菅義偉首相は、立憲民主党の枝野幸男代表の下では骨太の共通理念・政策、野党連合政権構想の在り方で合意した野党共闘体制を構築するのは不可能と見て、9月第1週に臨時国会を招集、冒頭解散を断行し、9月末か10月初めに総選挙に打って出るようだ。この理由に加えて、自民党内部での権力争いで、二階俊博幹事長が安倍晋三前首相、麻生太郎副総理兼財務相、甘利明自民党税制調査会長の「3A」に対して巻き返しを図り、有意に立ってきたことがある。真正野党側は早急に対策を構築するべきだ。
8月11日のコロナ感染状況(追記予定)
複数のメディアの報道によると、8月11日火曜日の東京都のコロナ感染状況は前週の火曜日に比べて34人増加して4200人になった。死亡者は2人だが、そのうち1人の方は「自宅療養中」に亡くなられた。東京都基準の重症者は197人(厚生労働省基準ではその8倍はあるから、1600人程度)になり、10日の176人を21人上回り、2日連続で最多を更新した。
検査人数に左右されにくい7日間移動平均での新規感染者数は3983.6人で、11日時点では前の週に比べ114.5%にとどまった。東京オリンピックの強行開催に伴う連休でPCR検査人数が減っていることもあるが、7日移動平均での前週比は漸減しており、季節敵要因を考慮しなければならない状況だ。また、東京都基準でも重症者は過去最多を更新している。PCR検査で陽性と判明した段階から、「隔離・保護・(精密医学による)治療」が必要だ。全国では午後20時00分の時点で過去最多の1万5812人の新規感染者、1332人の重症者、20人の死亡者が確認されている。
菅首相9月第一週臨時国会招集、冒頭解散
朝日新聞出身で政治・経済の動静やコロナ禍対策にも詳しい佐藤章氏が8月10日、読書家・経営者が主催するYoutubeの番組「一月万冊」で衆院解散時期の最新情報を明らかにした(https://www.youtube.com/watch?v=gbDss7h1N74&t=856s)。9月第1週に臨時国会を招集、冒頭解散に踏み切るという。
その理由の第一は、本サイトでもしばしば明らかにしてきたように、野党第一党である立憲民主党(立民)の枝野幸男代表が日本共産党との間で合意していた(骨太の)共通理念・政策を打ち出すための協議に応じないことだ。理念・共通政策・野党連合政権の在り方で一致したうえで、野党共闘体制を組むのでなければ、単なる「野合」に堕し、国民(特に有権者の5割を占める支持政党なし層)から理解と賛同、総選挙での投票を得ることはできない。時事通信社は8月9日午前7時37分に次のように報道している(https://www.jiji.com/jc/article?k=2021080800221&g=pol)。
衆院選へ「協議」始まらず 動かぬ立民、共産が揺さぶり
秋の衆院選に向けて開始するはずの立憲民主党と共産党の協議が4月(27日)の合意後、一度も行われていない。保守層の離反を懸念する立民が敬遠し続けているのが原因だ。しびれを切らす共産党は、独自候補の擁立を再開するなど立民への揺さぶりを掛け始めた。「政権交代という覚悟を示すような公党間の話し合いが行われるべきだ。早く議論したい」。共産党の田村智子政策委員長は6日の記者会見で、立民側の動きの鈍さにいら立ちを隠さなかった。(中略)
背景には、枝野氏が共産党との共闘に否定的な連合の意向を無視できないことがある。枝野氏は「協議開始」を口にしたものの、共産党との関係を深めれば連合の反発を招きかねないとのジレンマを抱える。ただ、政策の擦り合わせが進まなければ、選挙区調整は困難だ。すみ分けをしても「野合批判」を受ける可能性がある。一方、協議の遅れは共産党の選挙準備にも影響を及ぼす。
腰の重い立民を刺激するかのように、共産党は都議選以降、新たに4人の候補を、立民現職にぶつける形を含めて擁立。逆に都議選で共産党候補の当選に尽力した立民現職に対しては、競合候補を比例代表東京ブロックに回す配慮を示している。
時事通信社の報道では、野党連合政権協議が進まないのは枝野代表が「保守層の離反」を恐れてのことと記しているが、実際のところは、記事の後段でも多少は触れているが、大企業の産業別労働組合が支配する日本労働組合総連合会(連合)=自公連立政権の御用組合=による野党分断工作のためだ。日本共産党は1922年7月15日と言われるが、ロシア共産党(レーニンやスターリンが率いるボリシェビキ)を中心に、「共産主義革命」の世界的な輸出を目的に結成されたコミンテルンの日本支部として創設されたという歴史的事実はある。
しかし、スターリン主義時代のソ連はその「理論的根拠」になっている「科学的(もどき)社会主義(弁証法的唯物論、史的唯物論、資本主義崩壊を結論づけた資本論からなる)」の理論的破綻が現実のものになり、1989年 12月2日から3日に開かれた地中海のマルタ島での米ソ首脳会談を最終的なきっかけに、ゴルバチョフ大統領(当時)の時代に崩壊した(1991年12月25日、ゴルバチョフ大統領は辞任、ソ連邦の消滅を宣言)。
日本共産党は戦後もこの「科学的(もどき)社会主義」を掲げ、武装闘争などを行うとともに「共産主義読本」という「教科書」まで出版していたが、「党内対立」の中でスターリン主義や毛沢東主義を根本から否定するようになり、「共産主義読本」も廃刊している。現在では、「綱領」が同党の基本理念であり、「社会主義・共産主義体制は高度に発達した資本主義国を土台に誕生する」というマルクスの予言を重要視し、新たな「科学的社会主義」を模索している。
現在では戦後の欧州で、ドイツの社会民主党が1959年11月ゴーデルベルク綱領(1959年から1989年)を採択、「史的唯物論=階級闘争史観」を否定して「国民政党」として生まれ変わり、政権を担ってきた経緯がある。歴史的に見て、ともにディープステート(闇の国家:軍産複合体と多国籍金融資本・企業)が支配する米国の二大政党制と欧州の二大政党制(現在は「緑の党」などが加わり、それまでの二大政党制がかなり多様化している)は全く異なる。参考投稿記事は次です。
現在の日本共産党も実態は、戦前の講座派の理論(民主主義革命と社会主義革命の二段会革命路線)を加味した、日本国憲法を擁護する「日本型社会民主主義政党」と言ってよい。サイト管理者(筆者)としては、同党が「弱肉強食」主義である「新自由主義現代資本主義社会」を克服できる「科学的社会主義(過去の共産主義の揚棄=止揚)」を打ち出すべきと思うが、時期としては尚早だろう。ただし、同党が現在提案している政策は、こうした本来の流れに沿っているものと理解している。その意味では、サイト管理者(筆者)は現在の日本共産党は、新自由主義に立脚してきた小泉純一郎政権以降の自民党政権に対峙できる政党のひとつの政党と理解している。
自民党はもはや単独では政権を樹立できず、本来なら「新自由主義」とは相容れない宗教団体・創価学会を支持母体とする公明党と連立政権を組まざるを得なくなっている。この現実からすれば、当面は立民と日本共産党が共通理念と骨太の共通政策、野党連合政権構想で合意し、国民に公表して政権交代を実現するというのが当然であり、現実的と考える。しかし。立民は政府の御用組合であり、自公連立政権の新自由主義を支持してきた連合の支配から脱却できておらず、「保守層の取り込み」を大義名分にした形で連合の野党分断策の術中にはまっている。「枝野立民」こそ、真の「国民政党」とはなり得ていない。
連合の勢力は有権者の5%程度以下だ。本来なら、当面は50%程度の投票率の国政選挙で投票率を60%程度以上に引き上げることが最大の重要課題だ。そうすれば、立民は連合の支配から脱却して国民政党になることができる。そのためには、全国の小選挙区で一定の支持基盤を持つ日本共産党との選挙協力は不可欠で、そのためには、理念・骨太の共通政策、野党連合政権構想で一致して、その内容を国民に強くアピールすることが不可欠だ。そうしなければ、立民が真の国民政党になるのは不可能と言って良いだろう。しかし、枝野代表の下ではそれが現実的には極めて困難な情勢になっている。
なお、米国を支配するディープステート(闇の帝国:軍産複合体と多国籍金融資本・企業)はかつて民社党を結成させ、「社会民主主義勢力」の分断工作を展開してきた。今回の連合による立民と日本共産党の分断工作の背後では、ディープステート傘下のCIAが暗躍している可能性が濃厚だ。菅首相は国民のための政策立案能力は皆無だが、権力闘争にかけてはスターリンを凌ぐ超一流の「スターリン主義者」と言って差し支えない。トヨタに40歳で中途入社し、社長になるなどのことは到底不可能だが、菅首相はそれ以上のことを行っている。
菅首相が野党共闘体制構築が不可能になっている状況を見越して9月第一週に臨時国会を招集し、冒頭解散を行えば、自民党が議席を減らしても自公連立政権は維持できる。最悪でも、新自由主義に立つ「日本維新の会」を取り込めば、政権維持は可能だ。その場合、自民党総裁選は延期され、無投票再選が可能になる。これが菅首相の描くシナリオだ。
なお、佐藤氏が日本の医療制度にも詳しいNPO法人医療ガバナンス研究所の上昌彦理事長兼臨床医師の見通しとして明らかにしたところによると、「自宅治療」への大転換による「感染加速政策」も考慮に入れる必要はある(「感染爆発」と「医療崩壊」が東京都、神奈川県など首都圏で本格化する可能性もある)が基本的には、現在のデルタ株主流のコロナ感染5波は、季節要因(日本では初夏と夏に小流行し、冬に大流行する)から8月中にもピークアウトする可能性が濃厚だ。厚労省医系技官も「季節要因」は把握し、菅首相に伝えていると思われる。ひとつの傍証だが、検査人数に左右されない7日移動平均で見た東京都の新規架線者数の前週比は漸減している。その場合は、コロナ禍問題は菅首相にとって有利に働く。
なお、コロナの波は季節要因と変異株要因によって生じるが、基本的には季節要因だろう。ただし、変異株など新型コロナウイルスには先端医学技術で治療法がかなり確立されてきている。そのためにも感染症の「徹底的検査と隔離・保護・治療」という根本原則を放棄した「自宅療養」というのは有り得ない(参考:東大先端研の児玉龍彦東大名誉教授にインタビューした動画https://www.youtube.com/watch?v=V2TJYJTtdTI)。そのためにも、医療体制の抜本的再編・強化が必要だ。
なお、児玉東大名誉教授は変異株要因で感染のサイクルが起きることを強調しておられるが、初夏、夏に小流行、冬場に大流行するという「季節的要因」には触れておられない。季節敵要因に変異株要因が重なると、波の振幅は大きくなる。さらに、人流の流れが大きくなると振幅はより大きくなる。
なお、児玉東大名誉教授が現在で判明している治療方法として下図を示しておられる。そのためにも、保健所を通さずに病院や療養所で治療が受けられるように、新型インフル特措法の改正を含む医療体制の抜本的再編に着手することが重要だ。このほか、mRNAワクチンは重症化を防ぐ「細胞性免疫」の獲得には重要だが、「感染」そのものを防ぐ「液性免疫」の獲得にはあまり期待できない、つまり、mRNAワクチンの接種によって「集団免疫」を獲得することはできないとされている。いずれにしても、天領である保健所を守るために、酸素飽和度95%以下のコロナ感染患者のみ入院させ、それ以上のコロナ感染患者を「自宅療養」という名の「自宅遺棄」に任せるというのは国民皆保険を破壊する暴挙だ。しかし、新聞や電波マスコミはこのことについて触れない。
しかし今後は、政府=菅政権が隠していたデルタ株よりも恐ろしいラムダ株(ペルーなど南半球の南米で感染爆発。致死率8%以上とされる)の市中感染が既に始まっている可能性がある。ラムダ株が主流になって冬場を迎えると第6波が始まり、第5波以上に厳しくなる。菅政権は厚労省医系技官トップの福島靖正医務技官と正林督章保健局長から、「徹底検査と隔離・保護・治療」という感染症対策の基本原則を放棄し、感染経路が最大の「自宅療養」を原則にしたから、「感染爆発推進方策」に大転換したことになる。菅政権が継続する状況になると、日本の経済社会は冬場には極めて厳しい状況に陥る。
佐藤氏はこれを阻止するためには、立民内部で連合に支配されない勢力が大同団結し、社会民主党時代の秘書給与流用事件など過去に問題はあったが、旧立憲民主党政務調査会長 (初代)、同副代表兼国会対策委員長(初代)などを歴任した辻元清美立民副代表を代表にするなど一種の「クーデター」が必要だとしている。また、政権交代の二度の実績があり、連合ともわたり合え、日本共産党の志位和夫委員長とも濃厚な連絡をとることのできる小沢一郎衆院議員を立民の要職にする必要があるだろう。サイト管理者(筆者)としても無謀な提言とは承知しているが、野党共闘の実現にはそこまで危機状態に追い込まれているということだ。
9月第1週に臨時国会を招集、冒頭解散の第ニの理由は、二階幹事長が3Aに対して巻き返しに転じたことだ。二階幹事長は河井克行元法相の東京地裁での裁判が終結(可愛元法相は懲役3年の実刑判決、即時控訴も保釈認められず)したことで、検察側が押収した捜査資料の返却を受けている。佐藤氏によると、この資料はさまざまに粉飾していると思われるが、2019年夏の参院選広島選挙区での大規模裁判の経緯に詳しい二階幹事長としては、安倍前首相の「取り敢えず半分(とり半)」疑惑(公金横領疑惑)も正確に掴んだようだ。
加えて、「桜を見る会前夜祭」で安倍氏は、有権者買収疑惑で検察審査会から「不起訴不当」の判断を下されている。東京オリンピックが開催され閉会したため、若干古くなったが、下図の自民党内権力闘争の構図を再掲させていただきたい。
こうなると、二階幹事長は党内最大派閥である清和会細田派の実質的なリーダーである安倍前首相に対して、大攻勢に転じることが出来る。自ら記者会見で公表しても良いし、「週刊文春」などにもリークできる。二階幹事長が復活したことから、内閣官房長官などの要職を歴任、二階官房長官の腹心である河村健夫衆院議員に対して山口3区で戦いを挑んできた林芳正参院議員は絶対に公認しない。山口3区では林氏の優勢が伝えられるが、無所属での出馬を余儀なくされ、当選したとしてもその後、自民党に復党できるかは微妙だ。佐藤氏によると、二階幹事長の地盤である和歌山三区で二階幹事長に挑戦しようとしている世耕弘成参院幹事長も出馬を見送るようだ。
つまり、佐藤氏によると、昨年9月の安倍首相病気辞任劇(実は仮病の可能性が濃厚。医師の診断書がない)の際には安倍・麻生VS菅・二階という対立構図が浮き彫りになったが、今後の自民党総裁線や解散・総選挙で再び、菅・二階連合軍が息を吹き替えしている公算が大きいというわけだ。「政界一寸先は闇」と言われる情報戦争だ。真正野党側が国民のために政権奪取できる最大のチャンスが到来しているというのに、立民代表の枝野執行部の現状は悲惨だ。立民は重大な帰路に立たされている。