G7「オリ/パラ開催日本支持」は「安全・安心な形で」の開催が条件付き(暫定投稿)

菅義偉首相が2月19日夜11時に行ったG7首脳とのテレビ会合で、東京オリンピック/パラリンピック開催についてG7首脳から開催で日本の立場に支持を表明したと報道されているが、「安全かつ安心な」開催という条件付きであることを確認しておく必要がある。

2月21日コロナ感染状況

複数のメディアによると本日2月21日日曜日の新型コロナ感染状況は、東京都では新規感染確認者は1週間前の2月14日日曜日の371人から99人減少して272人、15日連続の500人割れで、東京都基準の重症者は前日と同じ82人だった。ただし、17人が亡くなられている。重症者が亡くなられるケースが最も多いと見られる。
東京都のモニタリング(https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/)では、7日移動平均での感染者数は341.6人、PCR検査人数は6756.1人だから、瞬間陽性率は5.06%。東京都独自の計算方式では4.1%。感染経路不明率は51.26%。7日移動平均での感染者数の対前週日曜日費は89.8%。この数字がどこまで低下するかが大きなポイント。

全国では午後23時59分の時点で、新規感染者数は1032人、死亡者数は50人が確認されている。重症者数は577人。累計死亡者数は7493人。

【参考】東洋経済ONLINEhttps://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/)では、2月20日時点の実効再生産数は全国が前日比0.05人増加の0.90人、東京都でも同0.05人増加の0.94人。実効再生産数は下げ止まりから反転上昇しているようだ。

G7(フランス、アメリカ、イギリス、ドイツ、日本、イタリア、カナダ)首脳のテレビ電話会議では、NHKなどの報道によると、菅首相は「ことしの夏、人類がコロナとのたたかいに打ち勝った証しとして、安全・安心な大会を実現したいということ」を発言し、「G7の首脳全員の支持を得ることができた。大変心強い」と述べたとされる。これは。「安全・安心な形での開催」という条件付きの意味だ。日本は、米国のバイデン大統領が明言したように「安全・安心な開催が可能かどうかの科学的事実(証拠)」を全世界に向けて世界各国が納得いくように公表しなければならない。

参考までに、G7宣言の該当する箇所をNHKのWebサイトから引用させていただく(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210220/k10012877661000.html?utm_int=nsearch_contents_search-items_002)。

G7 首脳声明の内容
G7=主要7か国の首脳によるオンライン形式の会議のあと首脳声明が発表されました。首脳声明では、新型コロナウイルスに打ち勝ち、民主的で開かれた経済と社会の強みを生かして、2021年を多国間主義のための転換点とし、人々と地球の健康と繁栄を回復するために取り組むとしています。(中略)

最後に、6月のイギリスでのG7サミットで、こうした優先事項(注意:新型ワクチンの発展途上国への供給や脱炭素社会への移行など)についての具体的な行動に合意することを決意し、新型コロナウイルスに打ち勝つ世界の結束の証しとして、ことしの夏に安全・安心な形で、東京オリンピック・パラリンピックを開催するという日本の決意を支持するとしています。

G7首脳会議の電話会談
G7首脳会議の電話会談

森喜朗前会長は女性蔑視の記者会見が全国に報道され、世界各国から非難を浴びて辞任した。しかしながら、森氏は「(新型コロナが)どんな状況のもとでも東京オリンピック/パラリンピックは必ず開催する」と言明していたことも確かだ。この発言も、日本はもちろん世界各国の国民の生活や生業(なりわい)を重視する、オリンピック憲章にもとる発言だ。確かに、オリ/パラはどんな事態になっても、開催すること自体は可能だ。実質的には、東京国体オリンピック・パラリンピックになるだろう。さもなくば、「人類がコロナに打ち勝った証」、「安全かつ安心」に開催できるという「科学的な事実(証拠)」が示されなければならない。

18日木曜日、19日金曜日は、日本の感染震源地(エピセンター、Go To トラベルで明らか)になっている東京都の新規感染者数はそれぞれ455人415人、353人と前週の木曜日、金曜日の434人、307人より増加した。20日土曜日と21日日曜日はまた減少に転じた(ただし、前週からの減少幅は傾向的に小さくなっている)。1月下旬ころに始まった前週の同じ週からの減少傾向が続くか今週の新規感染者の動向が注目される。参考になるのは、アップル社が公開してい人の移動指数。これによると、本日20日日曜日から始まる今週が重要になる。新型コロナが活性化する季節要因が2月末でだとすると、前週と比較しての減少傾向が続く可能性が大きい。しかし、一部には季節要因は3月末までとの見方もある。その場合は、下げ止まりから反転上昇する可能性もある。

人の移動指数(政治経済評論家の植草一秀氏)による
人の移動指数(政治経済評論家の植草一秀氏)による
人の移動指数(政治経済評論家の植草一秀氏)による
人の移動指数(政治経済評論家の植草一秀氏)による

ただし、PCR検査人数は7日医同平均で20日は6756.1 人であり、減少傾向にあることは確かだ。PCR検査人数は、だんだん少なくなってはきているものの、入院待ちの感染患者数(724人)や家族内感染しやすい自宅療養者(1015人)がなお多いためだ。第3波の新規感染者急増で、PCR検査対象者が高齢者や基礎疾患のある都民に限定されてきているによるものだ。積極的疫学調査は新規感染者数が多くなると通用しなくなる。そのためこれまでの間、ステルス・スプレッダー(無症状感染者)の発見が出来なかったから、第4波が起こる可能性は極めて高い。いや、非政府系の専門家の間では第4波が起きると見ている。

このため、NPO法人医療ガバナンス研究所の上昌広理事長・医師や東大先端研の児玉龍彦東大名誉救助らが指摘するように、➀全員検査と「いつでも、どこでも、誰でも、安心して」PCR検査を受けられる検査体制が整備されていること②簡易医療施設の設営を含む医療体制の整備③国民に対する生活支援の体制ーの抜本的整備がどうしても必要だ。英国屋南アフリカ、ブラジルなどで変異した変異株の中には、新型ワクチンが効かない変異株もあるから、本サイトで何度も述べているように「新型コロナ一本足打法」ではやはり、危険だ。

季節要因が2月末か3月末のいずれであろうと、第4波は必ず来る。その時に備えて置かなければならない。上理事長・医師が指摘しているように、夏場に第4波が訪れる可能性が濃厚だ。こうなると、菅首相がG7で述べたような「ことしの夏、人類がコロナとのたたかいに打ち勝った証しとして、安全・安心な大会を実現したい」と語っても、「科学的エビデンス」は示せないことになる。

NPO法人・医療ガバナンス研究所上昌広理事長・医師
NPO法人・医療ガバナンス研究所上昌広理事長・医師

既に、東京オリンピック/パラリンピックについては、準備に必要なスケジュールが未だ不明なこと、そのために実務的に開催には間に合わない。もはや、「開催が可能かどうか」の判断ではなく、「開催を中止するか否か」の判断の段階に入っているというのが本当のところだ。なすべき判断は、国民の生命(健康)と生業(なりわい)を守るために、オリ/パラは中止するとの判断である。そのように判断する根拠をオリンピック憲章から指摘しておきたい(https://www.joc.or.jp/olympism/charter/konpon_gensoku.html)。

  • (2条)オリンピズムは、肉体と意志と知性の資質を高揚させ、均衡のとれた全人のなかにこれを結合させることを目ざす人生哲学である。オリンピズムが求めるのは、文化や教育とスポーツを一体にし、努力のうちに見出されるよろこび、よい手本となる教育的価値、普遍的・基本的・倫理的諸原則の尊重などをもとにした生き方の創造である。
  • (第3条)オリンピズムの目標は、あらゆる場でスポーツを人間の調和のとれた発育に役立てることにある。またその目的は、人間の尊厳を保つことに重きを置く平和な社会の確立を奨励することにある。この趣意において、オリンピック・ムーブメントは単独または他組織の協力により、その行使し得る手段の範囲内で平和を推進する活動に従事する。
  • (第6条)オリンピック・ムーブメントの目的は、いかなる差別をも伴うことなく、友情、連帯、フェアプレーの精神をもって相互に理解しあうオリンピック精神に基づいて行なわれるスポーツを通して青少年を教育することにより、平和でよりよい世界をつくることに貢献することにある。

また、日本オリンピック委員会(JOC)では、「6.1宣伝と広告」次のように定められている(https://www.joc.or.jp/olympism/charter/chapter5/61.html)。

  • (第1項目)オリンピック・エリアにおいては、いかなる種類のデモンストレーションも、いかなる種類の政治的、宗教的もしくは人種的な宣伝活動は認められない。オリンピック施設の1部であると考えられるスタジアム、およびその他の競技エリア内、およびその上空ではいかなるかたちの広告も許可されない。
    スタジアム内あるいはその他の競技グラウンド内では、商業目的の装置や広告用の看板などの設置は許可されない。
  • (第2項目)なんらかのかたちでの宣伝や広告を許可するための原則および条件を決定する権限は、IOC理事会だけが持つものとする。

森喜朗組織委前会長、オリンピックを日本(東京)に誘致活動を行った安倍晋三前首相、橋本聖子組織委新会長(セクハラ・パワハラ疑惑事案を抱え込んでいる)、後任の丸川珠代五輪相はいずれも、自民党清和会(現細田派)に属する。7000億円程度で開催の予定であった東京オリンピック/パラリンピック開催総額は、今や3兆円以上(大会スポンサー企業が組織委に寄付した血税が2兆円程度異常注がれている)の巨額に膨れこんでおり、この中に利権支出が相当にある可能性は濃厚だ。嘉納治五郎財団を通してのオリンピック委員会(IOC)のアフリカ委員の買収疑惑もフランス当局が捜査している。

コロナ禍問題に加えて、相当規模の利権支出(血税の私物化)、誘致買収疑惑、大会関係者のオリンピック憲章に違反する倫理疑惑など東京オリンピック/パラリンピックはオリンピック憲章とは相容れない「競技」に堕してしまっている。政府=菅政権の今の判断は現実離れしているとしか言いようがない。


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