東電の法的整理を拒否する甘利経済産業相の詭弁論法【追記】

市場原理を尊重するなら、東電は膨大な損害補償を行う必要があり、かつ、資産として評価されてきた福島第一原発の5号炉、6号炉も廃炉し、無価値になるから、同社は既に債務超過の状態にあるため、法的整理をすべきである。ところが、管轄の経済産業省の甘利明「大臣」は、「法的整理をすると債務弁済で債権者が優先するため、被害者の救済ができなくなる」としてこれを否定。要するに、株主、債権者(金融機関)、経営者の責任を問わずに、電力料金の値上げや増税によって国民、企業に負担を負わせるつもりである。原子力損害の賠償に関する法律(昭和三十六年六月十七日法律第百四十七号、以下「原賠法」と呼ぶ)と市場原理を全く無視した詭弁である。

企業が債務超過に陥ったら法的整理が当然である。東電が既に債務超過に陥っているのは、明白である。原倍法第3条は、次のように記している。

(無過失責任、責任の集中等)
第三条  原子炉の運転等の際、当該原子炉の運転等により原子力損害を与えたときは、当該原子炉の運転等に係る原子力事業者がその損害を賠償する責めに任ずる。ただし、その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるときは、この限りでない。
2  前項の場合において、その損害が原子力事業者間の核燃料物質等の運搬により生じたものであるときは、当該原子力事業者間に特約がない限り、当該核燃料物質等の発送人である原子力事業者がその損害を賠償する責めに任ずる。

今回の東日本大震災程度の地震・津波は過去にも何度となく生じた歴史的経緯があり、原倍法に定められた予想もつかない「異常に巨大な天災地変」ではない。だから、今回の福島第一原発の事故(これについては、原子力専門家や国会議員が東日本大震災以前に警告を発し、政府と東電に対策を求めていたが、両者は無視した)今回の自己による被害については、東電が責任をもって損害賠償を行わなければならない。しかし、巨額の損害賠償費用がかかることは明白であり、かつ、帳簿上では資産として計上されていた5号炉、6号炉は廃炉にすることが事実上決定されているため、無価値になる。東電は明らかに債務超過の状態に陥っており、(当然のことであるが)市場原理を尊重するならば、法的整理をしなければならない。

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しかし、甘利経産相は債務の弁済で債権者が優先されるため、事故の被害者の救済ができなくなるとこれを否定している。しかし、これは原賠法を無視した詭弁である。原倍法第16条は次のように定めている。

(国の措置)
第十六条  政府は、原子力損害が生じた場合において、原子力事業者(外国原子力船に係る原子力事業者を除く。)が第三条の規定により損害を賠償する責めに任ずべき額が賠償措置額をこえ、かつ、この法律の目的を達成するため必要があると認めるときは、原子力事業者に対し、原子力事業者が損害を賠償するために必要な援助を行なうものとする。
2  前項の援助は、国会の議決により政府に属させられた権限の範囲内において行なうものとする。

現代の市場制資本主義経済の根本原則である市場原理と、原賠法のこの条項を踏まえれば、東電は法的整理し国有化して、政府自らが責任を持って事故の終息と被害者の救済、電力供給事業の継続などに当たらなければならない。しかし、安倍晋三政権と東電はこれを拒否し、責任の所在を問わないまま、電力料金の値上げと血税の投入によってその場をしのごうとしている。原子力マフィアを守るためである。

われわれ日本国民としては福島第一原発事故の終息に対して、応分の負担をすべきことは当然であるが、その前に事故と事後策の誤り(膨大な汚染水の垂れ流しなど)の責任の所在を明らかにしなければならない。東電という法人と株主、貸し手の金融機関、それに、原発を推進してきた歴代の自民党政権、初動態勢を誤ったと見られる民主党政権、誤った処理をしようとしている安倍政権の責任を厳しく追及する必要がある。これに並行して、日本国民はもちろん世界人類の存続のため、世界の叡智を結集し責任をもって事故の終息を図り、併せて現在の原発に代替できるクリーンな新エネルギーの開発を行わなければならない。

未だに戦争責任が明らかになっていない「一億総懺悔」の過ちを繰り返してはならないのである。巨大与党政権だが、正しい対応策を採らなければ矛盾が拡大し、死に絶えた恐竜と化すであろう。なお、安倍政権は、一部政府機関閉鎖や財政の崖っぷちに立たされていることに象徴されるように、新自由主義(ネオ・リベラリズム)=市場原理主義で既に経済的に破綻している米国の猿真似を行なっているに過ぎないのだが、市場原理主義の実態(本質)は、実は市場原理を尊重しない「今だけ、自分だけ良ければいい」のエゴイズム(利己主義)の権化=「悪魔の思想」なのである。

※【追記】
このところ小泉純一郎元首相と小泉進次郎衆院議員親子が「脱原発」を訴えているが、水面下で「原発代替エネルギー」をめぐる世界的な競争が激しさを増していることの象徴だろう。両者とも対米隷属、新自由主義者であるため、警戒を要する。また、東電分社化などの議論も噴出してきているが、原子力マフィアのための議論なのか日本国家、日本国民の議論なのか、真贋を見極める必要がある。

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