日銀の黒田東彦総裁の再任案が国会に提示された、副総裁候補には現日銀理事の雨宮正佳氏と早稲田大学教授の若田部昌澄氏が提示された。1998年に大蔵省出身の松下康雄総裁が大蔵省・日銀接待汚職事件の責任を問われて任期途中で辞任を余儀なくされたために、日銀総裁の日銀と大蔵省(現財務省)の「たすきがけ人事」が崩れ、財務省事務次官からの日銀総裁意人事が不安定になっていることを危惧している財務省の意向を忖度し、同省への「貸し」を作ることが狙い。黒田総裁・岩田副総裁の、カネを刷りまくって市中に大量に流す「異次元量的金融緩和政策」の金融政策の是非はそっちのけになり、自公の多数横暴で、財務省(元大蔵省)としては10年連続の同省出身者の日銀総裁が誕生する。しかし、この人事によって安倍晋三自公政権崩壊の「最後の鐘」がなり、「収奪者が収奪される」ことになろう。

黒田日銀総裁は、長く続いているデフレ不況の克服策を金融政策による「デフレ解消」に求め、そのために、消費者物価上昇率を安定的に2%程度まで引き上げることに全力を挙げるとし、市中の国債を大量に買い上げることによって、カネをばらまく異常な量的金融緩和政策を開始すると勢い良く宣言し、「黒田バズーカ砲」を打ち放ったともてはやされた。市中にばらまかれたカネが、沈滞している企業の設備投資需要や家計の消費需要を回復させることを信じている(かどうかは分からない)との「信念」からだ。

ところが、消費者物価上昇率の引き上げは実現できなかった。ひとつは、市中では設備投資需要も個人消費需要にカネが回らず、結局、市中金融機関は多少とも利子のつく日銀の当座預金口座への預金高を増やしたことがある。にそのため、日銀は市中銀行が日銀に預ける当座預金の金利をマイナスにして、日銀への資金回避を抑制する「マイナス金利政策」に踏み切った。それでも、消費者物価上昇率は安定的な2%からほど遠いのがこの5年間の黒田日銀精査の現状である。

上図は時事通信社による近年の消費者物価上昇率のグラフで、傾向的に上昇してきたかのように見えるが、注意しなければ、時期的要因によって物価変動の激しい生鮮食品を除いたものである。加えて、エネルギー価格も為替の影響によって大きく変動する。黒田日銀の金融政策は実質的には円安を意図的に引き起こす円安誘導政策、別の名前を「近隣窮乏化」政策になり、輸入原材料価格を引き上げる結果を招いた。

総務省統計局によると、変動の激しい生鮮食品とエネルギー価格を除いた全国照射物価上昇率は2015年の1.4%から2017年の0.1%と逆に下がり続けている。黒岩日銀政策は完全に破綻したことは明確である。欧米諸国の金融緩和政策は次第に量的金融緩和政策の失敗を認め、潜在的な悪性インフレーションの根因になってきたことから、金融政策を次第に引き締めの方向に移している。これが、1月下旬から2月にかけての米国、日本の株式市場では、NYダウが1000ドル安になり、翌日の日経平均も1000円安になって、株式・資本市場(長期金利市場)に異変が本格化し始めた証拠である。

日本経済の長期デフレ不況は、国内需要の大きな不足超過から来ているというのが、その根本的原因だ。そのためには、金利上昇を引き起こさないやり方での国内需要の大幅な換気策、つまり、ケインズ政策が有効であり、かつ、必要であった。しかし、黒岩日銀政策の量的金融緩和政策はケインズ政策の「無効性」を唱えた(念仏に等しい)新古典派自由酒着に基づくものであったから、完全な失敗の憂き目に遭ったのも当然である。

日銀は「黒田バズーカ砲」依頼、超低金利の国債、つまり高価格の国債を買い続けて、大量の負債を抱え込んでしまっている。長期金利は政策で食い止めることは出来ない上昇基調に転じている(国債価格は下落。無理に抑制しようとすればハイパーインフレーション、国債価格・株式価格の暴落を招く)から、膨大な負債を抱え込んでいるが今後、巨額の評価損が発生するのは必至である。要するに、金融危機の最後の歯止めに成る日本銀行が不良債権銀行に堕するのである。

なお、デフレ不況が克服できない中で、実質賃金は低下の一途だ。

2018年は政治・経済情勢の大きな転換点になる。「新自由主義的資本主義の最後の鐘がなる。収奪者が収奪される」ということになる。国民の叡智と行動を結集して、この状態から真性民主主義を再建していかなければならない。

 

 

 

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