憲法改悪と立憲民主党代表選ー立憲は分党し、「野党共闘派」はれいわと合党も

軍事評論家の半田滋氏が先の総選挙の結果を受けて自公連立政権と日本維新の会(維新)、国民民主党(国民民主)が協力して憲法改悪への道を驀進し始めたことを警告している。こうした状況の中で、総選挙で惨敗した立憲民主党では代表選が行われている(投開票日11月30日)。立憲の国会議員の中にも日本共産党を含む野党共闘を行ったことが惨敗の原因と思っている議員が少なからずいる。半田氏の指摘によっても野党共闘は一定の効果を上げたと指摘しているし、政治経済評論家の植草一秀氏も枝野幸男前代表が野党共闘に消極的で最終的には野党共闘を否定したことが惨敗の原因だと断定している。代表選の結果にかかわらず、立憲民主党は「野党共闘反対派」と「野党共闘強化・深化派」に分党すべきだ。朝日出身のフリージャーナリスト・佐藤章氏の指摘するように「れいわ新選組」と合党し、「れいわ民主党」を結成するという「ウルトラC」もあり得る。

新潮社によると、半田滋氏は1955(昭和30)年栃木県宇都宮市生まれ。下野新聞社を経て、1991年中日新聞社入社、現在まで東京新聞編集局社会部勤務。1993年防衛庁防衛研究所特別課程修了。1992年より防衛庁取材を担当し、自衛隊の権限や活動について、新聞や月刊誌に論考を多数発表している

半田氏はYoutubeの番組「デモクラシータイムス」に定期的に出演しているが、11月17日(水曜日)には「自衛隊明記 緊急事態条項~迫る憲法改正」と題するインタビュー番組に登場、岸田文雄自公連立政権とその補完勢力である維新、国民民主の連携で憲法改正=改悪の動きが加速していることを警告している(https://www.youtube.com/watch?v=zJuqFJAUodE)。動画のキャプチャ画面を挙げて、その主張をたどってみたい。

まず、今回の総選挙結果について。野党共闘で小選挙区の統一候補になった立憲民主党は議席を伸ばし、接戦区も多かった。しかし、全国の比例ブロック区では野党共闘で戦った他の野党よりも小選挙区での得票数よりも減らした。小選挙区で他の野党が候補者を降ろしその分、比例ブロック区に力を入れたからやむをえない部分があるが、それにしても比例ブロック区での伸び悩みはひどい。

立憲民主党は、比例ブロックで小選挙区での得票数より570万票ほど減らしている。躍進した維新や議席数を伸ばした国民は比例ブロックで票を積み重ねている。れいわも善戦した。日本共産党は同党からの小選挙区候補を降ろし、立憲を支援したが、比例ブロックでの得票数が伸び悩んだ。立憲民主党の支持者のうち、日本共産党との共闘の意味を理解できない者は維新の正体を理解できずに維新に投票し、野党共闘に賛同する支持者は投票を棄権したものと思われる。本来は本サイトで述べたように、「オリーブの木」方式を採用、統一名簿を作成するべきだった。小選挙区への出馬を辞退した野党候補を優遇する措置は必要だっただろう。さて、小選挙区での立憲候補者は検討している。次のキャプチャ図がそれだ。

小選挙区では、31の小選挙区で1万票以内の接戦に持ち込めた(うち、4選挙区では1000票以内の大接戦区)。「たられば」の話になるが、31小選挙区で競り勝っていれば、立憲の小選挙区での当選者は実際の57人(57議席)を大幅に上回る90人(90議席)に及ぶことも可能であった。このため、自公側は「野党共闘」の威力を実感としてかなり恐れたはずだ。この接戦区で勝利するため、自公側は旧い「立憲共産党」という誹謗中傷を多用し、逃げ切ったものと思われる。

接戦区を落とした最大の要因は、枝野前代表(当時)が、米国のディープステート(闇の帝国:軍産複合体と多国籍金融資本・企業)が立憲民主党と日本共産党との共闘強化を恐れ、その指示で野党分断工作を展開してきた連合の神津里季生前会長、芳野友子会長に押され、最初から野党共闘に消極的だったことがある。最後には枝野氏が野党共闘に反対する見解を述べたことにある。

少し回り道になるが述べさせていただくと、本来は、非常に遅れたが「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合(市民連合)」が仲介して野党と市民連合の政策協定を結んだから、この政策協定を前面に押し出し、野党共闘側の統一政策を協力に主権者国民の前に打ち出すべきだった(https://shiminrengo.com/archives/4336https://www.jcp.or.jp/akahata/aik21/2021-09-09/2021090901_02_0.htmlhttps://www.jcp.or.jp/akahata/aik21/2021-09-09/2021090901_04_0.html)。

共通政策は、①憲法に基づく政治の回復(憲法改正=改悪の阻止)②科学的知見に基づく新型コロナウイルス対策の強化③格差と貧困を是正する(新自由主義経済政策から決別する共生の経済政策の展開。消費税率5%以下の引き下げが最重要で、消費税率ゼロ%、制度そのものの廃止を訴える候補がいても良かった)④地球環境を守るエネルギー転換と地域分散型経済システムへの移行(原発ゼロと再生可能エネルギー体制への抜本的転換が最重要)⑤ジェンダー視点に基づいた自由で公平な社会の実現(男女の賃金格差の是正が最重要)ーだが、主権者国民にも分かりやすいように、サイト管理者(筆者)が小括弧で示した内容を明確に訴えても良かった。

また、日本共産党から閣内に入る野党連立政権と、同党が閣外から共通政策実現に向けて協力する野党連合政権の違いを分かりやすく説明しておれば、「立憲共産党」攻撃に対して対処することも可能だったはずだ。日本共産党としては当面、歴史的事実であったソ連型、中国型の共産主義とは異なる民主的な先進国型の市場制資本主義経済体制の実現を目指しており、同党独自の先進国型の民主的「科学的社会主義」について言及しておけば良かったはずだ。

ところが、立憲内部では枝野代表が最終的に次のような発言を行い、野党共闘を否定した(植草一秀氏のメールマガジン第3084号「第二自公と反自公は別政党が当然」)。福山哲郎幹事長もこれを諌めなかった。

「「野党共闘」というのは皆さんがいつもおっしゃっていますが、私の方からは使っていません。あくまでも国民民主党さんと2党間で連合さんを含めて政策協定を結び、一体となって選挙を戦う。共産党さんとは(共産、社民、れいわの3党と一致した政策に)限定した範囲で閣外から協力を頂く。」

枝野氏は、共闘の対象は国民民主と連合であって、共産、社民、れいわとは共闘しないと述べていた。10月23日に都内で行われた市民団体のイベントでも、立憲民主党の枝野幸男代表が共産党の志位和夫委員長との記念写真撮影を拒絶した。

これでは、自公勢力が最も恐れる野党共闘体制を立憲代表が自ら否定したことになる。れいわ新選組の公式チャンネルでは、愛知10区から重複立候補したれいわの安井美沙子候補(元民主党山陰議員)が比例東海ブロックで当選したものの、選挙区での得票率が10%に達しなかったことから、公職選挙法の規定により議席を失った。小選挙区では日本共産党からの支援は受けたものの、立憲側からひどい仕打ちを受けたそうである(https://www.it-ishin.com/wp-admin/post.php?post=26854&action=edit)。要するに、枝野代表、福山幹事長、泉健太氏ら執行部が日本共産党など他野党の支援を受けながら、恩を仇で返すように「野党共闘体制」を破壊した。その結果、そのむくいを受けて立憲民主党が惨敗したのである。

「天網恢恢疎にして漏らさず」とはこのことである。ただし、枝野氏は辞任しただけで、その責任を全く取っていない。むしろ、代表選を通して立憲民主党を「傀儡政党」化しようとしているようだ。

立憲民主党の代表選がひっそりと行われているが、これらの根本問題を総括しない代表選は真の代表選とは言い難い。「意見が異なっても分裂を避けるべきだ」というのは野合に過ぎない。立憲民主党の代表選には、逢坂誠二元首相補佐官(62)、小川淳也元総務政務官(50)、泉健太政調会長(47)、西村智奈美元厚生労働副大臣(54)の4人が出馬しているが、「野党共闘」の失敗の原因を正しく総括し、立憲が第二自公の道を歩むのか、反自公(+反維新・国民)の道を歩むかをはっきりさせる必要がある。

なお、各候補の推薦人(衆参の国会議員)は合計90人で候補者4人を加えれば、立憲民主党衆参両院議員の7割が態度を表明したことになる(https://digital.asahi.com/articles/ASPCM46VPPCMULEI002.html)。れいわの山本太郎代表と近い馬淵澄夫衆院議員(奈良一区)は積極財政を唱える泉候補(国民民主党から移籍)の選挙対策委員会の顧問になり、同候補を推薦している。

11月19日の立憲民主党代表選挙出馬共同記者会見
11月19日の立憲民主党代表選挙出馬共同記者会見

 

意見が異なれば、いさぎよく分離・分党の道を選択するべきだ。佐藤章氏も一案として指摘しているように、近い将来は馬淵澄夫衆院議員(奈良一区)や森ゆう子参院幹事長らが20人規模の反自公議員とともにれいわ新選組と合党し「れいわ民主党」を結成するのも一つの道である。反自公(+維新、国民)に退治する政党と主権者を意識した市民との連合が結成されなければ、今の衆参の議席状況では簡単に憲法改正=改悪が実現してしまう。半田氏も次のキャプチャ図が示すように強く危惧してしまう。

れいわ新選組も同じ考え
れいわ新選組も同じ考え

半田氏によると、現在の憲法に行政機関が盛り込まれているのは、第90条「国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない。②会計検査院の組織及び権限は、法律でこれを定める。」で規定されている会計検査院だけである。自衛隊が第九条に明記されれば、それだけ権威と権力が増す。かつ、「緊急事態条項」が盛り込まれれば、「利権ムラ独裁政権」を経て「軍事独裁政権」が樹立されてしまう。これを阻止することができるかどうかは、ひとつの重要事項として立憲民主党の行方にかかっている。


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