感染拡大を実情無視し経済再開最優先する政府、7-9月期のGDP悪化食い止め解散・総選挙狙いのためか(20時30分現在の感染状況追加)

8月入りした1日の新型コロナ感染者確認数は全国で過去2番目に多い1537人、東京都では最多の472人になった。朝日デジタルが2020年8月2日零時40分に投稿した「感染1537人、8都県で過去最多 沖縄は緊急事態宣言」と題する記事によると、東京以外でも「埼玉、千葉、三重、奈良、和歌山、山口、長崎の計7県でも1日あたりの最多を更新した。大都市の周辺で感染が広がっている」。東京都の「公式発表」では感染経路不明者の割合が60.7%(7日間移動平均)と非常に高くなっており、従来のクラスター対策はもはやコロナ禍対策としては役にに立たなくなっている。それにもかかわらず、政府=安倍晋三政権や都は「クラスター対策」を変えようとしない。要するに、新たな感染拡大第二波の新事態に対する有効な手立てを立案する意思も能力もないものと推察される。一方で、経済活動の再開や全国レベルでの移動自由化最優先の方針を変えようとしない。背景には、安倍政権を裏で支えている経済産業省の暗躍があるが、政局面でみると今年第2・四半期の実質国内総生産(GDP)の劇的な落ち込みが確実になっていることから、経済活動を優先させればその反動で第3・四半期は相対的に良好な数字が出てくることを期待し、有利な状況で解散・総選挙に持ち込もうとしている思惑が推測される。しかし、無策を続けていると感染爆発で解散・総選挙どころではなくなる公算が大きい。

◎追記:NHKが2020年8月2日 16時19分時点で投稿した記事によると、同日15時の時点での速報値で新型コロナウイルス感染確認者は4日ぶりに300人以上を下回り、292人だったという。東京都の公開サイトでは20時15分時点で、感染経路不明率は60.9%と高い。7日間移動平均ベースの陽性率は6.5%。全国では20時30分現在で1330人と5日間連続の1000人台超えになっている。

政府=安倍政権やその傘下にある小池百合子都知事率いる東京都では、「クラスター対策」というこれまでのコロナ禍基本対策の見直しをしようとしない。政府=安倍政権の新型コロナ感染症対策分科会(従来の「専門家会議」から格下げ)の基本方針を再掲する。

厚生労働省のサイトから

しかし、「クラスター対策」が有効なのは、外国から新型コロナウイルスが入り、日本国内で感染者が発生、その濃厚接触者を追跡できるという条件がある場合に限られる。しかし、次の図に示すように感染者が最大の東京都の公開データによると、7日間の移動平均で新規感染確認者のうち、感染経路不明者が6割を超えている。

東京都のサイト(https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/)による。

これでは、「クラスター対策」はコロナ禍対策としては役に立たない。政府=安倍政権はPCR検査数を増やしたためと言い訳をするが、感染が抑えられている場合は、検査人数が増加すれば検査人数に占める陽性者(新規感染者)として判定される人数の割合、つまり、陽性率も低下するはずだ。ちなみに、朝日新聞2日付24面の「感染者増、検査が増えたから? 陽性率も上昇 感染拡大の様相」と題する特集記事によると、全国レベルでの陽性率は約2カ月前の6月中順に1.4%(7日間の移動平均)だったのが、7月29日には7%(同)を超えている。1日あたりの検査数は大幅に変動するから、移動平均を使うのが感染傾向をより正確に把握できる。

世界保健機構では、感染流行をコントロールできている状態として、陽性率が5%以下に抑えられていることを重要な指標として発表している。前述の朝日新聞の特集記事では、メキシコや南アフリカ、チリ、インド、イラン、米国、日本、フィリピン、シンガポールなどでは5%を超えている。サウジアラビアは5%をやや下回っているが、ロックダウン(都市封鎖)が行われたイタリア、ドイツ、韓国、英国、オーストラリアなどでは1%〜2%に抑え込まれている。

しかも、日本では人口当たりのPCR検査数が全世界で157位と最下位の部類に属する。やはり、感染症法に縛られ、国立感染症研究所を頂点とし、地方衛生研究所、政府や地方自治体管轄下の保健所が検査の「司令塔」になる「積極的疫学調査」という名の行政検査が原則になっているからだ。デモクラシータイムスのYoutube週末座談会(8月1日、https://www.youtube.com/watch?v=IjntxZoALGs)によると、PCR検査人数の期間別推移は次のょうになっている。

デモクラシータイムス(https://www.youtube.com/watch?v=IjntxZoALGs)による。

これを見ると、保健所を間に挟んだ行政検査は、2000年代初頭の小泉純一郎政権が加速した弱肉強食の新自由主義路線で社会保障の充実が事実上、無視(「税制と社会保障の一体的改革」というのは、消費税の継続的増税を強行するための大義名分に過ぎない)され、保健所の数が大幅に削減されたため、民間の調査機関の割合が高くなっているが、これは保健所が委託しただけのこと。大学や保健所の管轄外の民間検査機関の検査能力はほとんど生かされていない。これは、厚労省が国民の生命より検査利権を墨守することを優先しているからだ。感染症法15条に定められた積極的疫学調査は、今回の新型コロナウイルスのような感染力の強く、有効な治療方法が明確になっていないウイルスから起きる感染症には対応し切れていない。

PCR検査数を大学や民間検査機関の能力を生かしてさらに大規模に行うことが求められるが、そのためには、感染症法ないし改正インフル特措法の改正が必要になる。そのためにも、臨時国会を早急に開催し、新型コロナ第二波抑制に取り組まなければないないところだ。ところが、安倍政権は現在、厚生労働省は自らの検査利権を維持することに懸命であり、さらには、経済産業省が牛耳っていると見られる。本来は加藤勝信厚労相が政府のコロナ感染対策本部の実務責任者にならなければならないところだが、現在は通商産業省(現経済産業省)の官僚出身である西村康稔経済再生担当相がコロナ禍対策の実務的総責任者になっている。

経済産業省(Wikipediaによる)

西村経済再生担当相を裏で操っていると見られるのが、「影の総理」と言われる経済産業省官僚の今井尚哉(たかや)内閣総理大臣秘書官兼内閣総理大臣補佐官だ。実質的には首相補佐官。今井補佐官は、日本経済団体連合会名誉会長で、第9代経済団体連合会会長の今井敬(たかし)氏の甥である。この今井補佐官が安倍首相に用いられ、突然の全国学校休校やアベノマスク配布配布を進言し、実現することになったというのが大方の見方だ。また、社団法人全国旅行業界会長を努める二階俊博自民党幹事長と今井補佐官の親和性が伝えられることから、全国に新型コロナウイルスを撒き散らしている公算が大きい「Go To トラベル」(表向き国土交通省傘下の観光庁が統括)の繰り上げ実施にも関与していると推察される。なお、余談だが、コロナ禍に隠れて、青森県六ケ所村の核燃料再処理工場の正式稼働が、6年半の「審査」のうえ、「原子力規制委員会」から基本的に承認された。

六ケ所村の核燃料工場は、全国の原発から発生する放射性核廃棄物(核のゴミ)を再処理してプルトニウムに変換するという目的で建設されたが、①本当に安全にプルトニウムに再処理できるのか②再処理されたプルトニウムはウランと混ぜたMOX燃料にして、福井県厚賀市に建設された高速増殖の「もんじゅ」に送り、核燃料を無限に再生産するという「核燃料サイクル」の中継基地として建設されてきたが、肝腎のもんじゅが2016年12月21日に廃炉になっている③建設に14兆円程度の巨額の血税が投入された−という重大な問題がある。今や、①世界の大勢は原子力発電所は生産コストが高く、そのために電力料金も相当に割高になるというのが常識になっている②安倍政権が東芝、三菱重工業、日立を動かして行ってきた原子力発電所のプラント輸出はことごとく失敗している−ことなどから、国策として、中曽根康弘(故人、総理大臣を務めた)と正力松太郎(故人、科学技術庁長官、原子力委員会委員長を務めた)らが進めた「原子力の平和利用」政策は、「死屍累々(ししるいるい)」の惨状だ。

福島第一原発事故による「原子力緊急事態宣言」も解除されておらず、事故も解決されていない。全国で「原発再稼働」反対の声が根強い中で、六ケ所村の核燃料再処理工場が「承認」されたことはやはり、重大な問題がある。話をもとに戻して、安倍政権は今や、厚労省が検査利権を墨守することに精一杯で、今井補佐官らの経済産業省が支配していると見られる。経済産業省は日本の経済活動再開を進めることに注力している。これを受け入れたのが、安倍首相だろう。

民間経済調査機関の予測によると、8月18日17日午前8時50分に公開される第2・四半期の実質GDP伸び率は年率換算でマイナス20%以下と、米国と同様の異常な落ち込みが予想されている。こうした中で、5月25日に改正インフル特措法に基づく緊急事態宣言を解除して以降、政府=安倍政権は経済活動の再開に全力を挙げている。これは、第2・四半期の実質GDPの落ち込みの反動が期待され、解散・総選挙に有利になってくるからだ。来年前半に事実上の都議会議員選挙がスタートし、公明党が来年前半の解散・総選挙には反対しているから、安倍首相に残された切り札である解散・総選挙は年内に限られる。これを意識してのことだ。


しかし、政府=安倍政権の目論見通りに事態が進行するとは限らない。今や、「クラスター対策」という対策から「エピセンター制圧」というコロナ禍の抜本対策が求められるようになっている。エピセンターに詳しく、遺伝子工学の専門家である児玉龍彦名誉教授の指摘によると、首都圏や政令指定中核大都市(大阪市、名古屋市、福岡市など)に無症状感染者を放置しておいたツケが回って形成されてきている日本固有の「感染集積地(エピセンター)」を制圧しなければ、「日本全体が山火事のようになる」と警告している。朝日新聞や東京新聞が社説で強調しているように、政府=安倍政権のコロナ禍対策を正すため、早急に臨時国会を開く必要がある。

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