景気悪化を示す12月日銀短観、Go To 固執の無為無策だと大不況から恐慌への暗転の恐れ(一時中止追記)
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日銀が12月14日発表した短観=企業短期経済観測調査(https://www.boj.or.jp/statistics/tk/gaiyo/2016/tka2012.pdf)で、大企業製造業の景気判断を示す指数は前回9月調査のマイナス27ポインとからマイナス10ポイントへと17ポインと改善し、2期連続で改善したが、水準は依然としてマイナス10。大企業非製造業も同様にマイナス12ポイントからマイナス5ポイントへと7ポイント2期連続改善したが、やはりマイナス。先行きもともにマイナスが続いている。コロナ第三波の襲来が十分盛り込まれていない可能性があり、政府=菅義偉政権がコロナ禍に対する無為無策とGo To キャンペーンを強行続行する限り、大不況が確実になり、恐慌へと暗転する可能性もある。

12月15日火曜日コロナ感染状況

本日12月15日日火曜日の新型コロナ感染状況は、東京都では午後15時の速報値で新規感染確認者は1週間前の12月8日日火曜日の352人より108人多い、火曜日としては過去最多で初の400人台の460人、東京都基準の重症者は前日比5人増の78人だった(https://www.fnn.jp/articles/-/61484)。
全国では23時59分時点で2431人の新規感染確認者、53人の死亡者が確認されている。重症者は592人と過去最多を更新している。
東京都のモニタリング(https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/)では、7日移動平均での感染者数は519.3人、PCR検査人数は6918.7人だから、陽性率は7.51%。東京都独自の計算方式では6.6%。感染者のうち感染経路不明率は57.44%だった。7日移動平均でも悪化傾向が強まってきている。
【参考】東洋経済ONLINE(https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/)では、12月14日時点の実効再生産数は全国が前日比0.01人増加の1.11人、東京都では前日比0.01人増加の1.11人となっている。

【追記:12月15日午前9時30分】菅義偉首相は昨日14日夜、今月28日~来年1月11日まで、全国一律にGo To トラベルを中止すると発表した東京都と名古屋市は両地着のGo To トラベルの停止はするが、両地発のGo To トラベルは「自粛」要請にとどめる。感染拡大の意思も能力もないことの表れだ。

なお、時間差があるため、今週末までとした「勝負の三週間」は、政府=菅政権の支離滅裂なコロナ禍対策により失敗に終わる可能性が限りなく濃厚になったhttps://www3.nhk.or.jp/news/html/20201214/k10012763621000.html)。もっとも菅首相のGo To トラベル一時中止発表で事実上失敗に終わった。ただし、再開については「12日以降の扱いについては改めて判断する」とし「Go To トラベルに感染拡大のエビデンスはないとの認識に変化はない」とも述べている。Go To キャンペーンを再開する構えは崩していないから、来年に入ってもコロナ禍が危険な状態になることに変わりはない。

東京新聞社が15日午前5時にWebサイトに投稿・公開した「『支持率急落』ようやくGoTo止める 経済重視 なお小出し、政府のコロナ対策」から、Go To キャンペーンのこれまでの経過についての図を引用させていただく。

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Go To キャンペーンを再開するか否かは、➀国内感染状況の推移②世論の反応(支持率)ーなどを見て判断することになるだろうが、再開を強行すれば「新規感染のさらなる拡大(医療体制崩壊)と経済の悪化」が両立することになる。「ウィズ・コロナ」の発想を捨て、➀大規模で面的かつ「誰でもどこでも低額または無料で検査を受けられる」PCR検査体制を早急に確立する②感染確認者は保護・隔離し、適切な医療施設で治療し、国民や企業に対して十分な補償措置を行うーなどの抜本的なコロナ禍対策への転換こそが、当面の最大の経済対策になる。

政府=菅政権はことに気がついていないか、無視している。無視している公算が大きい。政府=菅義偉政権は「国民の健康と暮らしを守る=国民の生活が第一」という本来の政府の任務を捨て去った冷酷な政権であることに変わりはない。


大企業製造業と非製造業の先行き見通しはそれぞれ、マイナス8ポイントとマイナス1ポイント。短観は、業績が「良い」とする企業と「悪い」とする企業との差が全企業に占める割合。調査の対象は大企業、中堅企業、中小企業の三つの業界からなる。このうち、景気動向を把握するうえで最も重要な業界は大企業製造業。

日銀本館と別館
日銀本館と別館

大企業製造業が回復したのは、電機がマイナス15ポイントからマイナス1、自動車がマイナス61からマイナス13、鉄鋼がマイナス55からマイナスへと改善したためで、テレワーク普及による電機業界、中国など海外向けへも含めて自動車業界の業績が改善したためだ。しかし、いずれの業界も先行きの見通しはそれぞれマイナス6ポイント、マイナス5ポイント、マイナス22ポイントとマイナスが続く業績見通しになっている。

一方、大企業非製造業は改善幅ではほほプラスになっているが、現状は通信・情報サービス業界以外は小幅プラスかマイナス。特に、コロナ感染防止で国民が不要・不急の外出を自粛しているため、宿泊・飲食業界ではマイナス65から21ポイント改善したが、水準としてはマイナス38で、先行きもマイナス25と苦境が続く見通しだ。

NHKによる日銀短観の推移
NHKによる日銀短観の推移

大企業を支える中小企業は、製造業が現況、先行きそれぞれマイナス44、マイナス38で、非製造業に至ってはマイナス22からマイナス27へと悪化する見通しだ。日本の企業のうち、中小企業の占める割合は99.7%だから、大企業を支える中小企業の業績が悪化すれば、大企業の業績にも悪影響が出てくる(クリックすれば拡大しますが、見にくい場合は本文初めのPDFをご覧下さい。本投稿記事に戻る際に、画像を消すと真っ白になる場合はマウスでクリックして下さい)。

日銀12月短観
日銀12月短観


政府=菅政権はひたすら、「コロナ感染防止と経済活動の両立」を念仏のように唱えているが、第三波の襲来とGo To キャンペーンの悪影響で、「コロナ感染拡大と経済活動の悪化」が両立してしまう。12月短観は第三波の襲来とGo To キャンペーンが業績悪化に与える悪影響を十分に織り込んでいないと見られ、来年3月に発表される短観では12月短観の先行き見通しが悪化の方向に暗転する可能性がある。

企業業績の悪化は、大企業が利益剰余金(内部留保と言われるが、575兆円程度)を勤労者に振り向けない限り、雇用環境の悪化に直結する。正社員の給与・ボーナス引き下げはもちろん正社員の非正規社員化、非正規社員の補償なき休業命令、会社都合解雇が横行してしまい、国内総生産(GDP)の60%を占め。経済の二大エンジンのひとつの柱である民間最終消費支出の冷え込みを加速する。

当然、売り上げの見込みが立たなければ、民間企業の設備投資も、能力増強投資・技術革新投資ともに落ち込んでしまう。技術革新投資が落ち込めば、2030年から世界各国でガソリン車の新規発売が禁止される日本の自動車業界(日本経済の屋台骨)は壊滅的な打撃を被る。電池とモーターで走行する電池自動車の開発では、米国や中国に大幅に後れを取っている。

また、日本の電機業界(IT業界)ではインターネット・サービス・システムのクラウド化(企業が自社にコンピューター・システムを構築することなく、大手IT業界の数百万台規模のリアルコンピューター・ネットワーク・システム上に低コストてネットワーク・システムを構築するクラウド・コンピューティング)に大幅に遅れを取っている。

菅首相が力説している「デジタル庁」では、民営化したNTTはお払い箱で、米国のGAFAM(こちらの5社の株式価格の時価総額の合計額は、日本の一部上場企業全社の株式価格の時価総額を簡単に上回る)の柱であるアマゾンが開発したクラウド・システム(AWS)が共通のプラット・フォームになることが決まっている。日本のクラウド・コンピューティング・サービスはアマゾンに依存することになる。人工知能(AI)やピッグデータの蓄積技術と活用技術でもGoogleやAppleに大きく後れているというよりは、依存症になっている。



こうした電池自動車業界やIT業界では、米国に対して中国が激しく追い上げている。電池自動車最大手の米国のテスラでは中国への進出を狙っているし、IT産業の振興にも注力している。スマートフォン(AndroidやiPhone)はその設計・製造ができない日本よりも、中国のほうがモバイル通信技術(5G、6G)で多数の特許を有しており、日本は太刀打ちできない。

重要なエネルギー政策においても、急速な技術革新が起こり、地方再生のカギを握る再生エネルギーの普及に対しては、日本の電力会社が邪魔しているようで、地方の住民と地方の中小企業による分散型の日本経済社会の構築は困難な情勢である。その一方で、地震国のために危険性が極めて高く、耐震設計が容易ではないうえ、テロ対策にコストがかかり、世界の常識では見捨てられている割高な原発再稼働と原発新設にこだわっているため、脱炭素社会に向けてのエネルギー政策に確かな展望は開けていない。

日本の経済社会は新自由主義に基づく財政再建原理主義=緊縮財政政策の呪縛にとらわれている(朝日新聞はじめ日本のマスコミ業界も財務省の支配下にある)ため、20年間以上の長期デフレ不況が続いている中、コロナの第三波襲来に直撃されている。菅首相が設置した成長戦略会議(議長・加藤勝信官房長官)では、日本の後進国化を防ぐことはできない。

実質的な議長が竹中平蔵パソナ会長であるから、PFI(Private Finance Initiative=公共施設等の建設、維持管理、運営等を民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用して行う新しい手法というのが内閣府の説明。実態は外資に日本国民の財産を売却する手法)の手法を使って外資に利益を供与して、その利益を会議の議員をはじめ自民党の世襲政治屋と利権政治屋で分配することが実質的な議論の中心になっていると推察される。

高深刻化する日本
高深刻化する日本

これらのことは全て、戦後日本が独立自尊・進取の民主主義社会の建設に失敗し、「長いものには巻かれろ」、「協調性のない国民は非国民」という戦前・戦中の意識(空気)を克服できなかった結果だろう。サイト管理者(筆者)の独断だが、日本の電機業界ではマイクロソフトに支配されて、Linux(Unixクローンのオープン・ソース基本ソフト=OS=)が無視され、現代貨幣理論(MMT)が異端審問を受けていることが問題だ。新自由主義を冷酷に先鋭化している政府=菅政権では、日本の経済社会は破壊されるだけだ。



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