コロナ禍を脱出できない政府=菅政権の財政政策

12月24日の全国のコロナ新規感染者数が3000人台の3271人になり、死亡者は56人といずれも過去最多を更新した。重症者は前日比1人減少だが高水準の619人。英国で変異した感染力が従来より7割程度強い英国型新型コロナウイルスの「日本上陸」が懸念されているが、既に上陸した可能性も否定できない(英国からの入国者は1日平均150人程度=23日付朝日新聞3面、https://digital.asahi.com/articles/DA3S14742157.html?iref=pc_ss_date_article=)。政府=菅政権の危機管理能力が問われているが、2020年度の三次にわたる補正予算を通して政府の財政政策の目的を推測する限り、コロナ禍は解決できない。

菅義偉首相は当初、21日夜の毎日新聞社系列のTBS番組で、英国からの日本入国者は1人か2人と語っていたが、加藤勝信官房長官は23日日本人以外の外国人も含めて150人程度と修正した((英国からの入国者は1日平均150人程度=23日付朝日新聞3面、https://digital.asahi.com/articles/DA3S14742157.html?iref=pc_ss_date_article=))。外国からの入国は東京オリンピック/パラリンピック強行開催に備えて「水際対策」が緩められていたから、変異した英国型ウイルスに感染している人が既に日本に存在する可能性はかなり高い。

12月23日木曜日コロナ感染状況

本日12月24日木曜日の新型コロナ感染状況は、東京都は新規感染確認者は1週間前の12月17日木曜日の822人より66人多い過去最多更新のの888人、東京都基準の重症者は前日比4人増加の73人(https://www.fnn.jp/articles/-/61484)。新規感染者が1週間前よりも増加する傾向が続いている。東京都の場合、PCR検査人数に占める陽性者の割合(陽性率)は8%を超えているから、政府、東京都は追い込まれて検査人数を増やさざるを得なくなっているが、増やせば増やすほど陽性者が多くなる。年末年始にかけてこのままでは、医療体制逼迫の段階から崩壊に至るから、休業補償付きの緊急事態宣言を再発出するべきだ。
東京都のモニタリング(https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/)では、7日移動平均での感染者数は649.6人、PCR検査人数は7784.3人だから、瞬間陽性率は8.34%。東京都独自の計算方式でも7.6%。感染者のうち感染経路不明率は60.36%と初の60%台になった。ステージ3/4の陽性率は10%。いずれの「公式公表値」も悪化傾向が続いている。推定瞬間陽性率は8%超えており9%に近づいている。最早、保健所による感染経路の探索、クラスター対策というコロナ感染症対策は破綻した。
全国では、午後23時59分時点で新規感染者数が過去最多の3739人になり、死亡者は54人が確認されている。重症者は前日比25人増加し、644人に増加している。全国的に、新規感染者は急増していると思われる。
しかし、厚生労働省は「地域医療構想の実現を図るための病床機能再編支援」と称して、2021年度予算案に病床削減政策(例えば、病床が90%以上稼働している場合では1病床当たり228万円を国庫負担するというように、病床の稼働率が100%=病床削減につながる=に近くなるほど国庫支援金が増加する仕組み)を強行し、全額国費負担で195億円を計上することにしており、新型コロナ感染症の急激な拡大で病床が不足していることは無視している。背景には2022年問題(団塊世代が後期高齢者入りして社会保障費が急増するという問題)があると見られるが、これについては後日、詳細を投稿する予定。
【参考】東洋経済ONLINE(https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/)では、12月23日時点の実効再生産数は全国が前日比0.01人増加しと1.04人、東京都は1人減少して1.14人となっている。

東京都のコロナ感染者数推移
東京都のコロナ感染者数推移

改正新型インフル措置法に基づいて緊急事態権限を発令したこともあり、2020年の実質国内総生産(GDP、季節調整値)は極度に悪化したが、これは昨年第4・四半期、民間調査機関の推計なども考慮すると、政府が2018年第1四半期から景気が後退局面入りしていることを把握しておきながら、消費税増税を強行したことが経済悪化の重大な発端になった。参考までに、直近の季節調整値での実質GDPの推移を下図に示す(https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/files/2020/qe203_2/pdf/jikei_1.pdf)。表の左項目は四半期、右項目は実質国内総生産(GDP)で、単位は10億円。

日本経済の再受容指標は、実質GDPの推移であるが、この実質GDPの推移を見ると、とてもではないが消費税増税強行と悪化するコロナ禍を乗り越え、20年間の長期に及ぶデフレ不況を克服することはできない。なお、アベノミクス出発点の2013年第1四半期の実質GDPは502兆円6077億円であり、2020年第3・四半期のそれは500兆6297億円、緊急事態宣言後の第3・四半期はその反動反動増でも527兆1404円で、到底もとの長期デフレ不況の経済成長軌道にすら乗っていない。

おお、経済成長率の平均値はわずか0.4%(前期比年率実質GDP成長率の単純平均値)で、日本経済が真っ暗だと言われた民主党政権時代の期間でさえ、実質GDPの平均値は1.6%だったから、これには遠く及ばない。長期デフレ不況を象徴する物価の下落は続いており、インフレ率2%の実現をかかげた政府=日銀のリフレ政策は、試算バブルを引き起こしながら、完全に破綻している(https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/index-z.html)。

全国消費者物価上昇率
全国消費者物価上昇率

実質賃金指数の推移
実質賃金指数の推移

2人以上の家計消費は前期比で緊急事態宣言発令の反動増が見られるが、前年同月比ベースでの回復はまだまだだ。政府の財政政策は、新型ワクチンによる「神風(かみかぜ)」が吹くことを当てにし、「コロナ収束」を前提として、2020年度第三次補正予算案と2021年度一般会計予算案を編成しているが、コロナ禍対策にはまともな財政措置を講じていないため今後、経済悪化が続くことになる。この点について、経済政策に詳しい植草一秀氏のメールマガジン第2808号「超巨大財政支出で国民支えぬ菅内閣」から引用させて頂きたい。

2000年度の一般会計当初予算の規模は103兆円。政府支出のうち、国債費が23兆円、地方交付税交付金が16兆円で、残りの
63兆円が政策経費である「一般歳出」だ。しかし、年金、医療、介護の社会保障関係費が半分を占める。

一般会計と特別会計を合わせた歳出純計は244兆円だが、このうち国債費が85兆円、社会保障関係費が95兆円、地方交付税交付金が20兆円で、社会保障以外の政策に充当する支出は32兆円だ。1年間の国家財政で社会保障以外の政策に充当する歳出規模は32兆円なの
だ。これが政策面における国家予算の規模。繰り返すが年間予算規模は32兆円。

これに対して、2020年度は第一次補正予算で26兆円、第二次補正予算で32兆円の支出を追加した。合計58兆円だ。さらに閣議決定され第三次補正予算の規模が15兆円だ。合計で73兆円の規模に達する。このすべてが基本的に政策支出になる。1年間の政策支出が30兆円のところ、73兆円の追加を行うのだ。とてつもない規模の予算措置が取られている。

この73兆円は政府から本当にお金が出てくる、いわゆる「真水」であり、日本のGDPを最低でも73兆円増やす支出になる。これだけの政府支出を実行するのだから、経済は急激な回復を演じなければおかしい。

しかし、コロナによる苦境からはっきりと抜け出す見通しはまったく立っていない。(また)これだけの政府支出が透明性をもって公平に実行されていない。(実態としては)自公政権にとって「金と票」の見返りが期待できる対象に絞って、べらぼうな利権財政支出が展開されている。

その一方で、コロナで本当に困っている、生存権を保障しなければならない、もっとも経済力が弱い人々に対して(政府の財政措置=予算項目には)支援の手がほとんど差し伸べられていない。

閣議で12月月齢経済報告を了承
閣議で12月月齢経済報告を了承

自民党と連立を組む公明党が第三次補正予算案のために公開している2020年度補選予算の概要は次の通りだ(https://www.komei.or.jp/komeinews/p134411/)。なお、菅義偉首相は公明党の支持基盤である創価学会の幹部と会談を重ねているが、これは日本国憲法が第23条3項目「国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない」で定めた「政教分離」の原則に抵触する。

コロナ禍対策はわずか4兆3581億円だ。Go To トラベルが加速した全国でのコロナ新規感染者、重症者、死亡者の急増、医療体制の逼迫・崩壊寸前の状況に加えて感染力が異常に強い英国型ウイルスの日本上陸がほぼ現実のものになってきている状況では、これではとても足りない。ポストコロナに向けた経済構造の転換(実態は、中小雇用の大規模な悪化を招く企業の淘汰・再編=中小企業つぶし)は論外でや国土強靭化は時期尚早。当面、予算を通した財政措置は全額、コロナ禍対策に充当すべきだ。

既に再三述べているように、抜本的なコロナ禍対策への転換こそが大規模な経済対策になる。重複するが、再掲させていただきたい。
➀新型コロナウイルスのスプレッダーになっている無症状感染者を早期発見し、保護・隔離・適切な治療を行うこと②東京オリンピック/パラリンピックの強行開催を最上位の目的に置いて、第Ⅱ類相当指定感染症に政令指定し、日本のコロナ感染状況(Covid-19)の実態を覆い隠し、また、厚生労働省と旧日本帝国陸軍病院の延長線上にある国立感染研究所などが国費検査利権を獲得することを目的としているから、PCR検査、抗体検査の相当な技術革新を国民に知らせ、「いつでも、どこでも、だれでも、何回でもPCR検査や抗体検査」を受けられるようにして、感染者に対する医療措置を行えるようにすることと、「緊急事態宣言の再発出」に備えて「営業自粛・禁止」と「休業補償」をセットにすることを盛り込んで、改正新型インフル特措法を現状を踏まえて再改正すること
③年末・年始を控え医療体制の崩壊を防ぐため、政府が地方自治体に拠出しているコロナ対策のための地方創生臨時交付金(3兆円規模)制度を拡充(基礎地方自治体の2割負担を廃止し、全額国費で財政支援を行う)して、医療従事者の手当の大幅増額と経営が悪化している医療機関に対する財政支援措置をすぐに実施し、現場に届くようにすること➃「一般政府財政バランスシート健全化原理主義」を廃し、現代貨幣経済理論(MMT)を日本の現状に合わせて創造的に適用することーなどである。


恐らく、政府=菅政権は、「3密回避」や菅首相も無視する「5人以下のマスク会食」がコロナ感染対策になるなどとは思っていないだろう。コロナ感染拡大がさらに増加してくればこれを口実にし、菅義偉政権は感染拡大を食い止めると称して、改正インフル特措法に営業活動自粛強制条項を盛り込もうとするだろう。補償なき営業活動の自粛強制は日本国憲法第29条1項「財産権は、これを侵してはならない」、第3項「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる」に違反する。改正インフル特措法を強制力を持つようにさらに改正するなら、「営業活動自粛強制と休業補償」をセットで盛り込まなければならない。

次の投稿記事も参照されたい。

今後、来春までは財政措置を大幅にコロナ禍対策にシフトするべきだ。さもなければ、政府=菅政権は国民から見捨てられるだろう。



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