日本一新の会・代表 平野 貞夫妙観

(民主党崩壊的混迷の原因!)

10月に入って、民主党幹部のA氏から久しぶりに誘いがあり、じっくり懇談する機会があった。消費税増税問題でさんざん苦労した人物だ。話は初っ端から「民主党の崩壊的混迷の犯人捜し」となった。

A氏は「消費税増税に反対しても、小沢さんは民主党を離党すべきではなかった。大量の離党者が民主党を衰退させた」と、小沢氏犯人説を展開した。そりゃそうだろう、五十人近く離党すれば党は衰退するのが当たり前である。問題は離党の原因であり、その時の状況である。現在の民主党の国会議員の大半がA氏と同じ感覚を持っているとのこと。この考えが変わらない限り、民主党の再生はない。

平成21年8月の民主党への政権交代の選挙で「消費税増税」の公約はしなかった。それどころか当時の鳩山代表は「任期中は消費税増税は行わない」と、国民に公約したものだ。それが、藤井裕久→菅直人→野田佳彦という民主党政権の歴代財務大臣に対し、財務省の攻撃的説得が功を奏して国民を裏切ることになるわけだ。
もっと端的に言えば、民主党という政権政党が財務官僚に騙されたのだ。そして騙された民主党が国民を騙すことになるわけだが、そのためには理屈が必要であった。それが社会保障制度の整備と財政再建という、口触りの良い話であった。民主党内の騒動に目をつけて、民主党執行部を誘導したのが、自民党の財務省OBの国会議員であった。いかにも民主党政権を支える恰好をして、消費税増税の実現による土建利権政治の復活を狙った。私は民主党幹部に「自民党に騙されるぞ」と繰り返し注意したが、聴く耳を持たないどころか、民主党内で消費税増税に反対するグループを排除し、民・自・公の連立政権を野田首相は夢見ていたのだ。

小沢氏が「陸山会事件」という政治権力による謀略から解放されて、消費税増税問題に関わることが可能になったのは平成24年3月頃からである。小沢氏は、当時の輿石幹事長と数回にわたる極秘会談を続け、消費税増税を実現するため、国民を納得させる政治哲学や国会運営の手順などを説明、野田首相を教育するように説いた。この時期になると、野田首相は自民党の年増女性の術中に墜ちた童貞状態であった。

民主党の分裂を恐れる輿石幹事長は、6月ごろには小沢・野田会談を何回か設けた。小沢氏は税制改革と増税の必要性は認めながら、国民に約束した政治・行財政に関わる改革を、期限を切って断行してからと、具体的な方策を指導した。しかし、財務官僚の呪縛と自民党の詐術から醒めることのできない野田首相は、与野党の合意があれば憲法や議会政治の原理など踏みにじっても、消費税増税を断行する意向を変えなかった。

私の推測では、小沢氏は「ならば消費税増税関連法案の成立とともに、首相を辞任するか。その覚悟があるなら私も協力して責任をとる」と、詰め寄ったはずだ。それが政治家小沢一郎の政治哲学であり、約束を破った政治家の責任であると私は確信している。この流れで政治が進んでいたとすれば、総選挙も政局の展開も今日とは違ったものになっていたと思う。

確か、岡田克也議員だったと思うが「消費税増税をやらないという公約であり、消費税増税法を成立させても、任期中に施行しなければ公約違反ではない」と、しきりに主張していたが、こんな理屈が通ると思っていることに、民主党幹部の政治的愚かさ、幼稚さがある。残念なことに懇談した人物も私の話を理解できなかった。そして、その連中が何の反省もなく崩壊しかけた民主党の幹部のままだから、野党の再結集など夢のまた夢でしかない。

(消費税増税騒動から1年 何が変わったか!)

野田民主党政権は、自民党に騙されて消費税増税関係法案を成立させたものの、最高裁の違憲状況のまま衆議院を解散させ、民主党を惨敗に追い込んだ。そして、自公両党への政権交代、第2次安倍政権は「アベノミクス」という奇策で、日本国をマネーゲーム資本主義の主役に押し立てた。先行きは誰も読めないが、マネーゲームで国家が生存できる保証はない。

国民は不安の中にあっても参議院選挙で自公政権を選んだ。民主党への拒否反応が消えないからである。現在の日本政治の危機を叫ぶのが元自民党のOB政治家たちだ。『健全な野党がなければ議会政治は崩壊する!』と。野党の結束を熱望するのが健全な保守勢力だから、政治のパラドックスはおもしろい。

そんな中で、10月1日に安倍政権は消費税8%への増税を確定した。大企業への影響を防ぐため、8兆円の消費税増税に対して5兆円ものバラマキ経済政策をやるとのこと。社会保障はどうなったか?。申し訳程度の低所得者対策(1万円~1万5千円の一時支給など)で、抜本的制度改革は絶望的となった。自公政権は、アベノミクスで経済成長する中で、年金など社会保障制度の根本を変える必要ないとまで言いだしている。

こうなれば財政再建の目途はたたない。腹の中が真っ黒な財務官僚たちの顔は「真っ青」になっているだろう。この責任は騙された政治家たちにあるが、踊らされた阿呆どもを責める気にならない。もっとも悪質なのは、マス・メディアだが、「社会の木鐸」の役割を回復できなければ自滅するのは時間の問題だ。

(40年前、資本主義の変質を警告した政治家がいた!)

「高度経済成長が低成長にならざるを得ない時代が来る。その壁がどういうものか、十分な認識を持たなければならん。低成長に対して、どういう対策をとっていくかを考えなければならん時代だ。福祉社会を続けるのに苦労することになる。それをいろんなところで提言しているのに、残念ながら指導者たちにその認識ができていない」

これは昭和56年7月18日、元衆議院議長・前尾繁三郎が、京都の比叡山延暦寺の「青少年研修会」で講演した結びである。当時の政治家・官僚・有識者に対する痛烈な警告であった。前尾先生は5日後京都市の自宅で急逝する。この警告が遺言となった。

前尾先生のこの発想は、40年前の昭和48年の石油ショックの時期、現職の衆議院議長時代に考えられていたものである。議長秘書役の私の耳にタコができるほど聞かされた話を整理すれば、

1)第二次世界大戦後の日本を特徴づけるものは、急速な高度経済成長である。これによって今日のような豊かな経済大国となった。
2)その日本が減速ないし、低成長経済に入る構造的変化に遭遇しているのである。現在の不況は単なる景気循環によるものではない。資源ナショナリズムを原因として、先進工業国に集中している繁栄が資源国に移動するという世界経済の基本的構造変化によるものだ。
3)日本はこの冷厳な事実を認識し、高度経済成長以前の原点に返って日本のあり方全般にわたって反省しなければならない。
4)日本人は高度経済成長の過程で、以前のような誠実さと勤勉さがなくなり、「金さえあれば何でも買える」と思い上がってきた。
5)日本は自然の資源は少ないが、人的資源は豊富だ。この貴重な資源を活用して新しい文化を創造しなければならない。祖先から受け継いだ文化をさらに向上させることで、地域が活性化し国が振興し、世界に貢献できるのだ。貴重な人的資源を生かすために、低成長でも人間を大事にする政治を考えるべきだ。

前尾先生の他界後、数年してわが国は空前のバブル経済となる。前尾先生の意向に反して多くの日本人はバブルに酔い、徐々に誠実さと勤勉さを失っていく。そして、平成時代に入り、わが国は未曽有の経済停滞時代となる。失われた10年が20年へといわれるようになる。これが前尾先生が警告した「低成長時代」だ。

ほとんどの経済学者、エコノミスト、有識者、政治家、官僚、経営者らはこれを「長期デフレ」と言い、「デフレ脱却」として政策を提言している。その歴史認識に根本的な誤りがある。前尾先生が40年前に警告した「世界経済の基本的構造変化」とは、今日的には「資本主義の崩壊的変化」と認識して対処しなければならないのだ。

※資本主義の崩壊的変化の認識には共感するが、実際問題として日本経済はやはり、長期デフレ不況のまっただ中にあると思う。1998年度からの累積デフレ率は20%で、名目国内総生産(GDP)は財務省の経済政策の失敗により、頂点の515兆円超規模からから470兆円規模に縮小し、お陰で税収もこれまた頂点(バブル期)の6兆円規模から40兆円に落ち込んだ。この、真綿で首を締められるような長期デフレの正しい処方箋を描き、実践することが21世紀型資本主義構築の大きな一歩になると思う。