日本一新の会・代表 平野 貞夫妙観

○平成初期の『政治改革』を忘れてはならない!

10月16日(木)、国会が久しぶりに注目されていた。内閣改造で安倍首相が鳴り物入りで入閣させた『輝ける女性』5人の閣僚のうち2人が「芝居見物」と、「祭りのうちわ」で野党から追及されていたからだ。

同日、東証1部に「リクルートホールディングス株」が上場され、公開価格を230円上回り、終値が3330円で、時価総額約19兆円という今年最大の上場となった。峰岸社長は記者会見で「社会にご迷惑をおかけした。約30年を経て本日を迎えられたのは、皆さまのご支援のたまもの」と感謝の意を表した。30年の歳月を経てリクルート社は見事に甦ったが、国を司る政治は劣化の坂を転げ落ちている。

この「社会に迷惑をかけた約30年前」のことを知らない政治家も大勢いるようだ。いわゆる『リクルート事件』のことである。昭和の末期、リクルートの関連会社であり、未上場の不動産会社、リクルートコスモス社の未公開株が賄賂として譲渡された。贈賄側のリクルート社関係者と、収賄側の政治家や官僚らが逮捕され、政界・官界・マスコミを揺るがす、大スキャンダルとなった事件である。同じ時期の〝消費税国会〟で発覚し、竹下首相の退陣につながった。同じく、強い関与が疑われた中曽根元首相も自民党を離党し、戦後最大の贈収賄事件といわれた。

この事件が直接のきっかけとなって、平成初期の政治改革が自民党良識派から提起されたのである。

20日午後、女性閣僚のダブル辞任劇のテレビ中継を観ながら、私は、政治改革で自民党から散々こき使われた時代を思い出していた時だった。東京新聞の『こちら特報部』のA氏から突然電話があった。A氏は、私の現職時代を知る数少ない現役記者で海外勤務から戻ったばかりだという。「このダブル辞任劇に、どんな見解をお持ちですか?」とのこと。要するに「あれだけ政治改革を掲げていたのに、何もできていないじゃないか」との意もあり、久しぶりなのでいろいろと話をした。A氏がまとめて21日に報道したのが次のコメントである。

「政界も財界も時代が逆戻り? 衆院事務局や参院議員時代に政治改革に取り組んだ、政治評論家の平野貞夫氏は『政界も財界も、時代が逆戻りしている』と嘆く。うちわだとかそうでないとか、政治資金の公私混同疑惑とか政治家やその周辺が幼稚化している。財界も法人税率引き下げと献金呼び掛けを、セットで考えているようにみえる。これでは今後、税や社会保障関連で痛みを求めた時に国民は納得しないのではないか」

これだけの話ではなかったが、紙面の都合もあり『こちら特報部』のまとめとしてはこんなものだろう。平成初期、衆議院事務局で、政治改革で苦労した私としては言っておきたいことがある。昭和末期からの自民党には、伊東正義・後藤田正晴という良識派がいた。伊東はリクルート事件で辞任した竹下登の後継総裁に推されるも「本の表紙を変えても、中身を変えなければ駄目だ」と就任を頑なに拒否した。

その後後藤田正晴に乞われて自民党政治改革本部長に就任した。その指導を受けた羽田孜・小沢一郎が志を継承した。念のために書き置くが、海部俊樹は理念なき改革者で、武村正義は権力を得るために改革を利用する政治家であった。

 昭和末期や平成初期の指導者はリクルート事件や米ソ冷戦終結を深刻に受けとめ、
1)政権交代を可能にする選挙制度 
2)政治資金の透明化 
3)国会運営の近代化 

などの改革なくして日本の存立はない、との信条を持っていた。これには財界も労働界もマスコミも協力した。平成時代になって政権交代が行われるようになったが、政権から離れることで利権を失うことになると、理性と良識を失った政治家たちが改革を逆戻りさせた。現在の、自民党・公明党の議員たちだ。

さらに、本格的改革が実現する状況になると、非良識派の権力が官僚とメディアを動員して、真の改革者を日本社会から謀殺しようとした。それが小沢一郎―陸山会事件であったことはいうまでもないだろう。

私は「芝居見物」と「祭りのうちわ」で辞任した閣僚の、法的責任を論ずるつもりはない。ふたりの記者会見を聴くに「芝居見物」の感性は他人事の域を出ていない。「祭りのうちわ」は東大の教育に重大な問題があることを示すものだ。わが国で真の改革ができない原因が国民の目に見え始めた。平成時代も30年近くになった。内外ともに過去にも増して深刻な問題が山積している。平成初期に、何故改革が必要であったかその意味をもう一度国民全体で考える時である。

 ○日本国憲法と「国連の集団安全保障」(13)

(平成5年2月、小沢調査会提言の要点)
 はじめに
●国際情勢認識と日本の立場
  1)冷戦の終結と国際秩序の行方 
  2)日本の立場 
  3)湾岸戦争の教訓

●安全保障に関する日本の持つべき理念
  1)積極的・能動的平和主義 
  2)憲法九条と国際平和の維持・回復 
  3)経済的寄与の重要性 
  4)人的協力の推進

●安全保障に関する日本の果たすべき役割
  1)世界の平和秩序維持のための活動 
  2)人的協力のための条件整備 
  3)日米安保条約の維持 
  4)アジア地域の平和への寄与

●自衛隊の国連軍参加に関する政府の憲法解釈
  (内閣法制局長官の答弁、質問主意書への答弁書の紹介)

提言の全文は長文のため、主な事項を参考として掲載した。

平成初期の自民党が、ポスト冷戦時代に日本の国際的役割と安全保障について、如何に真剣に研究していたかをご理解頂きたい。この提言で問題となったことは「国連平和維持活動」とか「国連(国際)集団安全保障」への参加が、憲法上可能という提言に対して、それは「解釈改憲」との批判であった。

この点についての提言の趣旨は、
1)政府の憲法9条解釈は、自衛以外の実力行使、あるいは集団的自衛権に基づく実力行使は認められていない。(これは順守)

2)国連が国際社会の平和秩序の維持のため、必要な措置を担保する「国連安全保障」を、憲法前文や第9条は国連の設立や憲章の精神からしても「集団的自衛権」とは別の理念としている。「国連集団安全保障」に参加することは、憲法のこれまでの運用になかった事態への「新しい運用」であり「解釈改憲」ではない。国連軍への参加も憲法上可能である。安保理決議にもとづく多国籍軍への後方支援も一定の条件の下で憲法上できるが、武力行使的なものに参加することはできない。

 これに対し、自民党内で種々の立場での異論が提起された。
 先ず、栗原祐幸憲法調査会長が、提言が憲法改正論を大々的に論じると期待していたものの、憲法改正しなくても対応できるとの提言に、失望と批判を行った。一方、後藤田正晴元官房長官は、「PKO協力関係法も憲法をなし崩しに拡大解釈したものだ。さらに、その上に世界の紛争に関わるのか」と批判した。

ほとんどのマスコミ・有識者は、「国連集団安全保障」と「集団的自衛権」の区別が理解できず、「憲法違反」と批判した。生半可な理屈屋は、「国連集団安全保障」のために自衛隊の海外での武力行使が可能になれば、状況次第では「集団的自衛権の行使」や「海外派兵」が実質的に認められることになる。憲法の拡大解釈を超えた解釈改憲だと批判した。社会党や公明党のなかには、自衛隊を別組織として、国連協力することは検討すべきとの前向きの意見もあった。

 この小沢調査会の提言は、その後、宮沢総裁に答申として提出されて、自民党の基本方針に採用するかどうかの問題に移った。冷戦後の、新しい平和秩序の構築や日本の役割について国民的合意を形成するための大胆な問題提起であった。しかし、4ヶ月後の平成5年6月に、政治改革をめぐって宮沢内閣不信任案が、羽田―小沢グループの賛成で可決された。羽田―小沢グループは自民党を離党し新生党を結成したために、小沢調査会は消滅し答申は棚上げとなった。

その後、小沢調査会の提言は小沢一郎氏の政治グループの政策に引き継がれていく。この小沢調査会発足の原点となったのは、平成3年1月31日の湾岸戦争の真っ只中で、小沢氏と私の議論の中から生まれたことが懐かしい。

○平野 2020年頃には国連に世界連邦的機能を持たせ、国連警察軍のような国際秩序維持を保つようにしないと、世界は破滅する。米国のノウハウと日本の資金を中心に構想できないか。本来、自衛隊もそれに含ませることが憲法の趣旨ではないか。

○小沢自民党幹事長 自分は憲法の平和原則は大事だと思う。その平和原理の中でどうやって国の安全を保つかだ。国連の警察軍なら本来の自分の発想。その方向で自民党を説得してみよう。

この議論から『護憲開国論』のレポートがつくられ、湾岸戦争対策となった。そして小沢調査会が発足し、1993年に提言が行われた。今年は、2014年、2020年までにあと6年となった。地球上には〝イスラム国〟問題をはじめ、随所で硝煙が立ち上っているが、小沢氏が政界から排除され、安倍自公政権の行方は、確実に「世界の破滅」に向かっていると感じるのは、私ひとりではないだろう。
(続く)

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