「日本一新運動」の原点(287)ー第三次安倍最凶内閣

日本一新の会・代表 平野 貞夫妙観

〇第3次安倍改造内閣が直面する2つの『大凶』!

10月9日(金)の昼間、ラジオ日本の「マット安川のずばり勝負!」に出演した。テーマは「第3次安倍改造内閣発足、これが今の日本最強か?」であった。冒頭発言で、「最強」は「最凶」の誤りではないかとパンチを入れた。司会の安川氏が驚いて理由を聞く。

「来年7月の参議院選挙までに、安倍内閣が倒れる2つの重大問題がある」と警告すると、スタッフ一同に緊張が走った。初めて入閣する閣僚もあり、お祝いムードが10ヵ月以内に内閣が消えるという暴論に安川氏も身構えた。

安倍内閣が倒れる可能性のある「2つの重大事件」のひとつは、「大筋合意」と報道されている『TPP問題』だ。合意には大筋も小筋もない。合意していないのに合意した恰好をせざるを得ない「米国」と「日本」のために、日本のマスコミと談合した報道である。

オバマ大統領側では、言い出しっぺとしての面子と強烈な反対勢力を「偽装合意」という世論で押し切ろうとする狙いだろう。かつてオバマ大統領のもとで国務長官を務めた、クリントン女史まで大統領選のため「反対」を表明した。米国議会でTPPが承認される見通しは真っ暗なのである。

安倍首相にとってはアベノミクスの失敗をカバーする最後カードで、協議の再延長とか、見通しつかないなんて「許して頂戴」という心境であり「大筋合意」という用語を非常手段として使っているに過ぎないのだ。甘利担当大臣の冴えない顔を見るのが気の毒ですらある。米国では事実上の大統領選が始まっている。来春になると、TPP米国議会は「不承認」が事実上固まる。その時期、アベノミクスは命運が尽きるだろう。

第2の重大問題は東京五輪大会の開催が絶望となる可能性が出てきたことだ。新国立競技場建設とか、エンブレム問題ということではない。東京オリンピック誘致の際「アンダーコントロール」できていると安倍首相が国際公約した「福島原発事故」について、IOC側が強い関心をもって、日本の専門家から情報を集めていることだ。ラジオ日本に出演した九日、東京新聞一面トップで、「都心の川に残る汚染」の見出しが躍っていた。首都圏の河川や湖沼の底、海岸近くの海底のホットスポットに高濃度のセシウムがあると言われている。徹底した調査と結果の公表が必要である。

さらに深刻なことは、福島原発で再臨界が起きているとの情報である。一部の報道によれば、『日本原子力開発機構』が、群馬県高崎市に設置している放射性核種監視観測システムで昨年12月から福島第一原発の再臨界を疑わせる放射性元素ヨウ素131とテルル132が検出され続けている」とか福島の現地で水蒸気の放出や閃光など再臨界を傍証するような現象が伝えられている。

再臨界の有無を検証することが緊急課題だ。安倍自公政権は、これらの問題に誠実に対応すべきである。特定秘密保護法を被せて、IOCにも国民にも虚偽の情報を流したり、事実を隠蔽するようなことをしてはならない。真実を明らかにして東京五輪に世界の人々が安心して参加できることを証明すべきだ。その期限は来年前半となろう。この問題が第3次安倍改造内閣の命運を決めると思う。

さて、安倍内閣は来年7月まで続くかどうかわからない、なんて乱暴な話をしている間に、聴取者からメールが届きはじめる。その中で一番多かったのは、河野太郎新国務大臣の「原発批判の封印」への怒りであった。「どう思うか、意見を言え!」と私に迫る「河野太郎君のこれまでの姿勢を私は高く評価し、将来のトップリーダーと期待していた。こんな変心は許されない」として、私が太郎氏のために50年間秘密にしてきた河野家の不都合を暴露した。

昭和40年7月、祖父の河野一郎氏が病死する。その年の暮れ、私は河野派幹部だった園田直副議長の秘書となる。実弟の河野謙三参議院副議長と某衆議院議員の3人が河野派と河野家の後始末をする。衆議院事務局から出ている秘書が口が固いというので私が使われた。当時、食糧庁に麻袋を独占的に納入していた企業に「東京資材」があり、河野一族の金蔓会社だった。一族に横領背任容疑があり、司直が動き出し、その始末に8億円(現在では約30億円=日銀指標)必要で、大阪の財界人から出して貰いさまざまな工作で河野一族から罪人を出さないで済んだ。これが成功していなければ河野家から政治家を出すことは難しかったと思う。洋平氏や太郎氏が恰好よく政治活動できるのは、影で苦労している人たちが河野家の不都合を表に出さなかったからだ。

〇「安保法制廃止のため憲法を学ぼう 3

日本国憲法第9条の根源を知るためには単に戦勝国が敗戦国に押しつけた「制裁思想」との発想を棄てなければならない。それだけの根拠ならば、70年近く徹底した「戦争放棄」の第9条が、憲法の基本原理として生き続けるはずはない。

戦後70年の間に、〝憲法九条を改正して再軍備を〟との圧力が米国からも再々あったし、国内にも強い戦前回帰の思想と運動があった。それが実現する可能性もあった。それができなかった理由にはいくつもの要因があると思う。「戦争反対、憲法を守れ」との護憲運動が大きな役割を果たしたともいえるが、私はそれだけではないと思う。 

日本人の深層心理(集団無意識)の中に、「人間の悪魔性から発する戦争への抵抗」が生き残っていたのではないか。安倍自公政権が人類社会の条理を無視し「解釈改憲」までして「安保法制」を成立させたことで憲法9条を日本人の「生存根拠」とする潜在意識が顕在意識に変化したと思う。否、顕在意識としなければならない課題である。

10月11日の朝日新聞読書欄に『第2次世界大戦 1939―45』(アントニー・ビーヴァー著)が紹介されていた。ポイントをひと言で言えば、「第2次世界大戦は第1次世界大戦を引きずっている。第2次世界大戦の結論は、人類が自らの悪の部分を出し切ったということだろうか」と保阪正康氏の解説で締めていた。私はこの考えに共感を持っている。

10月8日、憲政記念館で開かれた「オールジャパン平和と共生」主催の総決起集会で、「私自身、憲法9条について不勉強だった。日本人の戦争犠牲者310万人の霊性に対する敬意と思っていたが、よく考えると第1次、第2次世界大戦のわずか10年間で、3千万人を超える全世界の戦争犠牲者の集団無意識(霊性)を根拠にしたものだと思うようになった。

憲法9条を発想し審議・制定に至る昭和20年秋から昭和21年11月の公布の時期、世界中の指導者、ルーズベルトやチャーチル、スターリンも、そしてマッカーサーも真剣に戦争の悪魔性への対応を考えていたのではないか。それがわずかの間に悪魔の虜になる。21世紀なっても多くの日本人の心の中に、この思想が残っていたのは貴重なことだ。9条を守り、発展させてこそ、日本の発展がある」と挨拶したが、「安倍政権打倒!」のスローガンの前ではほとんど反応はなかった。

日本人は、太古の昔から「戦争の悪魔性」について、他の民族とは異なった感性を持っていたのではないかと私は思う。それは日本の地政や歴史を背景にしたもので、日本民族が得意とする、可視することのできないものに反応できる感性である。9条問題は、そういう視点での検証が必要ではないか。

日本列島の文化構造はその根底に独自性といえる成熟した縄文文化の1万年を超える分厚い層がある。それは饅頭でいうなら真ん中の「あんこ」の固まりである。これはノーベル賞に輝いた、「ニュートリノ」のような不思議な性格を持つ。その上に稲作・金属に始まる2500年程度の渡来弥生文化が肉の部分になる。その上にペリー来航以後の欧米文明がたかだか160年の薄皮のように重なっているといえる。

欧米文明の急流は殺傷能力の高い武器を世界に流布させ、激しい戦争の時代に突入させた。その原因は人倫の道を外れ、我欲の暴走を続ける悪性資本主義にある。安倍政権が喧伝する『新自由主義』とはその究極であり、アベノミクス、TPPは格差を助長・拡大する仕組みでしかない。

人間が生み出した原子力を人間が制御できない。この不確実な時代こそ、争いを好まず、過剰な蓄積を求めず、自然と調和して侵さず1万年も続いた縄文文化に学ぶものは多い。憲法9条を発展させることは、そのような文化社会を創造することを前提にして可能と思う。 

憲法を考える場合、成文法としての「日本国憲法」の成立過程も大事だが、日本国の成り立ちの中にある『根本憲法』が何かを知る必要がある。現憲法が占領軍の押しつけとか、別名「マッカーサー憲法」であっても、それを受け入れ運用するのは「日本人」である。日本の文化や、日本人の精神の「あんこ」や「肉」の部分の理解なくして、『根本憲法』を知ることはできない。

(続く)

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