大阪府の医療崩壊の原因は感染症法にあり(バイデン施政演説関連追記)
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大阪府では昨日4月29日に1日当たり過去最多の44人が新型コロナ感染症で亡くなられた。これは政府=菅義偉政権が新型コロナ感染症患者(以下、コロナ患者)の受け入れを民間病院に任せており、高度な医療を行うことができ、特定機能病院としての役割を果たしている国公立大学附属病院や国立病院など地域医療の中核を担っている中核大規模公的病院がコロナ患者を受け入れられる法的仕組みが、行政罰を設けたただけの改正感染症法に整っていないことー感染症法の改正が不十分であることーに大きな原因がある。

4月30日金曜日のコロナ感染状況

東京都で前週の同じ曜日を下回るのは3月31日以来となる。ただし、重症者は依然として高水準。なお、ゴールデン・ウィーク入で、PCR検査人数が通常よりも少なくなっている状況があることを考慮する必要もある。参考情報だが、GoogleのAI予測(https://datastudio.google.com/u/0/reporting/8224d512-a76e-4d38-91c1-935ba119eb8f/page/ncZpB?s=nXbF2P6La2M)では全国、東京都とも7日移動平均は上昇傾向で推移する見通しだ。

4月30日金曜日のコロナ感染状況
複数のメディアによると4月30日金曜日の東京都の新型コロナウイルスの感染者数は前週日曜日比61人減の635人、東京都基準の重症者は65人になった。7日移動平均では773.4人になり、前週比110.9%になった。
全国では、午後23時59分時点で4684人が新規感染、39人が死亡され、重症者は978人。大阪府の感染者は1043人で、死亡者は8人。
【参考】東洋経済ONLINEhttps://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/では、429日時点の実効再生産数は全国が前日比0.02人減の1.08人、東京都は同じく429日時点で前日と同じ1.10人だった。やや低下傾向になってきている。
東京都のコロナ感染者数の推移
東京都のコロナ感染者数の推移

大阪府の医療崩壊の原因

朝日新聞社出身のジャーナリスト・佐藤章氏が、NPO法人医療ガバナンス研究所の上昌広理事長・臨床医師への取材をもとに明らかにした(https://www.youtube.com/watch?v=MqjCbWzJj2k)。大阪大学附属病院、大阪市立大学附属病院、大阪市立総合医療センターなどは高度な医療を行える特定機能病院として地域医療の中核センターになっている。佐藤氏によるとそれぞれ1086床、972床、1063床を有しており、ICUなども簡単に増設できるという。ところが、こうした高機能大規模病院がコロナ患者をほとんど受け入れていないという事情がある。

 

大阪市立総合医療センター

 

上理事長は厚生労働大臣を務めた自民党の塩崎恭久(よしひさ)衆院議員(愛媛1区、総務庁長官、経済企画庁長官を歴任した塩崎潤の長男)とも親しいが、塩崎衆院議員も当然、政府=菅政権のコロナ対策に助言している。その塩崎議員のブログに次のような指摘がある(「政治決断で医療崩壊回避のための法改正を」https://www.y-shiozaki.or.jp/oneself/index.php?start=20&id=1335)。

 

本日(2021年1月13日)夕刻、大阪府を含め7府県に緊急事態宣言が追加的に発出された。これまた遅きに失した、との声が私の周りには多い。官邸コロナ対策本部後の総理会見の最後に、核心を突く質問があった。残念ながら、総理は正面から答えておられなかった。

その記者は趣旨としては以下のような論理を展開した。「総理は今日、国民への協力を多々お願いしたが、政府がこうする、との話は結局出てこなかった」との前置きの後、「日本は、人口当たりの病床数が世界一多い国である一方、コロナ感染者数は米国の100分の1程度。なのに、なぜか日本は医療逼迫(現在、大阪府は医療崩壊)、緊急事態。総理は、その理由に関する質問に対し、医療の体制が国によって異なることが原因、と回答したのみ」とした。そして、「しかし、その他国と異なる体制を作っているのは政治であり、政治が法制度を変えさえすれば、体制を変え、問題解決できるのではないか。なぜ医療体制改革のために、通常国会に病床転換のための改正法案(注:感染症法の改正案)を提出しないのか?」と核心に迫った。

これに対し総理からは、(中略)今国民が最も望んでいるはずの、医療崩壊回避のための具体的、積極的な政策や法案の提起はなく、その記者が提案した医療法改正について今後検証する、と応えるにとどまった。厚労省から聞こえてくる声も、総理同様、民間病院に、重症患者の場合、一床当たり最大1950万円の支援をするなど、支援継続とともにさらにお願いする、との流れしか聞こえてこない。

しかし、それでは、事態の打開には決して結びつくことはなく、医療崩壊は避けられないと思う。この問題を議論続けてきた我々有志議員の医療崩壊回避のための政策・法改正提言の結論は、「感染症有事における医療資源再配分に関する『選択と集中』の徹底」しかなく、各都道府県において、知事中心の要請によってコロナ重症・中等症患者を大学病院をはじめとする公的医療機関(日赤、済生会などを含む)に集中させ、そのための必要人材に関しても、調整を行う、というもの。(以下略)

要するに、現在の改正感染症法でも、政府や都道府県の首長が国公立私立大学付属病院をはじめとする公的医療機関(日赤、済生会などを含む)にコロナ中等、重症患者受け入れを要請したとしても、改正感染症法では財源的裏付けがないから、要請を断らざるを得ないために受け入れることが出来なくなっているというのである。

実は、政府=菅政権が感染症法の改正を行った際に、塩崎衆院議員らが要望した改正案(https://drive.google.com/file/d/1U3vRIMQTP5trDwNTlVRY7KgC1iR_0nzE/view)の中に重要なくだりがあった。以下のくだりである。

 

この改正案のポイントは、➀政府や都道府県首長に対して「コロナ重症患者」を受け入れさせるための強力な権限(要請もしくは指示)を与える②そのために、政府・都道府県は「費用を弁済する義務をもたせる」ことーの二点であり、表裏の関係をなす。ところが、塩崎氏らのこの改正案は、感染症法の改正の際に握りつぶされ、日の目を見ることはなかった。佐藤氏によると、厚労省の医系技官や国立感染研究所などの「感染ムラ利権集団」が予算の減少(削減)を恐れて徹底的な抵抗をしたというのである。

これでは、変異株の全国的拡散も加わって、医療崩壊が大阪府だけでなく、東京都、さらにはゴールデンウィークを利用して首都圏、関西圏から地方に観光、帰省等に行く都道府県の住民が多いため、全国に変異株感染が拡大する恐れが濃厚である。日本政治に巣食う各種利権ムラを解体しない限り、日本国憲法第13条「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」を守ることは出来ない。

政府=菅政権としては「緊急事態宣言」や「まん延防止等特別措置」を発出して、国民・市民に自粛要請をするなら、それに見合った政策を展開すること(➀大規模社会的検査の実施と検査陽性者の保護・隔離・治療②公的医療機関の大規模活用を中心とした医療体制の抜本的強化③安全で有効なワクチン入手スケジュールの明確化と接種体制の強化)が不可欠だが、それをしない。立憲民主党の枝野幸男代表と日本共産党の志位和夫委員長は解散・総選挙に向けて協議を開始したが、何よりも財源の裏付けのある強力なコロナ禍対策、デフレ不況対策を国民が理解できる形で具体的に、分かりやすく提示すべきである。

バイデン大統領、インド・東アジア版NATO編成に注力を表明

ディープステート(闇の国家:軍産複合体と多国籍金融資本・企業)傘下のバイデン大統領は現地時間4月28日夜(日本時間4月29日朝)、就任後初の施政方針演説を行ったが、各種メディアによると、中国を念頭に「専制主義が未来を勝ち取ることは」ないとして、インド・東アジア版NATOの編成に注力することを宣言した。その先鋒役は日本が背負うことになる。在日米軍の指揮の下に、自衛隊が「敵基地攻撃能力」を確保する方向で驀進することになるだろう。しかし、このことが中国の大きな反発を招くことは必至だ。

また、北朝鮮はもちろん、韓国や東南アジア諸国連合(ASEAN)はインド・東アジア版NATOには加わらないだろうし、インドも本気で中国と軍事的に争う決意があるかは未知数だ。台湾の立場も微妙だ。インド・東アジア版NATOの庇護を受けようとするだけで、中国は黙っていないと思われる。

日本の自衛隊がインド・東アジア版NATOの先鋒になっていけば、日本は中国の大反発の対象国になり、大きな痛手を被ることになるだろう。経済的には日米貿易総額より日中貿易総額の方が大きくなっており、日本の経済は重大な影響を被る。また、経済産業省の指導の下に中国に進出した日本の企業も大きな痛手を覚悟しなければならない。日本は米国の植民地政策から脱却し、国連の人権宣言をもとに起草された国際人権規約(社会権規約、自由権規約)の批准を求め、同規約の遵守を求める一方で、他国の米軍基地にはない治外法権を与えている「日米地位協定」の真の意味での改正を求めるという極めて困難だが、言葉の真の意味での積極的平和外交を展開していかなければならない。

なお、バイデン大統領は新型のmRNA型ワクチンの接種が予想以上の接種が進んでいることを自賛しているが、上述の上理事長はつぎのように指摘している(https://toyokeizai.net/articles/-/420127?page=3)。

このことを論じるうえで最重視すべきはコロナが風邪ウイルスであるということだ。新型コロナが流行する以前から4種類のコロナが世界で流行を繰り返していた。本稿では、このようなウイルスを風邪コロナということにする。風邪コロナの特徴は、夏と冬、1年に2回の流行を繰り返すことだ。下図は国立感染症研究所(感染研)の調査結果だ。冬場に加えて5~7月に小流行を繰り返していることがわかる。

コロナウイルス感染症発症の季節要因
コロナウイルス感染症発症の季節要因

(中略)

今回、感染者数が増加に転じたのは3月7日だ。7月23日に開会式が予定されている東京五輪がどうなるか予断を許さない。私は、今夏の新型コロナの流行は簡単には収束しないと考えている。問題となるのは変異株の存在だ。変異株の感染が拡大したブラジル、南アフリカの1月の感染者数は北半球のカナダやメキシコを上回った。真夏の南半球で、真冬の北半球並みの流行が起こっていたことになる。南アフリカやブラジルで流行した変異株の感染力の強さがご理解いただけるだろう。

【変異株への対応を間違えると悲惨な事態にも】
今後、南半球は秋から冬へ向かい、本格的な感染拡大の時期へと突入する。変異株への対応を間違えれば、悲惨なことになりかねない。その典型例がブラジルだ。夏場の感染が収束せず、そのまま拡大している(下図)。これは日本にとってひとごとではない。今夏、東京五輪で感染が拡大し、そのまま秋から冬を迎えれば、冬場に到来する第5波の感染者数は昨年レベルでは終わらないだろう。

世界主要国のコロナ新規感染者数
世界主要国のコロナ新規感染者数

どうすればいいのか。一刻も早くワクチン接種を行き渡らせて、集団免疫を獲得するしかない。その際に問題となるのは、変異株の存在だ。変異株が厄介なのは、ワクチン耐性のリスクをはらむからだ。アストラゼネカやノババックス製のワクチンが、南アフリカ株やブラジル株に対して効果が落ちることはすでに広く報じられている。

日本で接種が進んでいるファイザー製のワクチンは、日本で感染が拡大しているイギリス株に対して、十分な感染予防効果が期待できると報じられているが、このまま感染が拡大すれば、ファイザー製のワクチンに対する耐性株が出現するのは時間の問題だ。なぜなら、一連のワクチンがスパイクタンパク質を標的にしているからだ。この部分は人体で免疫を惹起(じゃっき)しやすいが、突然変異が起こりやすい。

突然変異の発生率は感染者数に比例する。感染拡大が続けば、ファイザー製のワクチンだけ「無傷」ということは考えにくい。モデルナは、変異株のmRNA配列に合わせたワクチンを開発する意向を示しているが、そのような手法で生産されるワクチンが世界に広く供給されるには、数年はかかるだろう。(以下略)

米国も変異株問題は軽視すべきではない。東大先端研所属で遺伝子工学に詳しい児玉龍彦東大名誉教授は、「変異株は自壊しやすい面はあるが、最後の局面で最も狂暴な変異株が出現する」と警告しておられる(https://www.youtube.com/watch?v=fRhdKsB2pkM&list=PLtvuS8Y1umY9sfiqMlek4Bg2D_e2naby3)。日本も厚労省の医系技官と国立感染研究所など旧陸海軍の病院を出身母体とする各種感染研究所からなる「感染ムラ」を解体し、感染症、癌(がん)、遺伝子工学、情報工学の専門家を結集した日本版疾病予防センター(CDC)を組織化する時に来ている。


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