河井夫妻買収事件の黒幕は安倍前首相か、オリ/パラ中止なら公選法違反で検察は強制捜査・逮捕も
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元朝日新聞記者でジャーナリストの佐藤章氏によると、河井克行元衆院議員・案里元参院議員の買収事件(案里氏は公職選挙法違反で有罪、克行氏も有罪が確定。いずれも議員辞職し政界引退)の黒幕は安倍晋三前首相のようだ。林真琴検事総長率いる検察庁は、2019年参院議員選挙で自民党から河井陣営に支給された政党助成金1億2千万円を含む1億5千万円の使途を解明しており、東京オリンピック/パラリンピック中止と世論の後押しがあれば安倍氏を強制捜査・逮捕し、公判に持ち込む意向とのことだ。

5月22日土曜日のコロナ感染状況

5月22日土曜日のコロナ感染状況
複数のメディアによると5月22日土曜日の東京都の新型コロナウイルスの感染者数は前週土曜日比170人減の602人、死亡者は5人。東京都基準の重症患者は62人になった。7日移動平均では650.4人になり、前週比74.2%になった。昨日21日金曜日の72.8%を上回った。前日を上回るのは5月12日以来、10日ぶり。年代別では20代が182人で他の年代よりも多かった。
全国では23時59分の時点で、新規感染者数は5040人、死亡者84人、重症者は1303人。大阪府は新規感染者が406人、死亡者24人。

東京都はコロナ感染ステージの指標のうち最も重要な新規感染者が7日移動平均で500人以下に下がり、その傾向が持続しなければ、ステージⅣの段階が続く(感染爆発の段階)。

東京都のコロナ感染者数の推移
東京都のコロナ感染者数の推移

 

NHKWebサイトも、政府筋の話として今月末の5月31日に緊急事態の宣言を解除するのは困難だとの見方を伝えた(https://www3.nhk.or.jp/news/?utm_int=error_contents_menu_news)。朝日新聞はこれより先、22日付朝刊3面で、変異株が市中感染の「主役」に置き換わっていることから、専門家の間に今月末の解除は難しいとの見方が広まっていることを伝えた(https://digital.asahi.com/articles/DA3S14912557.html?iref=pc_photo_gallery_bottom)。特に、日本人を含むアジア人が多く持っている型(白血球抗原)の白血球の免疫力を無効化するインドの二重変異株に警戒が必要だとしている。下図は朝日新聞社が調べた緊急事態宣言対象10都道府県の感染ステージ。

緊急事態宣言10都道府県の新型コロナ感染状況
緊急事態宣言10都道府県の新型コロナ感染状況

河井克行元法相・案里元参院議員の選挙買収事案の黒幕

本投稿記事はYoutubeで読書家の清水有高氏が公開している「一月万冊」の番組に出演した佐藤氏が、自らの取材に基づいて明らかにした内容(https://www.youtube.com/watch?v=WG-EJwr8Chc)を元に構成しています。なお、佐藤氏は朝日新聞出版から「職業政治家・小沢一郎」を出版されている。内容は、小沢氏の政治活動を通して。➀日本を蝕んでいる政・官・業癒着の各種「利権ムラ」の実態の摘出②民主党政権失敗の理由(政治を国民に取り戻すための「内閣主導の官僚人事制度」、「国家戦略会議」の創設に失敗。自公連立政権の下、真逆の形で「内閣人事局」と「経済財政諮問会議」に曲形され、ともに「利権ムラ」の温床になっている)③細川護煕連立政権・新進党瓦解の理由(細川首相の諦めと公明党の離反)ーなどを鋭く分析しながら、戦後政治史を一冊の著書にまとめておられる。

河井夫妻買収事件は両氏の有罪確定・議員辞職・政界引退で幕引きかと思われていたが、自民党から両氏に支給された政党助成金1億2千万円を含む1億5千万円のうち、河井克行元法相が買収に使った金額は約2900万円、案里氏が使った金額は約150万円の3000万円程度と見られており、残る1億2千万円の使徒が解明されていない。本買収事件は河井夫妻の有罪と政界引退で幕引きかと思われているが、佐藤氏によると検察は残る1億2千万円の使途について既に解明しているという。

本買収事件は元々、安倍首相(当時)が自らの政敵であり、宏池会の流れを組む岸田派の重鎮で、2019年7月の参院選挙で当選すれば自民党参院幹事長(自民党四役の一人)になることが確実であった溝手顕正氏を落選、失脚させることが狙いだったと言われている。佐藤氏の取材内容をまとめると、安倍氏の指示に基づいて河井案里陣営の選挙応援(指南)を行った安倍事務所側が、河井夫妻による地元広島県の基礎自治体の首長や市町村議会の議員らの買収金額約3千万円の残りの約1億2千万円に加え、当時の菅義偉官房長官(現首相)が管理していた官房機密費約1億円と合わせて、案里氏当選のための選挙費用に充てたということである。この内容に関しては次の投稿記事もご覧ください。

安倍首相と二階幹事長、菅官房長官(いずれも当時)が結託して溝手前参院議員の落選、失脚を図ったものと思われるが、自民党の選挙の総責任者である二階俊博幹事長は支援金拠出を認めただけで、直接の落選・失脚工作には溝手氏の失脚には関わっていないようだ。

だから、自民党の岸田文雄前政調会長が今年2021年の5月12日に、本事案について自民党としての説明責任を果たすように求めた(後述)後の5月17日、二階幹事長が記者会見で、河井夫妻公職選挙法違反(買収)事件で買収の原資となった自民党本部からの1億5000万円に関し「その支出について、私は関与していない」と述べたのは、ある意味では正しい。佐藤氏によると「河井陣営への資金拠出を認めたのは確かだが、落選・失脚運動には直接には関わっていない」という意味であり、記者会見を通して林真琴検事総長率いる検察庁に伝える意味での発言だったという。もっとも、2019年参院選当時の自民党選挙対策委員長だった甘利明衆議院議員に責任を負わして逃げるのも、公党の党務の実質的な最高責任者としてあるまじきことだ。

安倍、二階、菅の三氏が、溝手氏の失脚のため河井夫妻による地元基礎自治体の首長や市町村議会の買収資金の原資を両氏に支給していたことや安倍陣営側が秘密裏の選挙応援活動を行っていたなら、安倍前首相はそれらのすべての活動の総責任者として公職選挙法や政治資金規正法違反の犯罪行為を犯していたということで責任を問われなければならない。

 

検察庁
検察庁

 

さて、検察庁ではもともと林真琴氏を東京高等検察庁検事長の職に就かせ、次期検事総長に昇進させる意向だった。しかし、法務省の黒川弘務大臣官房長(2011年8月就任)が当時の安倍政権の「守護神」になったことから、黒川官房長を法務省事務次官(2016年9月5日)を経て2019年1月18日に東京高等検察庁検事長に就かせ、さらには、河井事案を握りつぶすため2020年1月31日の閣議で、満63歳の誕生日前日の2020年2月7日に退官する予定だった黒川東京高検検事長を定年後も半年間勤務延長させる閣議決定を行った。検察庁法では検事総長以外の検察官の定年は63歳と定められている。

このため、当時の稲田伸夫検事総長率いる検察庁は、週刊文春の電子版が2019年10月30日、同年7月の広島選挙区の参院選で河井陣営が車上運動員(いわゆる「ウグイス嬢」)13人に公職選挙法の法定上限を超える報酬(日当は1万5千円が上限のところ3万円)を支払った疑いがあると報じた事案をきっかけに巻き返しを図った。週刊文春には検察側がリークした可能性があるが、この「ウグイス嬢」事案で当時の河井法務相が辞任した。これは実に異常なことである。背景に河井夫妻による買収事案があったことは間違いない。

この「ウグイス嬢」事案をきっかけに、河井夫妻による地元首長、議員の買収事案が本格浮上して、広島県政界は大揺れになり、全国的にも国民の注目の的になった。広島県は本来は、戦後の高度経済成長を実現した池田勇人首相を誕生させるなど自民党宏池会の金城湯池(きんじょうとうち)だったが、今年4月25日の参院広島選挙区補選では宏池会の岸田派が新人候補を擁立したものの、買収事件で「台風」に見舞われ、超低投票率だったにもかかわらず落選した。自民党支持層ですら愛想をつかし、棄権した。岸田陣営はあまりの逆風に選挙戦の最終局面では広島選挙区有権者に対して、「河井夫妻事件の真相を究明する」と訴えざるを得なかったほどだ。

 

岸田文雄自民前政調会長、当執行部の河井事案での責任逃れ批判
岸田文雄自民前政調会長、当執行部の河井事案での責任逃れ批判

 

事実、選挙後岸田文雄前政調会長は河井事案の真相究明に乗り出して岸田前政調会長は5月12日、ツイッターで「自民党広島県連所属国会議員団」名で二階幹事長に対し、「参議院広島再選挙を踏まえた申し入れ」を行っている。次の図がその申し入れ書だ。

 

岸田文雄会長の二階俊博幹事長宛の申し入れ書
岸田文雄会長の二階俊博幹事長宛の申し入れ書

 

ここで、「公認した公党としての責任を果たす姿勢を持つべきである」というのは、「河井陣営に支給した政党助成金1億2千万円を含む1億5千万円の使途を明確にせよ」という意味だ。胆力と発信力が弱いことで知られる岸田氏がここまでの申し入れ書を行ったのは、河井事案の背景(安倍氏、菅氏、二階氏による溝手氏失脚劇)を掴んだからだろう。そして、自民党政権の中枢部では公然の秘密になっていると思われる。佐藤氏はそう見ている。佐藤氏によると、検察側は菅官房長官(当時)が内閣官房機密費(選挙やマスコミ工作によく使われる)から準備した約1億円については立件が困難だが、自民党が河井陣営に対して支給した1億5千万円の使途は掴んでおり、その使途をめぐっては立件が可能だし、立件する意向だという。

しかし、検察側の立件を阻むものが二つあるという。ひとつは、6月25日公示で7月4日投開票の都議選。もうひとつは、7月23日から開催予定の東京オリンピック/パラリンピックだという。安倍氏側を強制捜査し、逮捕するにしても両者が壁にならざるを得ない。都議選前に行えば都議選に大きな影響を与えるし、オリ/パラ時では日本の信用が失墜する。検察としても、国民世論の後押しが欲しいところだ。

朝日新聞出身のジャーナリスト・佐藤章氏と河井夫妻公選法違反事案
朝日新聞出身のジャーナリスト・佐藤章氏と河井夫妻公選法違反事案

 

このため、菅ー二階ラインではコロナ感染状況がどんな状態になっても、東京オリンピック/パラリンピックを強行開催したいところだ。東京オリンピック/パラリンピックには既に、フランスのマクロン大統領が次の2024年オリンピックの開催都市国の大統領として出席するという(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210522/k10013045171000.html)。また、二階幹事長が小池百合子都知事に本事案を伝えており、「小池都知事の乱」を防ぐつもりであるとも言われている。

もっとも、オリ/パラの開催は依然として不透明だ。今月末で解除予定の「緊急事態宣言」がさらに6月20日まで延長されるとの見方が強まっている。また、「再々延長」しても、既に市中感染が始まっているインド型の二重変異株が猛威を振るう可能性もある。インド型の二重株は、日本人を含むアジア人が持っている型(白血球抗原)の白血球の免疫力を無効化すると言われている。

ただでさえ、オリ/パラには開催反対の声が強いのに、オリ/パラ強行開催の真の目的を知れば、国民の一層の反発は避けられないだろう。佐藤氏は、岸田派が現状の自民党とたもとを分かち、野党と協力する可能性も否定しない。少なくとも、岸田氏が二階幹事長宛に出した申し入れ書は妥当である。自民党が1億5千万円の使途について、責任のなすりつけ合いを行うのは公党として恥ずべきことである。国民としては、1億5千万円の使途について自民党に対し、明確な説明責任を果たすよう求めていく必要があるし、野党側も国民に対する責任は重い。

郷原信郎弁護士による検察側の河井克行被告に対する諭告についての疑問と考察

検察側は今年2021年4月30日に「懲役4年の実刑」を諭告求刑しているが、敏腕検事として知られた郷原信郎弁護士は、検察側は重要な論点を完全にスルーしていると批判している(https://nobuogohara.com/)。使途を明確にしない政治活動(地盤培養活動)のための寄付行為は、買収行為に当たるか否かという問題だ。その当否は、東京地裁にとって弁護側が執行猶予を得るための判断材料になる。論点を抜粋させていただきたい。

現金供与は政治資金の寄附だという克行氏の一貫した供述を否定することは困難なのではないか。(一方で、克行氏の「買収原資がポケットマネーである」とか、「溝手氏を落選させる意図はなかった」などの供述は、検察官の反対質問で崩されており、信用性がないことは明らかになっている。)

それでも、検察の論告では、現金供与が「政治資金の寄附」であることを否定する主張をするのか、それとも、「政治資金の寄附であることは、現金供与が買収であることを否定するものではなく、違法性を低下させるものでもない」と主張するのか、そこが、論告の最大の注目点だった。

ところが、検察は、この最も重要な論点について、ほとんど触れておらず、克行氏の(一貫した)主張の中に再三出てくる「党勢拡大」「地盤培養」という言葉も全く出てこないし、「政治資金の寄附」という言葉も見当たらない。(中略)

河井夫妻を買収で起訴する一方で被買収者の処分を全く行っていない検察は、今後、被買収者(注:収賄側)の刑事処分という、誠に厄介な問題に直面することになるが、克行氏の判決で、地方政治家への現金供与が「政治資金の寄附」であったのか否か、それが、買収罪の「犯罪の情状」にどう影響するのかについて示される判断は、被買収者の刑事処分にも大きな影響を与えることになる。これまでは、検察の「自己抑制」によって、「政治資金の寄附」の弁解が予想される、選挙に関連する政治家間の資金のやり取りの事案が刑事事件として立件されることはほとんどなかったが、河井夫妻の事件で、検察は、敢えてそこに踏み込み、元法務大臣の現職国会議員を逮捕した。ところが、検察は、論告で「政治資金の寄附」と買収の関係の問題をスルーする一方で、克行氏を「実刑必須」と主張する、誠に不可解な論告を行った。

「政治資金の寄附」を情状面で強調する弁論を受けての判決では、「政治資金の寄附と買収罪の関係」が裁判所の判断の対象となることは避けられない。それによって、元法務大臣の多額現金買収事件による日本の公職選挙の「激変」が、現実のものとなるのである。

検察が、政治家の政治活動(地盤培養)のための寄付行為だったという河井元法相の主張を突き崩せていないことは確かに問題である。それでも、自民党本部が河井案里陣営に対して、正式に溝手氏側の10倍もの選挙資金(ほとんどは国民の血税からなる政党助成金)を支出したということは、自民党幹事長を務めた立憲民主党の小沢一郎衆院議員が佐藤氏の著書の中で述べているように、本来なら有り得ない行為だ。その理由は厳しく追及していかなければならないだろう。しかも、原資はほとんど血税なのに、その三分の二は使途不明だ。日本国憲法がその第83条に定める「国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない」という財政民主主義にも反する。

ただし、郷原弁護士が強く提案していたように、河井克行被告が情状酌量としての執行猶予を勝ち取るための最良の方法は、地裁で今回の買収事案の全貌を語り、自らは単なる「将棋の駒」に過ぎず、買収事案の黒幕について堂々と公表することであった。それがまた、日本の政治刷新に大きく寄与することになる。河井夫妻が事件の真実を語らないところに、日本の政治の腐敗の根本的な原因がある。


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