戦争法批判の現職自衛官訴訟で高裁、門前払いの一審取り消し差し戻し

歴代内閣が憲法違反としてきた集団的自衛権を強行容認した安倍晋三政権を批判して、1993年4月に陸自に入隊、施設科の部隊などに所属してきた現役自衛官が、「存立危機事態になれば、(特定部隊以外の他の部隊)にも防衛出動命令が発令されることになる」などとして、訴訟を起こした。一審の東京地方裁判所は、「訴えの利益」がないとして門前払いにしてきたが、第二審の東京地方裁判所はこれを否定して、東京地方裁判所に差し戻した。

東京高裁の裁判長は、杉原則孝裁判長。集団的自衛権を公然と認めた戦争法(平和安全法)では、存立危機事態に限って、自衛隊に対して事実上、米軍の戦争指示に従う「防衛」出動を認めた。この訴訟に対して、東京新聞などによれば、安保法が(強行)制定されたことを踏まえ、存立危機事態と内閣(安倍晋三政権)が解釈すれば防衛出動が発令されるとしたうえで、「(防衛出動命令が)特定の戦闘部隊に限られる保証はない。後方(支援)業務も担う部隊も含め、全ての現職自衛官は命令の対象となる可能性が非常に高い」として、戦時体制になることを示唆。

そのうえで、憲法違反として戦争法に批判の現職自衛官が命令に従わない場合、「社会的非難を受けたり(マスコミによる非国民扱いキャンペーン)、懲戒処分や刑事罰を受けることになる」と指摘。「(憲法に定めた基本的人権の尊重、思想・信条の自由と生命権の保証など)重大な損害を予防するための提訴は適法」として、一審の門前払い判決を退けた。

戦争法が、憲法や法律の専門家からも違憲の疑いが濃厚との判断が定着している現在、戦争法自体に疑義があり、杉原高等裁判所裁判長の判断はしごく妥当である。防衛省では戦争法自体が(違憲であるということが)訴訟になっている訳ではないと強弁するが、本訴訟では、戦争法の違憲性について触れなければ(判断しなければ)正しい判決は期待できない。安倍政権の下僕である最高裁では戦争法違憲の判断を下すことはあり得ないが、日本国憲法は「(裁判官に対して)良心にのみ拘束される」としているので、地方裁判所ではその判断を下すことが可能である。東京地方裁判所の裁判長をすげかえて、現役自衛官の訴えを支持するべきだ。

そうした民主主義を勝ち取るための地道な努力をするとともに、平和安全法制=戦争法の違憲性を国民に広く周知するとともに、戦争法違憲訴訟も起こすべきである。そうして、安倍政権を退陣に追い込み、民主主義を確立するため、現行日本国憲法の非民主主義的な部分(例えば、天皇の国事行為としての衆議院解散項目の削除や内閣総理大臣=首相による最高裁長官の任命部分など)を改憲する必要がある。

※まやかしだが、存立危機事態とは、日本と密接な関係にある他国(事実上、米国)への攻撃によって日本の存立が脅かされる場合であり、その場合に、①存立危機事態②国民を守るため他に適当な手段がない②必要最小限の実力行使にとどまる−の「武力行使の3要件」を満たせば(満たすと内閣が判断すれば)、集団的自衛権を行使することができ、自衛隊に武力行使発動命令が下されるというのが、平和安全法=戦争法の要諦である。

 

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