安保法案=戦争法案の廃案・無効化に向けての提案

集団的自衛権を否定している日本国憲法違反の安保法案=戦争法案が昨日15日、衆院平和安全法特別委員会(浜田靖一委員長)の裁量で強行採決、「可決」された。この法案の本質は、立憲主義を否定してまで国力がほとんど弱体化した米国の「私兵国家」を目的とするものである。現在の与野党の勢力状況下からすれば、今国会での成立の公算は限りなく大きい。しかし、同法案の廃案に向けてあらゆる努力を行うとともに、成立した場合でも行政訴訟に持ち込み、法執行の無効化をもとめつつ、次期参院選・総選挙において国民の側に立つ政党が政権を奪い返し、同法(現在は法案)の効力を実質無効化する安保法改正案を提出、可決・成立させる必要がある。

平和安全法の全体像は次のようなものである。

  自衛隊法改正案 重要影響事態法案 武力攻撃事態法案
日本の安全 ■グレーゾーン(灰色事態)での米艦などの防護に当たる
■平時に警戒監視中の米軍などに燃料や弾薬を提供する(後方支援は武力行使)
■在外日本人の救助
■日本に重要な影響を与えると政府が判断すれば、地理的制約なく戦争中の米軍など他国軍を後方支援
■朝鮮半島有事以外でも、中東やインド洋、南シナ海などでも実施可能
■日本の存立が脅かされる明白な危険があれば、日本が攻撃されていなくても集団的自衛権を行使
■ミサイル警戒中の米艦や法人輸送中の米艦の防護、ホルムズ海峡での機雷掃海
  PKO協力改正法案 国際平和支援法案 その他の改正案
世界の安全 ■国連決議を経ておらず、国連主導ではない(米国主導の)国際協力にも覇権
■任務遂行の内容として治安維持まで任務を拡大
■武器使用基準を緩和する
■国際社会の平和と安全を確保するため、戦争中の他国軍を後方支援(後方支援は明らかな戦闘行為)
■弾薬の提供や空中給油機での戦闘機への給油も可能
船舶検査活動法、国家安全保障会議(NSC)設置法、米軍行動関連措置法、特定公共施設利用法、海上輸送規制法、捕虜取り扱い法などを改正・制定

 

などが安全法案の骨子である。①集団的自衛権を堂々と認めていること②国連の承認を得ない軍事活動に参加することを公然と認めていること③後方支援活動(ロジスティック)は明らかで、しかも、重要な戦闘行動であることーこの法案が憲法全文の主旨(国際紛争の解決は国際連合を正式の場とし、個別的・集団的自衛権の行使はは暫定的な措置とすること。ただし、日本国憲法は集団的自衛権の行使は認めておらず、歴代の内閣法制局も長い間の検討でこの解釈を結論としていた)、集団的自衛権を否定した憲法9条に反する違憲法案であることは明白である。

これが成立すれば、憲法が形骸化し、立憲主義が否定される。安倍晋三カルト内閣が違憲ではないと強弁している「根拠」は、①「自衛の措置」を認めた1959年の砂川事件判決(田中判決)②国民の権利を守るための必要最小限度の自衛権を認めた1972年の政府見解③冷戦終了後の国際環境の変化ーの3つしかない。しかし、これらはいずれも詭弁学派の論法である。

第一に、砂川裁判は、米軍の駐留が合憲か違憲かをめぐって争われたもので、「集団的自衛権」行使を認めたものではない。米軍の駐留は日米安全保障条約によって認められたものだが、日本は個別的自衛権の行使、米国は集団的自衛権の行使という法理に基づいて成り立っている。そもそも、一審の「米軍駐留は日本国憲法が保持を禁じた戦力に当たる。国際紛争は国際連合が解決の主役であり、日本は憲法の理念に従ってこれに従うべきである」旨の伊達判決を、跳躍上告までさせ、日本の裁判所、行政に内政干渉までして否定させたのは米国、具体的には当時の駐日米大使であったダグラス・マッカーサーⅡ世(マッカーサーの甥)である。マッカーサー駐日大使は、当時の田中耕太郎最高裁判所長官に再三面会して、伊達判決を覆すよう要請しており、最高裁の田中判決自体が憲法違反(第76条3項「すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。)である。

第二に、1972年の政府見解は結論が、「日本は集団的自衛権を有してはいるが(日中・太平洋戦争の侵略戦争で諸外国および国民に多大の被害を与えたことに対する深刻な反省の上に、正当な手続きで成立した日本国民の相違に基づく日本国憲法の精神に則り)、集団的自衛権の行使は出来ない」というものである。これをつまみぐいして集団的自衛権の行使容認の根拠とするのは、無理だ。

第三に、国際環境の変化をあげるが、冷戦終結後の中東地域を中心にしたテロを含む紛争の激化は、9・11テロ、イラク戦争、「イスラム共和国」の横暴はじめ、戦争を欲する軍産複合体の要請に基づく米国の自作・自演とその失敗によるものである。また、同国がロナルド・レーガン政権以来、「悪魔の政策」である新自由主義に基づく市場原理主義政策を採ってきた結果として、同国の経済力・国力が低下し続けていることも忘れてはならない。米国は、その失敗の隠蔽にやっきになっているが、今回の安保法案=戦争法案は、米国に強要された「日米ガイドライン」の法制化である。

なお、安保法案=戦争法案が、日本国憲法全文の精神である「国連中心主義」を捨てていることも日本の存立を脅かすものであることを特筆すべきである。

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ということで、この戦争法案(立法化されれば戦争法)を廃案ないし無効化しなければ、環太平洋連携協定とともに、日本に将来はない。その方法として、

  1. 参議院の安保法制特別委員会において、違憲立法の戦争法案であることをさらに徹底的に明らかにする。同委員会での採決はさせず、「60日ルール」を使って参議院としては否決の意思を表明する。
  2. 衆議院、参議院の特別委員会院長や議員運営委員長、衆院議長(場合に寄っては参議院議長)などの不信任案決議を連発、最後に内閣不信任案決議を行い、参議院に送付されてから60日過ぎた時点から国会の閉会まで徹底して時間を稼ぎ、時間切れ・廃案に追い込む。
  3. 仮に、成立した場合は、直ちに行政訴訟に持ち込み、「法執行停止」の仮処分を実現する。地裁の段階では、これは可能と思う。また、最高裁まで上告、先進国では過去のものになっている「統治行為論」を持ちださせず、明確に「違憲立法」の判決を出させ、自公両党を崩壊に追い込む。
  4. 次期参議院選、総選挙で、一人区・小選挙区では、「オリーブの木」方式を用い、分解不可分な「戦争法案反対・TPP批准反対・原発再稼働反対」を掲げ、かつ、候補者を当選有力候補者に一本化する。共産党にも協力を要請。
  5. 共産党に対しては、「民主集中制・暴力革命・一党独裁制・生産手段の社会化(または国有化)」などのレーニン主義を持ちださなくても、共産主義社会以上の理想社会の実現はかのうであることを(社会)科学的に説明する。

などが、考えられる。

生活の党の小沢一郎代表の今回の衆院安保特別委・本会議での強行採決および廃案・無効化についての宣言を下に引用、記しておきます。

安全保障関連法案の衆議院通過を受けて(談話)

2015年7月16日

生活の党と山本太郎となかまたち
代表 小沢一郎

本日、政府提出の安全保障関連法案が与党の自民党と公明党による強行採決によって衆議院を通過しました。この法案が参議院での審議、採決を経て成立することになりますと、時の政府の判断で日本国憲法の平和主義、国際協調という基本理念や9条の原則も全く無視して、無原則に自衛隊を海外のどのような紛争にも派遣できるようになります。

また、集団的自衛権としての海外派兵問題に焦点が当たっていますが、そもそも個別的自衛権についても拡大解釈する余地が非常に多く含まれています。日本は、戦前の昭和史において、個別的自衛権の拡大解釈によって大陸に兵を進めました。ozawa01つまり、個別的自衛権の無原則、無制限に拡大解釈されれば、非常に恐ろしい結果を招くということは、歴史が証明しているわけです。

今回の法案が成立すれば、限定的といいつつも、集団的自衛権の行使が可能となります。しかしながら、国会審議の過程で、何らの歯止めのないことが明らかになりました。つまり、日本が攻撃されているといないとにかかわらず、時の政府の判断で全く無原則のままに海外へ派兵できるということになってしまいます。このようにいい加減で国民と国の将来にとって非常に危うい法案は、国会を絶対に通すべきではないとの考え方のもとで、私たちは今日の衆議院本会議そのものを拒否し欠席いたしました。

他の野党は討論をしてから退席されました。討論を行うということになれば、より意思表示を鮮明にできるのは採決の賛否になり、採決に加わるということは当然の筋道です。私たちは、これ程いい加減な法案の採決そのものに反対しており、討論が採決の一部であるとの認識から衆議院本会議を欠席いたしました。

安全保障関連法案は、衆議院を通りましたけれども、参議院を通過しなければ法律になりません。もし参議院で否決されるか、60日間意思決定をしなければ、衆議院に戻って再議決になります。従って国民の皆さまの支援さえあれば、まだ法案の成立を阻止することはできます。私たちも廃案を目指して全力を尽くして参ります。国民の皆さまにおかれましても、廃案に向けてこれまで以上に積極的に行動を起こしていただきますようお願い申し上げます。

 

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