11月02日の参院インターネット中継で、日本共産党の仁比聡平(にひ・そうへい)参院議員(福岡県北九州市出身・京大法卒、弁護士、比例区)が今回の安保関連法案=戦争法案について、自衛隊の統合幕僚監部(河野克俊(かわの・かつとし)幕僚長)が作成した秘密文書をもとに、米国の指令(私見では米国の軍産複合体)に基づいて作成されたものであることを明らかにした。中谷元防衛大臣は答弁不能に陥り、仁比参院議員から秘密文書を「贈呈」されるお粗末ぶりを演じた。これは、本サイトでしばしば指摘してきた日米合同委員会が日本国の事実上の「主権者」であることを物語っている。

同日の仁比参院議員の質疑内容は以下のインターネット中継をご覧頂きたい。その前に、仁比参院議員と中谷防衛大臣のやりとりを紹介させていただく。

−−転載開始−−
仁比議員「河野統合幕僚長は、昨年の12月17日、18日に訪米をされました。米統合参謀本部議長や陸海空海兵隊の幹部、あるいは国防省幹部と会談し、日米同盟の深化などについて、意見交換をされたと思いますが、これ、どなたたちと会われたんでしょうか?」

中谷防衛相「はい。河野統幕長は昨年10月に就任をいたしました。昨年12月に訪米をいたしまして、米国防省および米軍幹部と会談、この情勢等について、対談をいたしました。会った人については、ワーク国防副長官、デンプシー統合参謀本部議長、オディエルノ陸軍参謀総長、ブリナート海軍作戦部長、スペンサー空軍副参謀長、ダンフォード海兵隊司令官、スイフト海軍作戦部統幕部長と会談を実施いたしておりますが。

この時につきましては、ガイドラインの見直しの作業とか、その時の進捗状況など、様々なテーマについて意見交換を行いましたが、新ガイドラインや平和安全法制の内容を先取りするような会談を行なったというような事実はなく、公表資料で公表する内容を限定したというご指摘は当たらないものでございます」

仁比議員「今、大臣がおっしゃった今後の進め方という日程表でですね、統幕文書で、8月法案成立とされていることが聞かれもしないのに、大臣がおっしゃるほど国会無視だと。大問題になってきたわけです。私の手元に、独自に入手をいたしましたこの統幕長訪米時の会談の結果概要を報告する防衛計画部の文書がございます。

河野統幕長は、12月17日、オディエルノ米陸軍参謀総長との会談で、オディエルノ参謀長から、『現在、ガイドラインや安保法制について、取り組んでいると思うが、予定通りに進んでいるか? 何か問題はあるか?』と聞かれて、統幕長は、『与党の勝利により、来年夏までには終了するものと考えている』と述べているんですね。これなんですか?

政府は、あれこれ弁明してきたけれど、大臣が分析・研究などを指示したという閣議決定の翌日からさかのぼって、実に昨年12月、夏までに、と述べているわけではありませんか? 大臣はどんな報告を受けているんですか?」

中谷防衛相「はい。そのご指摘の資料につきましては、わたくし、確認をできておりませんので、この時点での言及は控えさせていただきます」

仁比議員「そんな報告も受けずに、さきほど聞かれもしないのに、先取りしてやっているようなことはないなんて、そんな答弁したんですか? それ、虚偽でしょ? 12月のね」

鴻池祥肇委員長「仁比君、質問続けてください」

仁比議員「12月の、総選挙の投票日のわずか2,3日後の訪米です。法案の具体的検討も、あるいは与党協議もなされていないはずのそんな時点に、来年夏までに、と決まっていたんですか? それとも、統幕長は勝手にそんな認識を米軍に示したんですか? どっちですか? 大臣」

中谷防衛相「はい。今、ご質問いただきましたけれども、ご質問をいただいている資料がですね、いかなるものかは、承知をしておりません。その点も含めまして、コメントすることはできないということでございます」

仁比議員「大臣、確認しますけれど、この『統幕長訪米時“の”おける』って、間違っていますけども、『統幕長訪米時のおける会談の結果概要について』という件名の提出年月日、26年12月24日付の報告書、これ存在するでしょう?」

中谷防衛相「あの、突然のご質問でございまして、ご提議いただいている資料がいかなるものか、承知しておりません。防衛省で作成したものか否かも含めまして、コメントすることはできないということでございます」

仁比議員「この内容について、私は数々の疑問がある。けれども、そんなご答弁では、と質問できないじゃないですか。委員長、これ事実を確認して、させていただいて。文書の存在について、確認をしてもらいたいと思います」

鴻池委員長「今の、私への? 私への内容ですか? 何を確認するんですか?」

仁比議員「改めて、申し上げます。この、私が今申し上げている統幕長の訪米に関する報告書、これの存在を確認していただきたい。今、確認をしていただきたい」

鴻池委員長「大臣の答弁では、確認できていないという答弁でしょ? そうでしょ? 止めてください」

−−転載終わり−−

河野幕僚長の訪米(要するに、12月14日総選挙の自公「大勝」を受けての米国軍産複合体の訪米命令)は、まだ第二次安倍晋三内閣が組閣もされていない同月17,18日。この時点で既に米軍側は日米ガイドライン、戦争法案の成立見通しについて河野議長に聞いている。

とすると、日米ガイドラインも安保関連法案=戦争法案も既に骨子が作成されていたことになる。それではどこで作成されていたのかということになる。これは、日米安全保障条約に規定されている日米地位協定の第二十五条で設置が定められている「日米合同委員会」であろう。日米地位協定では、米軍の治外法権が明確に規定されており、「日米合同委員会」も「委員会」とは名ばかりで、米国が日本に対して指令をする機関である。

つまり、日米合同委員会は日本国憲法も超越した存在で、日本の事実上の主権を握っている。ほとんどの国民はこの事実を知らない。しかし、このことは紛れもなく事実であり、日本は未だに米国の「占領下」にある。良く言っても「植民地」である。これは明らかに、民族自決と民主主義、法治主義を謳った国連憲章違反であり、外国軍隊(占領軍=米軍)の早期撤退を明記したポツダム宣言違反でもある。

米軍幹部(核兵器と原子力発電所という「双子の悪魔」(原子力に詳しい早稲田理工学部出身の原子力アナリストの広瀬隆氏)を含む軍産複合体)は河野幕僚長にさらにつぎのように言っている。

−−転載開始−−

仁比議員「この中身について、時間がなくなってきましたので、重大な一つの問題について、伺っておきたいと思います。政府が、沖縄の在日米軍基地の自衛隊との恒常的な共同使用を検討しているのではないかという大問題は、沖縄県民には一切知らされず、国会でたびたび取り上げられてきた問題です。

3月3日の衆議院予算委員会で、我が党の穀田議員が、防衛省の二つの内部文書に基づいて、キャンプハンセン、キャンプシュワブを含めて、具体的に検討しているのではないか?と質問したのに対し、大臣は、『いずれにせよ、代替施設における恒常的な共同使用というのは考えておりません』、総理は、『もちろん報告も受けておりませんし、まったく考えておりません』と答弁しているんですね。

ところが、河野統幕長はどうか? 辺野古への移転やキャンプハンセン、キャンプシュワブでの共同使用が実現すれば、米海兵隊と陸上自衛隊との協力が一層深化すると認識している。これにより、沖縄の住民感情も好転するのではないか、と。こう、この一連の会談のなかで述べているわけです。

自衛隊と米軍のトップ同士では、総理や大臣の国会答弁とは関係なく進めているということなのか? それとも、内局や大臣もこうした統幕長の考えを知ったうえで、3月の国会の答弁をしたというのか? これ、明らかにすべきですよ。大臣、いったいどっちなんですか?」

中谷防衛相「はい。3月での答弁等につきましては、私が答弁した通りですね、共同使用ということについては、政府としては考えていないということでございます。なお、日米間につきましては、恒常的にですね、いろんな問題等については、率直な意見交換は実施をいたしておりますので、また、その内容等につきまして、どのようなものであるかどうか、また確認したうえで、答弁させていただきます」

仁比議員「時間がきましたから、委員長に一つは先ほど来、私が示しております文書の委員会への提出について、理事会の協議をいただきたいということと、それから、ご許可いただければ、今ここにありますので、大臣に手渡したいと思いますが、よろしいでしょうか?」

鴻池委員長「よろしいです」

仁比議員「戦争法案は断固廃案ということを述べて、私の質問を終わります」

−−転載終わり−−

要するに、安倍政権は米国の軍産複合体の指示に従って「猿芝居」をしているだけのことである。

sarushibai

安倍政権の広報メディアに成り下がっているNHK(=日本偏向放送協会)は仁比参院議員の追及を一切しなかったが3日、河野議長の弁明のみ報道している。

−−転載開始−−

統合幕僚長 米軍幹部との会談の文書は確認中[NHK]
9月3日 17時55分

自衛隊トップの河野統合幕僚長は、アメリカ軍幹部との会談内容を記したとする文書について、3日の定例の記者会見で、防衛省内で確認中であり、コメントを差し控えたいと述べました。

2日の参議院の特別委員会で、共産党は、河野統合幕僚長が去年12月、アメリカ陸軍トップとの会談で、安全保障法制の整備について、与党の勝利により来年夏までには終了するものと考えていると発言したとする文書を示しました。

これについて、河野統合幕僚長は3日の定例の記者会見で、「防衛省内で確認中であり、コメントは差し控えたい」としたうえで、「安全保障法制の成立時期は国会の判断によるものと思っている」と述べました。また、具体的な発言内容は確認中だとしたうえで、「安全保障法制を公約に掲げた自民党が圧勝したので、次の通常国会で、与党は成立を目指していくだろうなという認識はあった」と述べました。

一方、共産党が示した文書で、河野統合幕僚長がほかの幹部との会談の中で、沖縄に配備されたアメリカ軍のオスプレイについて、「不安全性をあおるのは一部の活動家だけである」と発言したとされていることについては、コメントを控えたいとしたうえで、「相当数、不安全性を指摘する人がいることは認識している。ただ、自衛隊としては、オスプレイの安全性が確保されていると認識し、導入を決めている」と述べました。

−−転載終わり−−

河野幕僚長の文書の存在を「確認中」とシラジラしい。恐らく、「文書は存在しません」と言って虚偽の答弁を行い、安倍政権もこの線で行くしかないだろう。様々な情報によると、安倍首相は既に今月13日の週に戦争法案強行採決行う腹を固めている。「文書は存在しません」となると、参院戦争法案審議特別委員会は審議がストップするだろう。鴻池祥肇委員長もシラジラしいから、野党の審議拒否の原因は棚上げして特別委で強行採決させ、参院本会議に上程する可能性はある。ただし、国民の反発は猛烈に高まるので、日本国憲法に定めた「60日ルール」を使って衆院で再可決する公算の方が大きいと思われる。従って、しかし、果たして強行採決して強行突破できるのか。

※追伸1 9月4日の戦争法案審議特別委員会で、民主党の蓮舫参院議員の追及により国会が紛糾、中谷元防衛大臣は9月7日の月曜日に「文書の存在の有無について明らかにします」と答弁した。ただ、その前の答弁で「外国との信頼関係を損なう可能性もあるので、(文書の存在・内容の真偽などについての)コメントは差し控えさせていただきます」と言ってたが、果たして今の米国との間に「信頼関係」などあるのか。あるのは、「ご主人様と奴隷との関係」しかないと言うのが、サイト管理者の判断である。

※追伸2 1954年7月1日に設置された統合幕僚会議は2006年3月27日に統合幕僚監部に改組・強化され、防衛大臣の指揮・命令の下という「制約」があるものの、有事・平時、数及び規模を問わず各自衛隊の運用を指揮する権限を与えられている。統合幕僚会議のトップが統合幕僚長であり、自衛隊の最高指導者である。安倍政権の下で2015年6月10日、防衛省内局(背広組)と幕僚監部(制服組)とが同格にされたため、実質的にシビリアン・コントロールの崩壊を追認する形になった。

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