を旗印にする必要がある。福山幹事長によると、所得税減税とのセットで盛り込む意向だと言う。

いずれにせよ、今週から日本の政界は大激動期に入る。次回総選挙で、日本はファシズム政権の樹立を許してしまい奈落の底に突き落とされるか、政権を国民の手に戻すか。日本は今週から「大分水嶺」の時期に突入する。


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