世界平和統一家庭連合に対する解散命令請求は「信教の自由」を根本否定ー一段と民主主義国家から逸脱、経済社会は混乱化へ(使用者責任追記)

文部科学省の盛山正仁大臣は、所管の文化庁が管轄する宗教法人審議会が12日、世界平和統一家庭連合(旧世界基督教神霊教会:略称統一教会、以下、家庭連合)に対する解散命令の請求を正式に決定したことを受けて、本日13日午前、「不法行為を行っている」からとして、東京地方裁判所に解散命令請求を行った。しかし、既に投稿したように民法709条に定める「不法行為=故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う=」は損害賠償規定を明示したものでしかない。同規定は、宗教法人解散の根拠になり、東京高裁、最高裁で確定した「刑法等の実定法規の定める禁止規範又は命令規範に違反(注:法令に違反)するものであって,しかもそれが著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」とは全く異なる。従って、「不法行為」による宗教法人解散命令は法律上の妥当性を欠く。岸田政権の解散請求は民主主義国家の根幹であり、日本国憲法が尊重・保証する「信教・良心の自由」を否定し、民主主義を根本から崩壊させるものである。これでは、国内外の情勢から日本がG7諸国の中で最も早く苦境に立たされることになる。

岸田文雄政権による今回の解散命令請求は、昨年夏の安倍晋三元首相の狙撃テロ事件から始まったが、この事件の背後には文明の転換という国際情勢の大変動という国際情勢があることは既に述べた。文明の転換という国際情勢の大変動はさらに本格化しており、勃発したハマス・イスラエル戦争を例にとって後に述べるが、家庭連合が同法人の田中富廣代表に対する過料請求に対して予告していた追加的な意見陳述書を公開したことから、まず、その内容を参考に、解散請求の不当性を強調しておきたい。

世界平和統一家庭連合の代表役員等が違反した法令を特定できていない岸田政権

再論するが、オウム真理教のサリンによるテロ事件などに関連して、当時の自民党主導の政府が出したオウム真理教の宗教法人解散命令請求を審理した東京地方高等裁判所は。宗教法人法第81条1項、2項について明確な解釈を明らかにし、最高裁も追認した。以下は、その内容である。

(注:宗教法人について)法令に違反して,著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」(一号)・・(中略)・・とは,宗教法人(注:は個体がなく自然人ではなく直接の行為の主体にはなり得ないから)の代表役員等が法人の名の下において取得・集積した財産及びこれを基礎に築いた人的・物的組織等を利用してした行為であって,社会通念に照らして,当該宗教法人の行為であるといえるうえ,刑法等の実定法規の定める禁止規範又は命令規範に違反するものであって,しかもそれが著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為(である)

この判例には、民法第709条が定めた「不法行為=故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害する行為=」に対する損害賠償規定(損害賠償行為)は入っていない。要するに、不法行為(注:法令違反を意味するものではない)だけでは宗教法人に対する解散命令は請求できないのである。

これに関して当事者の田中富廣代表の代理弁護人の福本修也弁護士らはその意見陳述書(https://ffwpu.jp/wp-content/uploads/2023/10/a035d51b70dd56a166b327890d6ee0a9.pdf)の総説で次のように述べている(資料の引用箇所は読みにくくなるので省略させていただいた。原文に明記)。まず、第二回目の意見陳述書の基本的な内容は次の通りである。

文科省は,民法第709条が「賠償規範」であって,不法行為の定義である「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害(する行為)」に該当するか否かは,同条の外にある法秩序が設定した実定法規である禁止規範・命令規範(刑事法規又は行政取締法規)又は「公序と呼ばれる不文の秩序(=社会的相当性)」に照らして評価・判断されるという『不法行為における階層的規範構造』を理解していないため,民法第709条の規範とその外に存在する規範の区別が付かず,両規範を混同して漠然と不法行為を(注:宗教法人の解散命令請求の根拠になると)論じる自らの誤りに気付かないまま不毛な議論をしているものに過ぎない。

重ねての記述で恐縮だが、民法第709条に述べられている「不法行為」は損害賠償規定を定めたものであり、宗教法人解散請求命令の根拠にはなり得ないものである。要するに、「(注:命令規範や禁止規範に基づく)法令(の)違反」が解散命令請求の絶対要件なのである。これに関して福本弁護士らは次に、文科省の過料請求、解散命令請求のより重大な欠点について突っ込んだ意見を述べている。

文科省の主張のより重大な欠陥は,同省が列挙する民事事件において世界平和統一家庭連合(以下,「家庭連合」という)の信者等の行為が如何なる「法令に違反」(宗教法人法第81条第1項第1号)したのかについて,「法令」を特定していないことにある。法令が実定法規であることに議論の余地はなく,宗教法人解散という重大な不利益処分効果を生むものである以上,解散事由となるべき行為が違反した法令条文を明確に特定しなければならない。そこでは,「法令には民法も含まれる」,「民事上の規律や秩序に反するもの」,「民法の不法行為規定(709条以下)や公序良俗違反(90条)」などという曖昧さは許されない。

この曖昧さは,(注:文科省の)過料通知書第4・2の項目表題が民法の不法行為法上,違法と評価される行為や公序良俗違反と評価される行為が法81条1項1号所定の「法令に違反」する行為に該当することとされていることに顕著に表れている。

実に驚くべきことであるが,本件過料通知書(注:解散命令通知書も同様の趣旨であると推定される)は,家庭連合又はその信者等が何法の第何条に違反したのかにつき主張していないのである。

意見書では総論の次に、文科省の主張に逐次反論している。反論の中で重要な点は、オウム真理教によるサリンテロ事件などで高裁が示した判決の中では、「刑法等の実定法規の定める禁止規範又は命令規範に違反する行為」、平たく言えば「法令(注:例えば何法の何条何項)に違反した行為」が存在することが解散命令請求の根拠になるが、このことから言えば、違反の対象である「法令」を特定する必要がある。ところが、文科省の過料請求通知書では、「法令違反」の特定はわざと曖昧にし、「秩序違反」にすり変えている。

宗教法人法81条1項1号にいう「法令に違反」には,民事法上の規律や秩序に違反する行為も含まれるというものであり,具体的な法令の特定(何法の第何条)を避けて曖昧にしている。なぜ,文科省は民法第709条違反(家庭連合に第710条,第716条~第718条の事例は皆無)とはっきりと明言しないのか。

その理由の第1は,家庭連合の信者らが違反したとされるのが「公序と呼ばれる不文の秩序(=社会的相当性)」であって,実定法規である法令ではないことが明かなことにある。当代理人は令和4年11月24日付法律意見書(乙1)9~10頁で上記指摘を明確に行っており,同省もさすがに否定することができず,「『法令に違反』には,民事法上の規律や秩序に違反する行為も含まれる」という言い回しで「秩序違反」を忍び込ませてきたのである。

今1つの理由は,不法行為制度について詳しく説示した最高裁判所判決(平成9年7月11日)が存在すること及び法律実務において「民法第709条違反」という概念が存在しないことにある。同省が「民法第709条違反」と言わずに「民事法上の規律に反する」という間接的な表現を用いているのはそのためである。同省は,『不法行為における階層的規範構造』を理解しておらず,民法第709条の中に禁止規範・命令規範が潜在的に含まれていると誤認しているため,上記のような表現になっているのである。

注:ここに述べた平成9年7月11日の最高裁判決とは次のような内容である。
我が国の不法行為に基づく損害賠償制度は,被害者に生じた現実の損害を金銭的に評価し,加害者にこれを賠償させることにより,被害者が被った不利益を補てんして,不法行為が
なかったときの状態に回復させることを目的とするものであり(最高裁昭和63年(オ)第1749号平成5年3月24日大法廷判決・民集47巻4号3039頁参照),加害者に対
する制裁や,将来における同様の行為の抑止,すなわち一般予防を目的とするものではない。

もっとも,加害者に対して損害賠償義務を課することによって,結果的に加害者に対する制裁ないし一般予防の効果を生ずることがあるとしても,それは被害者が被った不利益を回復するために加害者に対し損害賠償義務を負わせたことの反射的,副次的な効果にすぎず,加害者に対する制裁及び一般予防を本来的な目的とする懲罰的損害賠償の制度とは本質的に異なるというべきである。我が国においては,加害者に対して制裁を科し,将来の同様の行為を抑止することは,刑事上又は行政上の制裁にゆだねられているのである。

最高裁のこの判示を素直に読めば、次のようになる。

不法行為制度は加害行為に関する損害補填制度(賠償規範)であって,加害行為の一般予防や加害者に対する制裁・抑止を目的とするものではなく,これら予防・制裁・抑止につい
ては禁止規範又は命令規範である刑事法規又は行政取締法規に基づく刑事上又は行政上の制裁(注:法令違反に対する制裁)に委ねられている(注:そして、この制裁の原因になった法令・行政取締法違反が宗教法人に対する解散請求の絶対要件になる)。

サイト管理者(筆者)の責任で文科省に対する反論を補足すれば、まずもって、文科省が宗教法人解散命令請求ができるよう、岸田政権は端的に言えば、具体的な「法令違反」の明示は必要なく、「秩序維持」の「違反」をしていることを示すことが出来れば良いとして、司法が判示した解釈を完全に逸脱して、請求権の適用範囲に、政府の裁量を潜り込ませようとしている。これは、政府の気に入らない(有害になると考える)宗教法人及びその信徒に対して、日本国憲法で保障しており、民主主義制度の根幹になる「信教・良心の自由」を否定する宗教弾圧になる(後段の産経デジタルの記事参照)。

次に、宗教法人の解散命令は本来、民法第709条の「不法行為=故意(わざと)または過失(うっかり)によって、他人の権利または法律上保護される利益を侵害する行為=」による損害賠償訴訟(金銭による原状回復が目的)が起きているかどうかではなく、刑事法規又は行政取締法規に基づく刑事上又は行政上の制裁に委ねられている。言い換えると、国家が「刑法等の実定法規の定める禁止規範又は命令規範に違反するものであって,しかもそれが著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」として厳密に特定できなければならない。

これは、日本国憲法で保障しており、民主主義制度の根幹になる「信教・良心の自由」を確実に守るためである。つまり、ある宗教法人の代表役員らが組織的・継続的に刑事犯罪を犯していることを、国家がとりわけ物証に基づいて立証するということができなければ、当該宗教法人に対して著しい宗教弾圧になるため、同宗教法人に対して解散命令を請求してはならないのである。

オウム真理教についで二番目に宗教法人格が剥奪された明覚寺事件(2002年に解散命令決定)の場合、明覚寺の幹部は、僧侶に霊能力があるように装い、悩みごとの相談に訪れた主婦らから供養料名目で金銭をだまし取ったとして、詐欺罪に問われた。三年の裁判期間ののち、最高裁で宗教法人解散を認められた。ここでは、代表役員ら幹部は詐欺罪という刑事事件に問われたのである。

なお、文科省はさらなる手口として、宗教法人に対しても民法第715条に言う「使用者責任(ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う、というもの)」という概念を適用できることを打ち出している。司法が確立した「法令に違反して,著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」(一号)・・(中略)・・とは,宗教法人の代表役員等が法人の名の下において取得・集積した財産及びこれを基礎に築いた人的・物的組織等を利用してした行為であって,社会通念に照らして,当該宗教法人の行為であるといえる」という解散命令請求要件を著しく緩和するためだ。その内容は、東京地裁が判示し、最高裁が確定した「解散命令請求要件」から著しく逸脱したものだ(https://www.youtube.com/watch?v=6i2QNDgwwhE)。

その狙いは、福本弁護士の主張するように、(注:憲法第20条の信教の自由を厳密に保証するために法律上のハードルを引き上げている)「過去の解散命令請求事件で確立した東京高裁の決定(判決)」を完全に歪曲、否定することである。まず、会社などの事業主体においては代表役員や幹部役員は彼らが直接関係していなくても、末端の会社員が問題を引き起こせば、通常は無過失ながら代表役員や幹部役員は「使用者責任」を免れ得ないことから、彼ら代表役員や幹部役員は責任を問われることになる。

そこで、宗教法人を事業法人と同等に扱い、代表役員や幹部役員の使用責任を問えるということになれば、末端の職員や平信徒(注:もっとも平信徒を事業会社のような被雇用者として扱うのは法的かつ社会通念上無理がある)が問題を引き起こせば、彼ら代表役員や幹部役員の責任が認定されてしまうことになる。つまり、末端の職員や平信徒が問題を引き起こした場合、代表役員や幹部役員が関係していなくても、「組織性・悪質性」が認められてしまう。これに加えて、「継続性」を認められてしまえば、解散命令を請求できる「宗教法人の行為」となってしまうことになる(注:ただし、刑法等の実定法規の定める禁止規範又は命令規範に違反するものであって,しかもそれが著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為、つまり法令違反であることが、解散命令請求の決定的な要件)。

要するに、宗教法人の代表役員や幹部役員の使用者責任を問うことによって、宗教法人法第81条一項が規定している宗教法人解散請求の理由・範囲(言い換えれば、解散命令請求のできる宗教法人の対象)を際限なく広げることができるわけだ。この使用者責任を宗教法人にも適用することは、憲法第20条に定められた「信教の自由の保証」を破壊することになる。岸田政権はそういう無理筋の手口まで使って、少なくとも政権浮揚のため、世界平和統一家庭連合を葬り去りたいのである。

ただし、世界平和統一家庭連合の場合は東京高裁判決の意味での組織性・悪質性・継続性は既になく(例えば、2009年のコンプライアンス改革で損害賠償のための民事訴訟などは激減している)、民法上の不法行為=故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害する行為=に対する損害賠償請求民事訴訟では、家庭連合側が敗訴する場合があったとしても解散命令を裁判所に請求することはできない。現実的には、法令違反がない和解が民事訴訟の中心的な結果になっている。和解では法令違反を問いようがない。

また、繰り返しになるが民法709条の不法行為については、一般には法令違反のように聞こえてしまうが、法令違反ではない。あくまでも、損害賠償訴訟を起こして私人間の現状を回復するめための損害賠償規定であり、宗教法人解散請求命令を司法に請求できる性格のものではない。

なお、宗教法人と信徒の間に、教義解釈や献金、伝道活動をめぐってトラブルが生じることはあり得ることであるし、歴史的にも存在してきた。その多くは、新婦や牧師の教えが信じられなくなったということで、献金の返還を求めるケースである。しかし、トラブルが起きていると言って、宗教法人に解散命令を請求するのはとんでもないことである。キリスト教の歴史において、大小様々の宗教改革があったことは歴史が示すところで、その結果として欧米民主主義文明を創出した。家庭連合も過去のキリスト教会と同様、不断の改革を行っている。その傾向は一段と強まってきた(https://ffwpu.jp/news/4839.html)。

結論的に言えば要するに、岸田政権は自己の都合で解散命令請求ができる要件を変更したのである。つまり、我が国の司法制度が明確に示した「宗教法人の代表役員等が法人の名の下において取得・集積した財産及びこれを基礎に築いた人的・物的組織等を利用してした行為であって,社会通念に照らして,当該宗教法人の行為であるといえるうえ,刑法等の実定法規の定める禁止規範又は命令規範に違反するものであって,しかもそれが著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」を特定する必要はなく、「秩序違反」を理由に岸田政権の気に入らない広範囲の宗教法人に対して、過料請求はもちろん解散命令請求を裁判所に通知できるように同法の解釈を変更し、実行したのである。

ただし、三権分立の建前から言うと、政府の都合を司法がすんなり受け入れるということは有り得ない。今回の岸田政権による解散請求命令について、さすがの朝日デジタルも次のように伝え、各種の宗教団体が「信教の自由」を侵されることを強く懸念していることを報道しているhttps://digital.asahi.com/articles/ASRBD66M1RBBUTIL02H.html?iref=subscribe_done)。

文部科学省が12日、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の解散命令を東京地裁に請求することを表明したのに対し、他の宗教団体からは、賛否様々な意見が出た。

日本基督教団の担当者は「解散命令請求には反対」としたうえで、「旧統一教会の問題性は重々承知しているが、旧統一教会やその政治団体である国際勝共連合と自民党などとの癒着による根本的な問題が全く明らかにされていない。一方の組織のみを解散させるというのは目くらましで、宗教団体だけが反社会的であるという判断は、国家権力による宗教介入だ」と訴える。また、質問権の行使や解散命令請求の流れが不明瞭で、質問や回答も公開されず、「密室裁判」のような形で進められていると指摘。「これのどこに信教の自由があるのか。信教の自由は、思想信条の自由、表現の自由、あらゆる自由と繫(つな)がっていることであり、『悪い宗教』『悪い考え』『悪い表現』が誰によって、どのように規定されてゆくのかを考えると、強い危惧を覚える」とした。

幸福の科学も、解散命令請求には反対の立場。「安倍元首相を銃撃した殺人事件という個人の犯罪を、宗教の問題にすり替えている」と批判。「オウム事件のような宗教側の重大な『刑法上の組織犯罪』ではないにもかかわらず、解散請求がなされるのであれば、憲法で保障された信教の自由の侵害であり、事実上の宗教弾圧である。これを機に『民法上の不法行為』として適用される範囲が不当に拡大され、政府が宗教団体を恣意(しい)的に弾圧できるようになる恐れがある」と指摘する。(中略)

創価学会は「旧統一教会の実態について調査結果の内容が明らかにされていない現在、解散命令請求の妥当性についての回答は控えたい」としたうえで、「今回の請求に至るプロセスは信教の自由に配慮したものだと認識しているが、憲法で保障された信教の自由を厳守するという観点から、宗教に対する公権力の権限行使は常に慎重であるべきだと考える」とした。

なお、産経新聞は今回の岸田政権による解散命令請求が、「岸田政権が吹っ飛ぶ(注:岸田政権の支持率が低落し、内閣総辞職せざるを得なくなる。サイト管理者(筆者)としては大げさな気がする)」という政治的動機に基づくものであることを紹介している(https://www.sankei.com/article/20231012-XRSIQQ5YONNGDEQYH7MPXEP6JU/)。

東京地裁に対し、13日にも行われることになった解散命令請求。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)問題は今後、司法に委ねられる。当初、請求や質問権行使に消極的だった文化庁だが、政権の行方すら左右しかねない問題に発展したことで、重い腰を上げざるを得なかった。ただ、宗教法人審議会の内部では、請求ありきの進め方に異論もあったとされ、文化庁側は「内閣が飛んでしまう」と訴えて合意形成を図った。

学識経験者や宗教関係者で構成される審議会。当初、文化庁の手法に異論を唱えたのは特に宗教関係者だった。不満の一端は岸田文雄首相による〝朝令暮改〟だ。岸田首相は昨年10月の国会答弁で、解散命令請求の要件となる法令違反は刑事事件を指すとの見解を示し教団の調査に消極的な姿勢を示したが、翌日に解釈を変更、民法の法令違反も入り得るとした。

宗教界から選出されたある委員は、文化庁の調査が大詰めに入った今年9月、「今でも政府見解の変更には納得していない」と周囲に漏らした。一夜でひっくり返った法解釈に、宗教界は「信教の自由」への影響を憂慮した。それでも文化庁は審議会で「(教団に何もしなければ)内閣が飛んでしまう」と呼びかけ、請求の前提となる質問権行使の正当性を訴えた。

このように、岸田政権は政治的に追い詰められたために、民法第709条の「不法行為(言い換えると、損害賠償規定の裏付けになるもの)」は「宗教法人解散請求命令の要件には当たらない」との見解を一夜にして翻し、民法709条の「不法行為」も「要件に当てはまる」と解釈を変更した。これは、判例を重視し、法の予見性を覆す法治国家にはあるまじき変更だ。法律の合理的な解釈、適用は法律論上は、憲法・法律の解釈は違憲立法審査権を持ち、「法の番人」とも呼ばれる司法制度が行うもので、法の予見性を重視するための先例主義の立場に立つから、政府が解釈を変更したからといって司法はそれに追随する必要はないし、三権分立主義の原則から追随してはならない。

ただし、我が国の三権分立制度は建前であって、司法制度(裁判所システム)を裏で統制する「司法官僚」が存在する(新藤宗幸著、「司法官僚ー裁判所の権力者たち」岩波書店)。司法官僚の暗躍で、法治国家として有り得ない判決が下される可能性も否定できない。その場合は、日本国憲法が保証し、民主主義制度の根幹である「信教・良心の自由」を否定することであり、「民主主義国家」の一段かつ重大な後退を招くことになる。

そうした事態に至れば、我が国の三権分立制度は一段と揺らぎ、民主主義制度は崩壊してしまう。そして、その影響は政治・経済・社会・国際情勢のあらゆる分野に及ぶ。ウクライナ戦争以降、物価高と不況の併存というスタグフレーションにさいなまれている米側陣営の中でも、最高度に対米追随国家=対米隷属国家に成り下がっている日本は。もっとも早く凋落・衰退していくだろう。岸田文雄首相はその引き金を引いた「首相」として日本史に最大の汚点を残すことになる。岸田首相の失政は既に表れている。円の実質実効為替レートが1970年以来、50年ぶりに安くなっている(低下)ことだ。

実質実効為替レートとは平たく言えば、諸外国との物価上昇率格差、貿易量を加味して計算した為替レートのことであり、円の実質的な購買力を示す(https://www.smtb.jp/business/dc/web/NL/sk202112.html)。同レートが上がれば円の海外諸国に対する購買力は上がり、円高になる。逆に下がれば、円の購買力は低下する。円高の方が良いに決まっている。輸出産業は輸出競争力を高めるために生産システムの革新を行わなければならない。輸入産業は海外から安く製品を購入できるから、国内の物価も低下する。下図は、実質実効為替レートの長期にわたる推移だ(https://honkawa2.sakura.ne.jp/5072.html)。

消費者物価で計算した円の実質実効為替レートは1970年代初頭の水準まで激落している。このため、ウクライナ戦争による供給側のコストプッシュインフレに加えて、円の実質的な購買力が下がっているから、日本の国内はどんどん物価が上昇している。生活必需品になったスマートフォンの最近の高価格がインフレの激しさを端的に示している。賃金の上昇が追いつかないから、実質的に内需が不足して国内の景気は次第に悪化している。米側陣営はどこもそうだが、日本は米側陣営諸国が金融引き締め政策を採っているのに、金融システムの崩壊を恐れて金融政策は無策だ。だから、スタグフレーションが米側陣営のどこの国よりもひどくなる。もっとも、インフレの真の原因はウクライナ戦争による供給側のコストプッシュインフレにあるから、金融引き締め政策を行ってもインフレ対策にはならない。

さらに、令和5年6月23日に「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律(LGBT法=結果的に同性愛を推進することになる法=)」が、公布され、同日に施行された。使徒パウロが書いたとされる新約聖書の「ローマ人への手紙」第一章26節、27節には「それゆえ、神は彼かれらを恥はずべき情欲に任せられた。すなわち、彼らの中の女は、その自然の関係を不自然ものに代え、 男もまた同じように女との自然の関係を捨てて、互いにその情欲の炎を燃もやし、男は男に対して恥ずべきことをなし、そしてその乱行の当然の報いを、身に受けたのである」とある。

キリスト教では同性愛を厳禁しているが、キリスト教の衰退により同性愛が横行する時代になっている。いわゆる「終末」の時代だが、最近では真面目に考えてみると決券術理由がよく分からないから、男女が結婚しない時代になっている。これでは、米側陣営諸国は少子化問題を克服できず、経済社会が活力を回復する明るい未来を描けない。日本もその後追いをするようになったが、円安政策と併せて日本の経済社会は活力喪失の「最先端」を行く国になるだろう。岸田首相の失政の結果が今後、どんどん表面化するだろう。

ここで、田中宇氏の公開文書「イスラエルとハマス戦争の裏読み」(https://tanakanews.com/231010israel.htm、無料記事)から、中東産油国の盟主であるサウジアラビアがこれまで「天敵」であったイスラエルと和解したがっているという国際情勢の激変、つまり、凋落する米側陣営と活力を増す非米側陣営の対立という文明の転換期について改めて紹介しておきたい。

イラン、サウジアラビア(のイスラム教徒)と和解したがっているイスラエル

田中氏は、「サウジがウラン濃縮のイランごっこ」と題する公開記事(https://tanakanews.com/231006saudi.htm、無料記事)で、「サウジアラビアが、イスラエルとの国交正常化に踏み切る条件の一つとして、自前でウラン濃縮して核燃料を作って新設の原子力発電所で使うことを、仲裁役の米国に対して出している。サウジがウラン濃縮の「イランごっこ」を演じていくと、ウラン濃縮を核兵器開発と直結させて濡れ衣をかけて制裁してきた米国のイラン政策(注:ウランを濃縮させたからと言って核兵器を製造するわけではない。原子力発電所もウラン235の数%の濃縮が必要)が大間違いだったことが露呈する。ウラン濃縮の茶番劇は、イエメン戦争を解決してくれるイランへの、サウジからの返礼だろう」などとして、米国の単独覇権力が極めて低下してきた中、イスラエルがサウジアラビアと関係正常化を求めていることを明らかにしている。

その矢先にパレスチナ自治区のガザのハマスは、イスラエルを大規模攻撃した。イスラエルのネタニヤフ政権は50年ぶりに戦争状態になったと言っている。英国BBCは次のように伝えている(https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-67044446)。

パレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスは7日、ガザ地区から数千発のロケット弾を発射し、イスラエルへの奇襲攻撃を開始した。


複数のロケット弾がイスラエル南部アシュケロンを襲った。少なくとも40人のイスラエル人が死亡した。

ハマスが用意周到にイスラエル攻撃を準備していたのに、右派連立政権のネタニヤフ首相はこれを見抜けなかったとして、引責辞任させられるとの観測も出ている。なお、レバノンのヒズボラもイスラエルとの戦争の準備をしていると言われている。しかし、米国一国単独覇権の時代は終わった。ネタニヤフ首相のホンネとしては、サウジ(スンニ派)やイラン(古代ペルシアの拝火教=ゾロアスター教=の教義が取り入れられているイスラム教のシーア派)と仲良くしたい。エジプトがハマスの動きを伝えてきたが、ネタニヤフ政権は特に対処はしなかった。田中氏は、これには、次のような戦術があったのではないかと見ている。

ウクライナの厭戦機運が米国でも強まり、米国の世論は新たにイランと戦争することなどまっぴらだ。バイデン政権に巣食う民主党の左翼は、イスラエルでなくパレスチナを支援しているし、イスラエル政界では右派のネタニヤフでなく野党の左派連合を支持している。バイデン政権は、以前からネタニヤフを嫌っている。米国はイスラエル沖に空母を派遣するぐらいしかやってくれない。Moscow blasts US approach to Israel-Palestine violenceWarmongers Start Push For US Involvement In Iran Following Hamas Attack

ネタニヤフは、入植者に依存して政権を維持しているものの、入植者が猛反対するイランとの和解を進めないとイスラエルを潰してしまう。この難問を解くための妙案として、ハマスとヒズボラとの戦争誘発を考えたのでないか。ハマスはイスラエル人や外国人の200人の人質をとっており、イスラエルがガザを空爆し続けるのは逆効果だ。交渉で解決するしかない。入植者たちは交渉に反対できない。Biden Tells Netanyahu More Military Aid Is on Its Way‘The Squad’-Backed Democratic Socialists Of America Hold Times Square Protest ‘In Solidarity’ With Palestine

アラブの盟主であるサウジは、すでに非公式にイスラエルと仲が良い。アラブが仲裁し、ハマスとその背後にいるイランも間接的に入ってイスラエルと交渉し、イスラエルが拘束しているハマスの捕虜と交換に、ハマスが捕まえた人質を釈放するとか、ガザの諸問題の解決などを開始すれば、緊張を緩和できる。米国に頼れずロシアと組むイスラエル中露が誘う中東の非米化

イスラエルは今回の交渉の構図を使って、アラブだけでなくイランとも和解していける。入植者たちは反対しにくい。米国は何もやってくれない。今回の仲裁役になれそうなアラブ連盟の代表が真っ先に訪問したのはモスクワだった。イスラエルがアラブ、イランと和解していけるとしたら、それはロシアや中国が作った非米側の枠組みの中でだ。この和解がうまくいくと、米国の中東覇権はさらに失われ、中東はイスラエルを含む形で非米側の一員になっていく。Lavrov to hold talks with Arab League Secretary General in Moscow on Monday – MFA非米化する中東)(中略)

ネタニヤフが辞めると、その後は中道左派などの連立政権になり、イランやアラブとの和解やイスラエルの非米化を引き継げる。またネタニヤフが辞めずに、入植者を切り捨てて中道系の勢力を政権内に引き入れて連立を組み替えて政権を維持する可能性もある。イスラエルは、国家滅亡のハルマゲドンを避けてうまく非米化していけるのでないかと私は期待している。ユダヤ人は世界運営にとって重要なので、プーチンや習近平もイスラエル存続を望んでいるはずだ。ネタニヤフが延命のためガザで戦争

なお、今回のイスラエルの「敗北」に関して田中氏は、「ヒズボラはシリア内戦で鍛えられ、政治的にもレバノンの与党になっている。ハマスとヒズボラの両方との戦争に陥ると、イスラエルは対抗できず負ける可能性がある。とくに戦闘が長引くと危険だ。イスラエルの唯一最大の後ろ盾である米国は、ウクライナ戦争で兵器や予算を使いすぎて足りない。米国は、今回のようないざという時に役に立たない(日本は知っておくべきイランとイスラエルを戦争させるヒズボラの勝利

本サイトでは田中氏の分析や外構評論家の孫崎享氏の意見などを参考に、世界は米側陣営と非米側陣営とに分割されてきており、前者は凋落の一途、後者は活性化の動きを活発化させていると主張させていただいている。要するに、時代は文明の大転換期にきている。対米隷属一辺倒で、国家の独立性や法治主義についても理解していない岸田政権の政権運営は、日本国をして、G7を中核とする米側陣営の中でも最も早く凋落させることになるだろう。

特に今回、世界宗教であるキリスト教の聖書を経典とし、現代的解釈を特徴とする世界平和統一家庭連合から宗教法人の資格を剥奪(注:宗教団体としての信頼性を破壊すること)しようとする一連の展開は、日本再生の芽を自らの手で摘み取るようなものだ。ウクライナ戦争から、日本のマスコミも国民に真実を伝えないことで有名になった。世界統一平和家庭連合の記者会見に出席しているのは社会部の記者と思われるから、法律論議に弱く、情緒的にしか質問できないこともよく分かった。

 

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